横領騎士

 色素の薄い女がいた。

 死体は語らず、口は半開きのまま。女も口を半開きのままに、じっと佇む。
 乏しい草を、乗用恐鳥がついばんで減らす。植物柄のブラウスが唯一、果てしのない荒れ野を背に生い茂っていた。
 痩せて、ともすれば若い男のようだが、女はそのどちらでもない。対して、死体の方は若い男であった。胴には深い穴四つ。致命傷で間違いない。腰から抜いたやっとこで、死因の銃弾を抉り取り、女は観察する。数歩離れ、掠れた足跡へ屈み込む。

 戻ってきて、改めて女は死体の懐をまさぐる。百枚一貫の硬貨を引きずり出しながら考える。なるほど物取りの仕業ではない。
 途端、女はニタニタと笑い始めた。死体と向き合う。
「私はナスタージャ。誇り高き横領騎士道の修士。そりゃもう黄金郷の土地代よりも。随分しぼれましたし、あなたの無念は必ずや晴らしましょう。なお報酬は前払いで頂きます」
 涼しげに金を奪うと、ナスタージャは場を後にした。

【続く】

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