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長雨の雨宿り#みんなでポエム書いてみた

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長雨の雨宿り。
あの子は窓辺に座ってただひとり。
わたしは手元のコーヒーがこの指を濡らさぬようにと下を向く。

こんなにもあの子は結末を知りたがった。
わたしが勧めた本を開いたあの子がページを捲る音は軽やかにすぐにやむ。
頬杖をついた横顔が悪戯っぽく笑って
最後はどうなるの。
せがむその子にハッピーエンドしか語らなかった。

この雨がやむと信じて待っているあの子には
結末を教える誰かがいるだろうか。

隣の人の衣擦れの音で目が醒める。
いつのまにか流れていた映画のエンドロールは終わりを知らせるけれど
はなしの結末を教えてくれる誰かはいない。

実らなかったものはどこへ行くの。
遠い昔のなつやすみ、コンテナに積まれたまぁるく赤いトマトを見送って
茎にしがみついたまま緑に萎んだその実は
夕立に揺れていた。
赤くまぁるくなったその先をどんな夢に見ていただろうか。

止まない雨に溜息をつく横顔が綺麗で
ねじれの位置から眺めるだけのわたしは
もう知らない人。
せめてあの子が書いたあの先を
こんなにもわたしは結末を知りたかった。

綺麗にまとまる結末が憎い。
きっと最後はここに落ち着くんだろう。
ハッピーエンドもバッドエンドも書きたくない。
すれ違った男女がまたお決まりのように出会って結ばれるのも、片方が病気で死んでから手紙で告白してくるのも飽きた。
最後の解釈を読者に委ねるやつも誤魔化してるみたいで嫌だ。
たまたまどこかの街で偶然出会って、目があった瞬間、あってなって、ひとひらの風が吹いて終わるやつ。
何だよ!気になるよ。最後まで言えよ。

そしたら最後はどうしたいんだろう。
漫画や小説と違って、きっと現実に溢れている結末のほとんどは、そんなに綺麗にまとまらない。

少しずつすれ違いながら、寂しい夜にふと思い出して、いくつか夜が開けるとまたすれ違う。
そのうち届かなくなるLINEに気も留めなくなって、いくつか一定期間繰り返されたルーティンが存在しなかったことになる。

あるようにするためにはいくつも積み重ねなければならないのに、なかったことになるのはほんの一瞬の出来事だと気付くんだろう。

記憶は忘れていくしかなく、過去は変えられないと誰が言っただろうか。
そう信じてるくせに、頭の中にある過去の記憶は引っ張り出すたびに粘土みたいに形を変えている。
許せなかったものが許せるようになって、恋しかったものが憎くてたまらなくなるみたいに。


成熟しなかった恋ほど記憶に残るのは、結末をまだ知らないからだ。
もうとっくにエンドロールが頭の中を流れているのに、いちばん最後の結末を思い出せないから。
そして色んな想像をする。
でも、結局分かるのは、こうすればよかった後悔と、でもこうなることが正解だったと飲み込んだ感情。
矛盾したふたつの感情が交互に浮かんでは消えて、ただ思い出を美しくする。

そしていつか月日が長く流れて、
エンドロールのスペシャルサンクスにその名前を連ねられるようになる頃、
やっと結末を探すのを諦める。

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