『Most Likely To Succeed』を観て。
『Most Likely To Succeed』という映画を、新渡戸文化学園にて見させていただきました。
アクティブ・ラーニングなるものが話題になっていますが、それを実践しているカリフォルニアの学校「High Tech High」の中学3年生を中心としたドキュメンタリー映画です。
映画
教育は100年以上前から変わっていません。現在行われている教育は、すべての人を画一的に教育し、統率の取れた軍隊を作ることを目的として、ナポレオンにより形作られました。これは、工場の文化と類似しています。同じ知識を持って、同じように働く人ができあがるのです。
現在の背景として、アメリカの所得の伸び悩み(アメリカの経済は成長しているが、人々の所得は増えていない)や、AIの進化などの話がありました。
印象的だった話として、算数を学ばせようとしても学ばないが、「椅子を作る」という課題の中では幾何学を学ぶ必要が生じるため、自分から調べて勉強する事例が挙げられていました。
High Tech High
授業は、先生の話を聞くのではなく、自分たちで話し合いながら行われます。入学当初?にて、机と椅子を並べるよう指示だけを与え、先生は教室の外に出ていきます。生徒たちが、なにすればいいの??と戸惑う姿が印象的でした。
プロジェクトは、教室の中心が先生から生徒に逆転する。
それまでそのような教育を受けたことがないため、怖がる生徒もいる。
授業ベルはなく、算数や国語といった科目ではなく、複数の科目を組み合わせて授業は行われます。
先生も一年契約であり、カリキュラムはなく、教えることを先生が決めていいそうです。先生の裁量が大きく、知的自由が大きいです。
プロジェクトは、学期末の展示会に向けて進める。
保護者だけでなく、一般の人も作品を見にくる。
①プロジェクトの課題を解決するのに必要である知識を調べて、
②知識を基に個人の理論を作り、
③個人の理論を持ち寄ってグループの理論をまとめて、
④その理論を作品として表現する。
心配する親もいます。テストの点数を取るための勉強をしないため、受験や進学に必要なスキルを身に付けていないのではないか、という不安のためです。
『チームワークを子どもたちは学んでいるとのことだが、
でも、先生たちは勉強していい大学、いい企業に入ったから、
チームワークを学べているのではないか。』
興味深いことに、このような不安を感じている生徒もいます。特に、成績の良い生徒(これまでの尺度の中で評価を得られる生徒)が不安を感じるそうです。
『大学は、テストの点数しか見てくれない。』
今の教育
学ぶ量が多過ぎて、学期中にカリキュラムを終えることができません。(例えば、32週間で520年の歴史を学ぶ必要がある!南北戦争は3クラスのみ!)そのため、詰め込み式の授業になり、試験の準備のための授業になってしまいます。
そうした学習方法では、テストの後、授業の内容を覚えていないという事態が発生します。(履修の3ヶ月後に同じテストを受けたところ、平均成績が B+ から F になった!)
今の教育システムは、学ぶな。暗記しろ。
一方で、AI技術の進化などにより、今後、平均的な仕事=ミドルクラスの仕事が、機械に代わられるようとしています。
今の時代、知識はどこにでもあり、無料で手に入れることができます。そのため、ソフトスキル(コミュニケーション力、協調性、リーダーシップなどの目に見えない定性的なスキル)を身に付けることが大事です。
反復だけで判断しない教育をしているのに、社会に出たら自ら決めるように言われる。
映画では、High Tech High にてプロジェクトに取り組む子どもたちの様子を、準備から展示会までを通じて、ドキュメンタリー形式にて紹介してくれます。子どもの具体的な成長も見られるため、ついつい感情移入してしまいました♪
まだ存在しない職に子どもたちをつかせるために、教育している。
志
その先にある「志」を考えることが大事です。
子「僕、電車の運転手になりたい!」
親(でも、この子が大きくなるころには、自動運転になっているかも……)
親(電車の運転手になりたい先に、
『人々を楽しく安全に目的地へ届けたい』という志があるのね!)
親「お母さん、どこでもドアが欲しいな♪」
子「わかった!じゃあ、相対性理論を学ぶね!!」
志を満たすには、様々な可能性があります。一つの職業に囚われる必要はありません。
また、仕事がなくなるとともに、新たな仕事が生まれています。
新渡戸文化学園の取り組みについて
新渡戸文化小学校にて実施した事例を紹介してくださいました。
小学生5年生の席替えにて、手段は問わず、「目的の設定」だけ指示したそうです。子どもたちが自分たちで話し合って掲げた目的は、「みんながハッピーになる席替え」だったそうです。小学生にとってクラスの一大イベントである席替えを自分事化して設定した、素晴らしい目的だと思いました。
また、社会課題と教育をつなげる取り組みとして、SDGs を取り入れた教育を紹介してくださいました。
石川県における天日干しの塩を題材に選び、市長や専門家からの情報収集などを含め、子どもたちを中心に学んだそうです。ゴールである「学べるすごろくを作る」ことに向けて、それぞれの強みを生かして取り組む様子(デザインに凝る子もいたり、内容の詳細に凝る子もいたり)が見て取れたそうです。
ゴールが他人事になる(社会貢献)と、どんどん学んでいく。
特に「トップランナー」は、職員室の先生に教えてくれと言いに来たり、学校を飛び越えてこども園に行って活動していたりと、どんどん進んで学び活動していく。
最後に
自分は教育関連の分野には携わってないですが、非常に刺激を受け、また面白い映画でした。機会があればぜひご覧ください!
本件の主催者の別イベントに関する記事を、こちらにて紹介させていただきます。
「メーロン・アカデメイア『ICT立国から学ぶ これからの情報教育』」
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