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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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2021年3月の記事一覧

【怪談実話119】先客

物心つく頃には、いろいろ視えていた女性Yさん。 「なんであの子はいつも、あの花壇に座ってるの?」、「あの人、なんでずっと木のところでブラブラ揺れてるの?(おそらく首吊り)」など、指を差しては母親に聞いていたそうだ。母親からは「それは人じゃないから、気にしなくていいんだよ」と諭されていた。 そんなYさんの息子さんと娘さんも、その体質を色濃く受け継いだようである。 ・・・ Yさんが幼い息子・娘さんを連れて、新居を探すためにある物件を内覧をしていた時のことだ。近い将来住むかも

【怪談実話118】或るお盆の日の出来事

女性Tさんから、メールで頂いた体験談である。 ・・・ お盆真っ只中の暑い日、私(当時二十歳ぐらい)は両親と3人で、亡くなった祖父と妹のお墓参りへ行くことになってました。 「お線香やお供え物、お花等を買いに行く」と言う父と母に「悪いけど、その間だけ少し寝かせて」と頼み、仮眠を取ろうとしていました。 当時、私の部屋は玄関を入って直ぐの真横にあり、暑かったので部屋のドアと窓を全開にして風通しを良くして、扇風機を点けて寝ようとしていました。 ドア側に頭を向けて布団に横になっ

【怪談実話117】演出?

およそ三十年前、高校生のS子さんは、母親とテレビの怪談特集を鑑賞していた。 その番組は、視聴者から寄せられた心霊体験の再現VTRと、スタジオに居るゲストらによる考察・見解から構成されていた。 再現VTRが流れた後、スタジオに画面が切り替わった時。コメントをするゲストのタレントが映し出されると、その隣に少年が立っている。 Tシャツに短パン、キャップを着用した姿だ。 最初は、局側の演出だと思った。しかしその後もその位置に、ずーっと立っており、出演者は誰もそれに言及しない。 S

【怪談実話116】二本の井戸

十八年前、十代だった裕子さんは当時の彼氏A、男友達のB、Cと夜間にドライブに行った。Aの運転で彼の地元の田舎に向かい、車内では音楽を流してカラオケボックス状態で楽しみつつ、道中で狸や猪を見かけては皆子供のような声を上げていた。漆黒の田園地帯を直進していると、久し振りに信号が見えた。赤信号のため、車は止まる。 停車中、Bが「なぁ、あそこって何なん?」と指を差しながら訊いてきた。Bが言う方向に目を向けると、薄暗い木々の中に鳥居が見える。「行ってみようや」とCが促し、鳥居付近まで

【怪談実話115】河童の行列

一九八〇年代、当時小学三年か四年だった陽子さんが、鹿児島の父親の田舎に一家で帰省した時のことだ。その際、父親の実家とは別の家宅に車で連れて行かれた。 「父は、子供の頃にその家の屋根裏を探検しては怒鳴られたと言って笑っていました。でも、それが親族の家なのか他人の家なのか何の説明もなかったんです。田舎の人って、いっつもこうなんですよ」 しんと静まり返った田舎の夜道をひたすら車で進み、その家に到着したのは真夜中だった。茅葺き屋根を有する大きな日本家屋。そんな造りの民家は今まで見

【怪談実話114】人のセックスを笑う

大学生のショウ君が、彼女と温泉付きホテルに一泊した時のことだ。 天然温泉にどっぷりと浸かって命を洗濯し、レストランで豪華な夕食に舌鼓を打ち、その後に客室でお酒を嗜んだ。二人にはもったいないほど広々とした客室という非日常的な空間、浴衣姿の彼女、さらにはアルコールが、ショウ君の性欲中枢を過剰に刺激する。 その流れで、二人は身体を重ね始めた。 ベッド上で互いの裸体を絡ませてしっとりと戯れ、全身の血が滾ってきた矢先、彼女がしくしくと泣き出した。 予期せぬ事態に、ショウ君はいささ

【怪談実話113】K区の交差点

「むかし住んでたマンションの近くに、尋常でないほどの死亡事故が起きる交差点があってね」と話してくれたのは、男性T氏だ。 東京都K区にあるその交差点での事故では、車同士が衝突するわけではなく、車に接触された歩行者が亡くなる。事故が起きる場所が決まっており、四つ角のうちの二か所だけに集中している。四車線の二本の道路が交わる交差点で非常に見通しが良いのだが、どういうわけか事故が多発していた。六階の自宅まで事故の衝突音が頻繁に聞こえ、慣れてしまっていたそうだ。 三十年ぐらい前、T

【怪談実話112】茨城の祖母宅

一九八〇年代。 小学三年生だった裕子さんは、夏休みに家族とともに祖母の家に泊まりに行った。茨城にある平屋建ての一軒家だ。 夜、仏間で寝ているとふと目が覚めた。襖を隔てた隣の部屋から、話し声が耳に届く。両親や祖父母が集って何やらぼそぼそと会話しているようだ。兵士だの、お祓いだのという単語が聞こえてくる。 「かつて、その家で起こっていた怪奇現象について話しているようでした」 断片的に聞こえてきたのは、以下の現象だ。 (1) その家屋の周囲を、軍服の兵士がぐるぐると歩き回っ