「聞き手は名監督!?できる人のユーザーインタビューの備えとは」
新規事業開発において、ユーザーインタビューやアンケート調査は不可欠なプロセスですが、多くの社内起業家が「調査が終わらない」という共通の悩みを抱えています。
MOONSHOT WORKS株式会社のCEO藤塚洋介が、70以上の新規事業開発プロジェクトに携わった経験から、この問題の本質と解決策を詳しく解説します。
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社内起業家の「あるある」悩み
まず、典型的な悩みのシナリオを描いてみましょう。
このシナリオ、どこか心当たりはありませんか?
なぜ調査が終わらないのか?
新規事業開発における調査の難しさは、統計学的に有意なサンプル数を集めることだけが正解ではない点にあります。
新規事業の成功率を上げるカギは「スピードと柔軟性」にあるのです。
我々の経験では、調査が終わらない主な原因は以下の4つです:
検証したいターゲットが不明確で幅広い層になっている
調査したい仮説の解像度が荒すぎる状態でインタビューを開始
ターゲットではない人のインタビュー結果に惑わされている
調査の「完了条件」が設定されていない
効果的な「調査設計」とは?
これらの問題を解決する為には曖昧な調査をいかに科学的に進めるか、「小さな一歩の積み重ね」を重視するものです。
Step 1: ターゲットの定義はこう変える
1.検証したいターゲットが不明確で幅広い層になっている
このケースでは残念ながら、検証したいターゲットの属性の考え方が間違っている場合がほとんどです。
このような感じですね。みなさんはいかがでしょうか?
これも完全に間違いではありませんが、残念ながら不十分です。なぜでしょうか?
実はこのようなターゲットの決め方は、高度経済成長期の物売り時代のターゲットの名残なのです。
当時、メディアは新聞かTVに限られ、チャンネル数も少なく、みんなが同じような番組を見ていました。
学校での話題は「昨日あの番組みた?」「みたみた!」のような感じです。
〜1980年代生まれの方は「そうそう」と思って頂いているのではないでしょうか?
インプット情報のばらつきは少なく価値観はおおよそ似ていたので、当時だとこのくらいざっくりしていても、同じような行動や価値観を持っているターゲットと言えたのです。
しかし、現在は同じTV番組どころか、チャンネル数も多く、BSやケーブルTV、スマホでSNSや動画しか見ない、PCでネットサーフィンするなど、同じものを見た人を探す方が難しいでしょう。
インプット情報が多様な結果、行動や価値観も多様化しているのです。
「30代の共働き夫婦は食事の準備時間を30分以内に抑えたい」というニーズ
実際はこんなターゲット設定では十分ではないのです。
「行動」と「価値観」
ではどうすればいいのか?
ポイントは「行動」と「価値観」です。
「30代の共働き夫婦=食事の準備時間を30分以内に抑えたいというニーズがある」
であれば、【行動】と【価値観】に分けると
「30分以内に食事の準備を済ませる」(行動)
「仕事もプライベートも効率化しないと気が済まない」(価値観)
というターゲット像が出来上がります。
じゃあ元々のターゲットであってるんじゃない?
と思うかもしれません。
実は問題は
「30代の共働き夫婦=食事の準備時間を30分以内に抑えたいというニーズがある」
ということで30代の共働き夫婦の【価値観】を一つにしてしまっていることです。
このやり方だと「30代の共働き夫婦」全てが見込み顧客ということになりますがそんな都合の良いことないですよね?
そう、実際は沢山の属性があるのです。
Step 2: ターゲットや仮説は映画の1シーンのように
2.調査したい仮説の解像度が荒すぎる状態でインタビューを開始
3.ターゲットではない人のインタビュー結果に惑わされている
このケースでは、「顧客に答えがあるのだから自分で考えてもミスリードしてしまう」と思っているケースです。
しかし、実際は、ざっくりした仮説をぶつければ回答もざっくり、ありきたりな内容しか返ってこないもの。
出来るだけ具体的な、突っ込んだ質問をしてこそ、深層の発見があるのです。
また、ターゲット像が荒いと
「この人もターゲットかも」
「あの人も条件あっているよね」
「あのターゲットに売れるなら嬉しいし」
とターゲット「ど真ん中」がわからず、ターゲット以外からの情報を拾ってしまいがちです。
と、いうことでターゲット像が出来上がったら、次に検証すべき仮説の課題を磨くことが大事です。
すみません、仮説を「磨く」とかわかりにくいですよね 笑
仮説を磨き、解像度を思いっきり上げるのにおすすめのやり方の一つは、そのユーザーになりきって、どんな行動をしているか?
