文系大学生の書き溜めレポート

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【映画】小津安二郎『お早よう』(1959)で日常に加えられた"エッセンス"

『お早よう』は、小津安二郎監督による 1959年の日本映画で、監督第50作の作品です。

戦後の庶民の生活を描いた、劇的な展開のない日常的なドラマとなっていますが、この作品には、小津による工夫が随所に散りばめられており、それを唯一無二のものとしています。

このnoteでは、本作品の特徴を大きく3つに分け、どのような手法によってそれらが体現されているかを考察することをその目的とします。

1. 異

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【絵画】大徳寺本坊曝涼見学で考える牧谿《観音猿鶴図》と理想的絵画観賞

今回大徳寺で行われた曝涼展を見学し、当寺に所蔵されてある約百点におよぶ美術作品を鑑賞しました。

曝涼とは、いわゆる虫干しのことで、日にさらし風を通してカビや虫のわくのを防ぐために行われます。

大徳寺では毎年 10 月の第 2 日曜日に行われ、そこでは国宝や重要文化財を含む貴重な絵画作品が展示ケースなしで、壁に吊るされた状態で見ることができるのです。

このnoteでは、今回の曝涼展で展示されて

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【絵画】ルネ・マグリット≪不許複製≫における芸術的独自性

≪不許複製≫は、ルネ・マグリットが 1937 年に描いた絵画作品です。

大きさは 81.3×65cm で、カンヴァスに油彩で描かれており、現在はロッテルダムのボイマンス=ファン・ブニンヘン美術館に所蔵されています。

このnoteでは、ルネ・マグリット≪不許複製≫における芸術的独自性がどのような点にあるかを、作品を生み出した時代との関連とともに考察することをその目的とします。

1. 作者

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【音楽】モンテヴェルディ≪オルフェーオ≫とグルック≪オルフェーオとエウリディーチェ≫の比較

モンテヴェルディ≪オルフェーオ≫は、1607 年 2 月 24 日にマントヴァ宮廷で初演された、ギリシア神話のオルペウス物語を題材としたオペラです。

そしてグルック≪オルフェーオとエウリディーチェ≫は、1762 年 10 月 5 日にウィーンはブルク劇場にて初演された、同じくオルペウス物語に基づくオペラです。

同じ神話を基にして作られた2つのオペラですが、その時代や背景が異なれば、音楽的趣向や

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【芸術動向】グランドツアーの現代への影響 -新しい感性・まなざし-

グランドツアーにおいて、その旅行者たちは、イタリアの人々、自然、遺跡、芸術に触れ、新しい感性やまなざしを育みました。

それは、現代の美学の分野や、我々の視点にも影響を与えている近代的なものの見方です。このnoteでは、グランドツアーによって生まれた新しい感性及びまなざしを論じることをその目的とします。

1. ピクチャレスク

まず一つ目は、「まるで絵のよう」または「まるで写真みたい」といった意

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【音楽】オペラという音楽の新ジャンルの成り立ち

オペラとは、「登場人物が自分の台詞の全部、またはかなりの部分を、なんらかの形の歌で表現する演劇のうち、1600 年ころイタリアで産み出されたものに由来するヨーロッパの音楽劇、ならびにそれから派生したものの総称」(*¹)です。

では、16 世紀のフィレンツェでオペラという新しい音楽ジャンルがどのような経緯で誕生したかについて説明していきたいと思います。

1. ふたつの基盤

まずはじめに、当時の

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【芸術動向】グランドツアーとは -何を見て、誰と出会い、何を持ち帰ったのか-

グランドツアーとは、17 世紀の末に始まり 18 世紀後半において最盛期を迎えたとされる、イギリスの支配階級や貴族の子弟たちが、教育の総仕上げとして体験することになる、数か月から場合によっては2年間程度にわたる比較的長い期間のイタリア旅行のことです。

また彼ら十代後半の少年たちには、チューター役として哲学者や作家たちが同行を務めるのが一般的であり、トマス・ホッブズやアダム・スミスもその役を務めま

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【絵画】東方正教会におけるイコンの機能とその特質

今回は、建築家・松室重光設計、明治 36(1903)年竣工の文化財建築である京都ハリストス正教会を見学しました。

実際に教会の中に入り、神父さんの話を聞き、イコンやイコノスタスを見るなかで、西方教会と東方正教会の違いや、聖画像「イコン」のいろはについて学ぶことができました。

このnoteでは、西方教会との比較を通じて、東方正教会における聖画像「イコン」の機能、図式と様式の特質について論じること

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【彫刻】ミケランジェロ《ピエタ》における芸術思潮と主題の表現方法

≪ピエタ≫は、ミケランジェロが 1499 年にローマで作成した大理石の彫刻で、サンピエトロ寺院に展示されています。

《ピエタ》

1. ルネサンスとミケランジェロ

《ピエタ》は、ルネサンスの時代に作られた作品であり、ルネサンス芸術とは 15 世紀から 16 世紀にかけイタリアはフィレンツェを中心に展開し、絵画、建築、彫刻などあらゆる芸術に影響を与えた史上最も重要な芸術運動のことを指します。

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【文芸】エウリピデス『メディア』におけるプロットとカタルシス

エウリピデス『メディア』は、紀元前 431 年の春、大ディオニュシア祭において上演された作品であり、現存するエウリピデスの作品の中ではかなり早い時期に属するものです。

「アルゴ船遠征」の後日譚がこの作品の内容ですが、ギリシア神話に登場するコルキス王女メディアの晩年におこったとされるコリントスでの逸話、すなわち夫イアソンの不貞に怒り、復讐をして去っていく話を劇化したものです。

このnoteでは、

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