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【実話怪談10】シャワー

「不思議な出来事といったら、あれかな」

40代男性会社員Aさんが語ってくれた話である。

2008年の秋。職場の呑み会が長引いて深夜に帰宅したAさんは、夜2時ごろにシャワーを浴びていた。

「アルコールの余韻に浸りながら、いつものように身体を洗い流してた。ひんやり肌寒さを感じ始めた日だったから、温かい水流がすこぶる心地よく感じられた」

が、突然。

「シャワーから冷水しか出なくなってな。ガスの不調か何か解らないけど」

今までそんな現象が生じたことはなく、不意の冷水にAさんはいささか驚いた。だが身体はすでに十分に温まっていたため、結局その日はそのままシャワー浴を終えた。

翌日会社に出社すると、ある同僚男性の訃報を知らされる。

その同僚は30代男性。酒好きで職場の呑み会にはほぼ顔を出し、快活に話すタイプである。飲酒量が過剰で恰幅の良い体格のため、健康診断のたびに忠告を受けていたとのことだった。

二人で呑みに行ったことはなかったが、Aさんも職場や呑み会で頻繁に会話する間柄だった。前日の呑みに限って、所用で不参加だったそうだ。

夜間に眠っているうちに亡くなったとのことだが、死亡時間が午前2時ごろだったという。

「そのマンションには数年住んだけど、ガス切れたのはその時だけ。次の日からは正常に作動したし、修理したわけでもない。ガス切れの時間と亡くなった時刻がおそらくほぼ同じだったのを最初に知ったときはゾクッとした。けど、同僚が知らせに来てくれたのかもしれないな」

Aさんは静かに話を締めくくった。

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