ストーリー仕立てで書いてみることです。
読んだ人が、まるで映画やドラマを見ているようにシーンが思い浮かぶレベルです。
意外かもしれませんが、インタビュー前に顧客の行動を理解する表現はたとえばこんな感じです。
いかがでしょうか?
このように記載することで、どんな夫婦かすごく身近に感じたのではないでしょうか?
長すぎる?
では、この脚本ベースに動画も作ってみるのもいいかもしれませんね。
ただ単に「食事の準備時間を30分以内に抑えたい」夫婦と違って
このストーリーでは夫婦の行動の時間や二人の価値観の違いが加わることで、開発者(あなた)はこの2人のためのサービスを具体的に考えられると思いませんか?
単に30分で食事を作るだけでなく、前後の行動も踏まえて短縮するとか、外せない好きなものは簡素化しないであげようとか、美味しくしてあげたい、夫婦の会話も大事、等これによって新たなインタビュー項目が見えてきそう
です。
そして次第にクリアになっていくターゲット像に合わないインタビュー結果は、明確に省くことができるでしょう。
こんなに詳細に作ると共有が難しい
という人は4コマ漫画でも良いかもしれません。
Step 3: 完了条件の設定
<最小サンプル数の設定>
4.調査の「完了条件」が設定されていない
それではインタビューは何人にすればいいのでしょうか?
とっておきに我々の方法をお伝えしましょう。
ユーザービリティテストで有名なヤコ・ブニールセン工学博士によると「5人にインタビューすればユーザービリティ問題の85%が発見できる」という有名な言葉があります。
なんだ5人でいいの?簡単ですね!
という言葉が聞こえそうですが、実際はターゲットを3~5セグメントとか細かくして調査を進めるケースが多いと思います。
5セグメント毎に5人だと25人。
仮説を変更したり、プロトタイプを検証するために、同じユーザーに4回行うとすると、のべ100回になります。
全くの新規事業をやる場合は、おおよその目安はこれくらいだと覚悟を決めて計画しましょう。
「え?100回も多い!」と感じる人・この時点で諦めたくなった人は、残念ながらあまり新規事業開発に向いていないかもしれません。
そうはいっても、という人は既存事業に近い領域を取り扱うのをお勧めします。
既存商品の改良や入れ替えなど、ニーズが顕在化している領域ですこの領域だと過去のデータが使えたり、ネットの情報もある程度使えるので回数は減らせるでしょう。
<分析項目の事前決定>
さて、「食事の準備時間を30分以内に抑えたいというニーズがある」に話を戻しましょう。
インタビューで確認すべき項目を事前に決めます。
ここでは本来ダイレクトに聞きたいことだけでなく、その課題の理由、背景、顧客体験の外側(1日の時間の使い方や、対象の行動の前後に何をやっているか?)も聞くと、解決策のヒントが見つかるかもしれません。
<クリア条件を設定する>
ここでは「10人中7人が30分以内の食事準備を望んでいれば次のステップに進む」といった具体的な条件を設定します。
なんにせよ、インタビュー「前」に決めておくことが大事です。
インタビューをした後だと、「もっとインタビューしたらいい結果が出るかもしれない。
「後一人だけ、1社だけ聞いてみよう!」となかなかその仮説から離れられないものです。
そんなことより新たな仮説にシフトしてどんどん回す方が、余程前向きなのです。
そのためには最初にルールを作っておくに限るのです。
まとめ:MOONSHOTな調査へ
ここまで読んでいただいた皆さん、いかがでしたでしょうか?
みなさんがこれまでのアクションを行うとこんな風に効果が現れます
ユーザーインタビューやアンケート調査は、新規事業開発において重要なプロセスです。
しかし、適切な設計と実行がなければ、調査が終わらない罠に陥る可能性があります。
そしてそれは社内起業家にとって命取りとなる「時間」が奪われることにつながるのです。
今回の記事で書かせていただいたのは、ほんの入り口に過ぎません。
「科学的に調査すすめる方法」や「プロトタイプの検証方法」などたくさんお伝えしたいことがあるのですが、またいつかの機会にさせていただきますね。
新規事業開発に挑戦する皆さま、調査の罠に陥らず、効果的なユーザーインサイトを得るためのスキルを磨いていきましょう。
MOONSHOT WORKSは、皆さまの挑戦を全力でサポートします。
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