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100回連続でエスカレーターに乗った話

こんにちは、モンブランひとみです。

突然ですが、みなさんは

100回連続でスカレーターに乗ったことはありますか?


   私はあります。


2歳の息子は広汎性発達障害です。

息子はこだわりが強く
決まった行動を繰り返したり
気に入ったものに強く執着する特性
があります。

息子が1歳6か月の頃、
突然エスカレーターに執心しました。


そうそれは突然に。
かつ激しく。

大好きなもの・興味のあるものを見つけると
視野がピンホールになってしまう息子。

エスカレーターを見かけたならば
繋いだ手を振りほどき、
エスカレーターに向かって一目散。

ひとりで飛び乗ろうとしてしまう。

エスカレーターを最後まで乗り切っても、今度は隣のエスカレーターへ飛び乗り、どんどん上へ上へと登っていく。(あるいは下へ)

彼のエネルギーは誰にも止められません。

止めようものなら激しく泣き叫び、
無理やり抱きかかえようものなら
鮮魚のごとく暴れます。

エスカレーターに乗るのを止めるのも疲れるし、
エスカレーターに乗り続けるのも疲れる。

エスカレーターに出会うのが嫌すぎて
外出が億劫になっていた時期もありました。

息子と一緒にショッピングモールへ出かけたある日。

はたと息子の目に留まったエスカレーター。
磁石のように吸い寄せられる息子。
買い物終了のお知らせ。

ちーん

そこには1階から2階へ上るエスカレーターと、
2階から1階へ降りるエスカレーターが隣に並んでいて。

エスカレーターを降りて隣のエスカレーターへ乗り換えれば、ひたすら1階⇔2階を永遠に往復できる仕様になっていました。


息子からすれば夢のような仕様。
エンドレス★エスカレーター

私は息子に手を引かれるまま
チベットスナギツネの顔でエスカレーターを往復。

そしてふと思う

何回エスカレーターに乗ったら息子は満足するんだろう?


