もっと自由になるガールクラッシュ〜『カルメン』と(G)-IDOL「Nxde」の雑記〜
毎回noteでは小説の感想や美術館のレポばっかり書いているが、実は私は10年来のK-POPオタクである。
中学生の時に少女時代にどハマり。
SISTAR、AOA、EXID、Red Velvetと続き、GFRIENDを6年間推して、現在はMAMAMOOとaespaのファン。
最近はいわゆるガールクラッシュ(以下ガルクラ)が流行りまくっているが、正直いままでハマったことがなかった。
しかし、一味違うガルクラを打ち出してくる(G)-IDOL(アイドゥル)が、最近私の心を鷲掴みにしてきた。
これはクラシック音楽オタクのみなさんも好きになるんじゃないかと思うので、今日は彼女たちの楽曲「Nxde」について。
MVを彩る、ヘルシーなファムファタルたち
マリリン・モンロー、ムーラン・ルージュといった官能的なイメージが視覚的に散りばめられている「Nxde」のMV。
K-POPでのセクシー路線ブームは、2014年くらいに一度あってその後断続的になっていると思う。
あまりに歌詞や振りつけが露骨すぎるものがでてきて、MVそのものが19禁になったり、もともとの振りを放送用に変更したり、いろいろな対応があった。
その後、ガルクラが興隆するというわけである。
「Nxde」で驚いたのは、MVでそういった官能的なモチーフが登場するシーンは多いしメンバーの視線も意味深なのは確かだが、画面全体の印象として全然いやらしくないこと。
芸術点が高すぎてもはやセクシーとかそういう次元じゃない(おそらくミロのヴィーナスやダヴィデ像を性的に見ないのと同じ感覚)。
音楽や映画のモチーフをふんだんに取り入れた、かなり知的な楽曲なのである。
オペラ『カルメン』のイメージ
冒頭とサビは、ビゼーのオペラ『カルメン』から、「ハバネラ」が使用されている。
マリリン・モンローについての考察は多かったけど、カルメンについて触れてる記事は少なかったのでちょっと書いてみる。
1.カルメンは魔性性を出すために使われるか?
カルメンは誰もが知るファムファタル(魔性の女)だろう。
「ハバネラ」が使われているのはちょうど冒頭の部分。
カルメンは確かにホセを地獄に叩き落としたが、「Nxde」では男の運命を狂わす象徴というよりも、カルメンのジプシーとしての特性が押し出されているように思える。
定住しない流浪の民(近年は「ロマ」という呼称が一般的になってきた)の気ままなあり方が根底にあり、その上で「あなたが嫌いでも、私は好きよ(あなたがどう思うかはどうでもいいです)」と言ってくる。
これが、「セクシーで魅力的だが馬鹿でうすっぺらい」イメージを与えられている金髪美女で、男性優位のシステムの中にいるマリリン・モンローと対比になっている。
視覚ではマリリン・モンロー、聴覚ではカルメンが主体になってくるので、MVを見た時に全てが完成する芸術だと思う。
2.一曲まるまる使うとより伝わるキーワード「自由」
「Nxde」では「ハバネラ」のイントロは省かれ、歌唱部分からワンフレーズ借用している。
LIVEアレンジでイントロから「恋はボヘミアン、〜」の部分まで入れたら超イカした導入ができるだろう。
ムービー作って第2部で流すところまでが見える。
確定で盛り上がるし使い勝手もよさそうだ。
ポップスとクラシックの融合
1.オルタナティブ・ポップとクラシック
楽曲の中にクラシック要素を取り入れるのは、実際にK-POPの界隈ではちょっとしたブームらしい。
クラシック音楽を挿入した韓国のポップスとして記憶に新しいのはRed Velvetの「Feel My Rythm」。
GFRIENDもシューマンの「美しい五月には」を「Summer Rain」に使用していた。
上記の曲はいずれも、儚さの演出のためにクラシックを上手く効かせている。
「Nxde」もまた、オルタナティブ・ポップの部類に入ると思うが、「ハバネラ」を使用すること自体がかなり重要な意味を持っているような気がする。
2.リズムとメロディも「Nxde」を定義する
サビに入ると、直前のヘビーな印象は嘘のように、「ハバネラ」のゆったりとした拍子が印象的になる。
オペラでの「ハバネラ」は、妖しいベースの上に低めのソプラノが乗ってメロディとなるが、「Nxde」のメロディラインはものすごく繊細ななかに危うさを秘めた音をしている。
この女性性が、(G)-IDOLの提示する、しなやかに生きる女性の姿とすごく良くマッチしている。
この曲で表現される(G)-IDOLの提案は「周囲に影響されず自由に生きること」だけを謳ってくれる。
それが女性性が強くたって良くて、男性を打ち負かす必要もない。
これこそあるがままの女性を応援する真のガルクラだと私は思える。
アーティスト(G)-IDOLの活躍が楽しみ
(G)-IDOLがすごいのは、リーダーのソヨンを中心に、メンバー自身で楽曲やMVをトータルプロデュースしているところだ。
ちゃんと企画書をつくって事務所にプレゼンしているらしい。
この「Nxde」のような曲は「物事を知っていて」初めてできる創作物。
もうアイドルというかアーティストとして捉えられるべき存在である。
ソヨンが絵とか詩とか描いたら絶対買ってしまうと思う。
新曲、Queencardもみんな聴いて!