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【実話怪談7】バリ島のホテル(インドネシア)

2005年頃、当時20代の健介さんがバリ島に一泊旅行したときの話。宿泊予定のリゾートホテルに到着したが、手違いで予約した部屋に泊まることができなかった。

「代わりに別館を打診されてね。そこは料金が格段に高い宿泊ゾーンなんだけど、追加料金なしでどう? みたいな感じで。即OKして、客室案内スタッフに部屋まで誘導してもらったけど、家族連れや若者などで賑わう本館と違って、別館は宿泊客が少ないのか、しん、と静まり返ってて廊下もじっとりと薄暗い感じだったよ」

新たな宿泊部屋は、最上階5階のメゾネット型の一室だった。1階にテレビやソファ、2階に寝室とバスルームがある。部屋からは海も一望できる。健介さんは鼻息を荒くしながら室内や眺望をフィルムカメラで何枚か撮影した。

その夜、彼が2階で寝ていると、1階から、がやがや、と騒がしい音が聞こえてきて目が覚めた。

何だ?

ベッドから出て吹き抜けになってる1階を覗いてみると、テレビ画面が点灯している。入室してから一度も電源を入れていないはずだった。

訝しみつつ1階に降りると、司会者がゲストとトークしている番組がテレビに映し出されている。健介さんはテーブルの上のリモコンを掴みとり、電源を落とすために主電源ボタンを押した。

が、電源が落ちない。

落ちるどころか、テレビ音のボリュームが、どんどん大きくなっていく。

「怖いというより、音がうるさくて他の客からクレーム来るんじゃないかと思って焦っちゃった」

何度も主電源ボタンを押したが(音量を上げるボタンではなく、間違いなく主電源ボタンだった)は消えず、最終的にテレビに接続された電源コードをコンセントから抜いた。ようやく画面がぷつり、と消えたそうだ。結局そのままにしてチェックアウトした。

帰国後、フィルム写真を現像すると、彼は首をかしげた。部屋の写真の全てにおいて、右上4分の1程度が白くぼやけて不鮮明になっていた。一方、屋外を撮った写真は、全て、何ら異変は見られなかった。

「まあ、良い部屋に安く泊まれてよかったよ」

健介さんは満足げに白い歯を見せた後、最後に一言こう漏らした。

「受付が、僕を部屋まで案内させるために別の客室案内スタッフに部屋番号を伝えたとき、その係の顔が少しだけ曇ってたような気がするなあ。『え、あの部屋ですか』みたいな感じ。ま、気のせいかな」

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