幸いショッピングモールは人が少なく、モールの端のエスカレーターは利用者がほとんどいませんでした。

むくむくと沸いた好奇心に少し心が躍り、
「息子が満足するまで止めずに乗り続けてみよう」
と決めました。

息子を無理に止めなくてもいいと思うと心は楽になり、
「いけいけもっとやれー」
と一緒にエスカレーターを往復。

ただ、一向に飽きる気配のない息子に
だんだんと不安になってくる私。

30回乗っても

50回乗っても

「まだまだだ」と言わんばかりに
私の手を引いてひたすらエスカレーターに乗り続ける息子。

母としての好奇心も徐々にしぼみ

またしてもチベットスナギツネの顔で遠くを見つめ

「はよ終われ」

と心の中で唱えるようになる頃

ついに100回目を迎えました。

当然息子はこれまで100回やってきたように
101回目の旅に漕ぎ出そうとしている。


  もう無理


100回も乗ったんだからもういいでしょ
と息子を引き留めると
「ぎゃー!」と反り返って大泣き。

何としても乗るんだと踏ん張り、
走りだそうとする息子。

そんなあばれる君を米俵のように担ぎ、
二人してヘトヘトになって帰宅しました。

100回目で止めようが1回目で止めようが
結局泣くんかーい


それが100回乗ってみた私の感想です。
疲れたけれどちょっと笑えました。


「100回乗っても1回で辞めても一緒じゃないか」と。

でもこの経験が無駄だったかと言えばそうでもなくて。

それまでの私は「まだ乗りたい」と主張する息子を制止することにどこか罪悪感を抱いていました。

でもトコトン付き合い切った結果、罪悪感なく息子を連れ帰ることができるようになりました。

 なぜなら、100回やっても同じとわかっているから。

「はい、もうおしまいねー」とさっぱりとした気持ちで伝えられるようになったことは大きな収穫でした。


子供って不思議なもので、親の心の機微の変化も感じとるんです。

私があっさり終了を言い渡すようになってから、
息子も「しょうがないなぁ」と引いてくれる
ことが増えました。

もちろん泣きますが。


今は「あと3回でおしまいね」と先に宣言し、
「1かーい、2かーい、3かーい。はいおわり!」
と一緒に数えて離れる
ようにしています。

発達障害支援でいう「見通しを立てる」という方法ですね。

これが習慣化すると、親も子も楽になります。

習慣化するまでは根気がいります。
でもいつか楽になる時が来ると信じて、声掛けや回数を変えずに取り組むのがポイントです。
「子供が泣くから」と根負けして例外を作ってしまうとより癇癪が激しくなることもあります。


ところで

そもそもなんで息子はエスカレーターに繰り返し乗りたがるのか?


それは発達障害の特性のひとつである「常同行為」で説明ができます。

発達障害のある子たちが同じ行動を繰り返すことを「常同行為」と言います。


例えば
その場でくるくると回り続けたり
手をひらひらとさせたり
体を前後に揺らしたり


そのように同じ行動を繰り返すことは傍から見ると目的がないように見えます。

でも実は子供たちの中には行動を繰り返す理由がちゃんとあるんです。

常同行為をする理由は主に3つ。
 ①何か要求がある
  ⇒言葉で表現できない要求を伝えようとしている

 ②不安を紛らわせようとしている
  ⇒音や光などの強い刺激を紛らわせようとしている

 ③刺激を求めている
  ⇒静かな場所や何もすることがない時に刺激を求める

息子は「普段と違う状況」が少し苦手です。

決まったことを決まった場所で淡々とこなすことは得意だけれど、いつもと違うイレギュラーな環境に不安になりやすいです。
これも自閉スペクトラム症の特性のひとつ。

息子のエスカレーターへの執着は、買い物・外出という「いつもと違う環境」の中で、エスカレーターに乗ることで「いつもと同じ」を体感して安心しようとしていたのかもしれません。

②不安を紛らわせようとしているパターンですね。

前回のnoteで、「子供自身も自分の行動に振り回されて疲れているかもしれない」という話を書きました。

子供(特に発達特性のある子)は自分で自分の行動を制御することが苦手です。

だから本人が言葉にできない部分を、周りの大人が拾ってあげる必要があります。
そして本人も苦しくないように行動の軌道修正をしてあげる。

だから…

【結論】
エスカレーターに100回も乗らなくていい


自分でも笑っちゃうような結論ですが
当たり前です。

なぜなら、子供も疲れてしまうから。


こだわりの強い子は、こだわりを辞めたくても自分から辞めることが難しい場合もあります。

そうならないためにガイドしてあげるのが大人の役割。


一度振り切ってみたからそこに立ち帰れた。
そんなエピソードでした。

真似しなくて大丈夫です(笑)


100回やった親子がいる。
100回付き合っても泣かれたらしい。
100回もやらずに納得できるようにサポートしていこう。

そんな風に笑ってもらって、
みなさんの育児に役立てられたら本望です。

息子は今もエスカレーター以外に、エレベーターや車のエンブレムに熱中しています。
息子本人と親である私たちが疲れない(困らない)程度に、彼の世界を一緒に楽しんでいます。

でもひとつ。
2歳10ヶ月の育児の中で見えてきたことがあります。

 どんなこだわりもいつか終わりが来る


ということ。

激しいブームもたくさんありました。
「これいつ終わるの?」と途方に暮れた日は数え切れず。

でもふと気が付けばブームは去っているんですよね。
(次の新たなブームが始まるけれど)

ひたすらマンホールを踏み歩いた日々。

穴に石を詰める息子を眺め続けた日々。

車に貼られた「燃費基準達成車ステッカー」「低排出ガス車認定ステッカー」を読み上げ声を枯らした日々。


それらも全部いつか人生の思い出となり
懐かしくなる日も来るんだろうなぁ…



そんな遠い日に想いを馳せながら
今日も息子とエスカレーターに乗ります。



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