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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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2020年11月の記事一覧

【怪談実話83】肝試し前

北海道出身の男性Aさんは高校生のとき、地元の山中にある墓地に肝試しに行ったことがある。夏の夜、高校の同級生の男子、その同級生の従妹ふたりの合計4人で出かけた。 のどかな田舎町で、その墓地も特に心霊スポットというわけでないが、肝試しの場所としては、十分におあつらえ向きだった。 皆で他愛のない話をしながら、墓地に続く、街灯のない舗装された一本道を歩いて進む。懐中電灯は所持しておらず、手ぶらだった。彼ら以外、人の気配はない。 まだ墓地区域に入る前だというのに怖じ気づいてきたA

【怪談実話82】歩き回る女

北海道出身の男性Aさんの実家は農業を営んでおり、家の周囲は広大な田畑に囲まれている。実家は一軒家で、家の裏手にある川を挟んで山があり、そこは自殺の名所だそうだ。トイレの小窓からその山が見え、Aさんの母親は夜中に火の玉らしき青白い怪光を何度か目撃しているという。 実家は長い長い一本道の途中に建っており、最も近い隣家でも数百メートル離れている。その隣家も、空き家だそうだ。 30数年前、当時Aさんは中学1年で、7つ上の姉、5つ上の兄と両親、祖父母と暮らしており、犬小屋で一匹の雑

【怪談実話81】ギャン泣き

「会社の後輩が、飛び降り自殺しまして」 男性Aさんは、静かに切り出した。 その後輩はAさんと別の課に所属していた男性で、社内で少し会話を交わす程度の間柄だった。 彼が亡くなって1ヵ月ぐらい経った後、会社の先輩Bさんと彼の自殺の現場(会社からかなり離れた建物)を見に行くことになった。 Bさんは後輩と同じ課で、よく面倒を見ていたそうだ。 だが、後輩の葬儀は家族葬で、会社の人間は参列できなかった。ゆえに先輩としては、せめて現場を見ておきたいと思うに至ったらしい。 ・・・

【怪談実話80】SNSで再会した女

都内在住40代の男性T氏から拝聴した、生霊にまつわる話である。 【5~8月】 数年前の5月、会社を休職して自宅療養していた彼は、SNSを閲覧する頻度が多くなっていた。 「某SNSで、高校時代のクラスメイト女性Aと再会したんです。卒業してから連絡してなかったから、20数年ぶりかな。2年間同じクラスで、Aに好意を寄せてたんですが、会話を交わしたのは数える程度でした」 当時のAは、ショートカットの丸顔で目はパッチリとした利発的な女性だった。 思い切ってメッセージを送ったら

【怪談実話79】私にまつわる若干の怪異

いつも時間を割いて読んでいただき、ありがとうございます。 本記事は実話怪談79本目で、人が怖い話23本と合わせると100本を超えました。「100本以上、記事書いてます」とアピールできるのは自分にとって大きな進歩です。 ・・・ 怪談を収集していると、しばしば訊かれることがあります。 「怪談集めてると、ご自身に何か異変が起きませんか」 そのたびに私は「いやあ、特にないんですよ」と残念そうに回答してますが、実は一度だけ妙なことがありました。 今年の6月ぐらいでしょうか、

【実話怪談78】溜まり場

男性Nさんは学生時代、九州地方に住んでいた。4階建てマンションの最上階、フローリングで10畳ほどの広々としたワンルームでの一人暮らし。その部屋では、いくつかの奇妙な現象が起きていた。以下、列挙していく。 1つめの現象は、『白人の男』。 身長170~180センチの長髪で色白の白人男性が現れる。その男がはじめて現れたときは、部屋のドアのすりガラスの向こう側に立っていた。すりガラス越しだが、「整形手術後のマイケル・ジャクソン」のような雰囲気なのが分かったそうだ。 すりガラス越し

【実話怪談77】一緒に逝こう

カズ子さんは10歳の頃、東京大空襲を経験している。 「毎日けたたましく鳴り響く空襲警報のサイレン、B29が飛び交う轟音……。今でも、耳に残っています」 当時は、空襲警報が鳴る度に自宅付近の防空壕に身を隠す生活を強いられていた。その防空壕には、カズ子さん一家の他に近隣住民も避難しており、空襲時には皆で肩を寄せ合い爆撃をしのいでいた。 その日も警報が鳴り渡り、いつものように彼女は姉と一緒に防空壕の奥に逃げ込んだ。壕には、まだ誰もいなかった。 ほどなくして、誰かが壕に入って

【実話怪談76】見つけて

昭和後期の話。 ある夜、カズ子さんが自宅の浴室で湯船に浸かり一息ついていると、浴室の小窓の方から誰かに見られている気配を感じた。その小窓は、浴槽に居る彼女の真正面の上方に位置している。窓は閉められており、目を向けたが人影が見えるわけでもない。 それでもなお、窓の向こうから誰かが自分を凝視している気がしてならない。自分で窓を開けて外を確認する勇気はなかったため、夫を呼び、窓の外を見てもらった。 「誰も居ませんでした。そもそも窓の向こうは隣の一軒家の壁で、人が入れる隙間もない

【実話怪談75】引き換え

女性Rさんが25歳のときの話。 春先、彼女は友人とともに仙台に旅行する計画を立てていた。 旅行前夜、ある夢を見たという。 「目の前に広がる綺麗な海が、一瞬にして真っ黒に染まる夢でした」 翌朝、起床後にふと携帯電話を確認すると、友人からメールが届いていた。 〈祖父が危篤になり、旅行に行けなくなった〉という連絡だ。 結局、旅行はキャンセルした。 その日の午後、あの地震が起きた。 東日本大震災。 その日、友人の祖父は亡くなったそうである。 「友人の祖父は、友人とふたり暮

【実話怪談74】302号室

日本全国の宿泊施設数は約5万施設、部屋数は162万部屋に及ぶ。その中には、「霊感のある人は気を付けたほうがいい部屋」が存在するようだ。 霊感を有する女性、Rさんから伺った話。 彼女が24歳の時、友人と横浜に旅行したときのこと。時期は9月。横浜に到着した頃から、Rさんは体調の悪化を感じ始めた。 「体調が悪いから、ちょっと早めにチェックインして少し休んでもいい?」 友人にそう伝え、予約していた横浜市内のホテルに向かうことになった。 Rさんの青ざめた顔にただならぬ異変を感じ