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詩人のシ

わたしは何かを飲み込んだやうに思つた
まだ吐き出したりはしてゐない
いや吐き出してもよい
さうすれば何を飲み込んだのかわかる
確実に飲み込んだのだらうか
いつものやうに喉に引つ掛かつてゐるやうにも感じる

それはともかく
世の中には超人たちが普通のやうに居る
かれらは世界の必要なところに座を占めて
わたしの百倍の速さでフィルムを回してゐる
わたしはわたしだけしか占めることのできない座に居て
三次元のウォーム歯車を振り回しながら
やつて来る化け物と真善美を
見極める合間もなく
右や左に分け
前後に納め
上下に放り投げる
その御蔭で
でくのばうとは呼ばれてゐないが
大きくほめられもせず
苦にもされてゐない

かうして今は
ソレを飲み込んだかどうかも忘れ
何だつたのかも忘れ
テーブルに肘をついてスナックスティックを持ち
冷えたミルクティーをもう片手で持ち
目は考へるふりをしながら考へてゐる
そして立ち上がつた
シを書くために

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