見出し画像

四国の思い出~セルフ炎サービス~

俺はnoteで四国大戦を連載している。

四国大戦は破壊僧(破戒僧ではなく)、ジョン・田中と足が生えた八十八の人食い寺院との戦いを描くブディズムパンク・アクション小説だ。

俺がこんな小説を書き始めた理由は以下の記事で述べたが、単純に言うと四国遍路をしたからだ。

今日は新規読者の獲得のためにもその四国の思い出を少し書きたい。

君はセルフ炎サービスを知っているか?

四国遍路には様々なルールがある。まず四国遍路とは、ただ四国を放浪することではない。八十八の寺を順番に回らねばならない。

しかもただ回って三百円を払い、御朱印を貰うわけではない。ひとつシミュレーションしてみよう。あなたは四国の寺に赴き、手水舎で手を洗い(コロナ禍においては閉鎖されているところもある)、まず本堂へ赴く。

線香とろうそくに火を点けろ!

本堂についたあなたは鞄から線香とろうそくを取り出し、火を点けて奉納しなければならない。風の強い日は風で火が中々つかないし、寒い日には手が震えていたり、かじかんで、やはり中々つかない。

そんな我々を救済するのがセルフ炎サービスである。

セルフ炎サービスとは何か?

これがセルフ炎サービスである!

画像1

いかなる燃料によって点火しているのか知らないが、お寺によっては参拝者のためにこのようなものがある。正式名称は知らないが我々はこれをセルフ炎サービスと呼んでいた。

これによりあなたは「やった! ライターのオイルが浮く!」「寒くて風が強くてもうそれどころじゃなかったんだ!」と大喜びすることだろう。現に俺はこれに大いに助けられた。

セルフ炎サービスによってあなたは無事に線香とろうそくに火をつけて奉納することが出来たのである。ブッダの粋な計らいである。感謝しよう。

奉納するのは線香やろうそく、それだけではない

もちろん賽銭も必要だ。これがなかなか馬鹿にならないので、参拝する際には百円玉を一円に崩して大量に持って行くことをお勧めする。

さらに『納め札』という住所やら名前やら願い事やらを書いた札を納めなければならない。

最後に般若心経を唱える。これで一連のシークエンスは完了だ。あなたは納経帳で三百円を払い、御朱印と本尊の御姿を受け取ろうとして―――そうはいかない!

本堂と大師堂

四国八十八カ所には本尊を祭った本堂の他に、弘法大師空海を祀った大師堂が存在する。その大師堂では何をするかというと、本堂で行った一連のシークエンスをもう一度行うのだ。つまり四国八十八カ所では一カ所に着き二つの線香とろうそくを消費する。

どうだ? セルフ炎サービスのありがたみが何となく分かって来たのではないか?

まとめ

何をまとめるんだか知らないが、まとめるとセルフ炎サービスはお寺の好意によって燃えあがる、慈悲という名の物理現象である。当然だが四国八十八カ所すべてにこういったサービスがあるわけではないし、無かったからと言って「このお寺は無慈悲だ」とか文句をつけるのはやめてほしい。設備の不具合だとか、管理体制とか経済的事情とか、色々と複雑な問題が現代社会には横たわっている。

四国にはこういった細かい優しさが随所に施されている。そのような優しさを栄養にして参拝者は前へ進むのだ。

でも道は狭いし、四国民の運転は荒いので道路には気を付けて欲しい。車に仏心は無いのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?