マニュアルのないプログラミング教室「世田谷ハツメイカー研究所」が考える、これからのSTEM教育の行方【前編】
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マニュアルのないプログラミング教室「世田谷ハツメイカー研究所」が考える、これからのSTEM教育の行方【前編】

マガジン「せたがや、はたらきかた。」は、これからの時代のやわらかい「はたらきかた」を、ものづくり学校事務局スタッフが世田谷地域をフィールドワークしながら探していくインタビュー連載です。(インタビュアー:企画ディレクター 石塚 和人)

これまで10回の連載をしてきたマガジン「世田谷ものづくり企業探訪」。

これまでの連載ではこれまでものづくり企業を中心にインタビューしてきましたが、世田谷の特徴は「ものづくり」だけではありません(あたりまえですが)。

ということで、今回からコンセプトを大幅にリニューアルします!

世田谷の特徴は、住宅や商店街に紛れて、小規模ではあっても、多様な人々がモザイク状に関わりながら活動しているそのユニークな「はたらきかた」にあるのではないか?

そんな企画ディレクター石塚の勝手な仮説のもと、今後はモノ・コトに関わらず、世田谷地域で暮らす人々のこれからの柔らかい「はたらきかた」をピックアップしてインタビューしていきます

そんなリニューアル後第一弾のマガジン「せたがや、はたらきかた。」では、IIDの入居者をピックアップ。

世田谷ものづくり学校の2階に入居するロボットプログラミング教室「世田谷ハツメイカー研究所」とデザイン企業「株式会社アザイ・コミュニケーションズ」の代表を務める、久木田寛直(くきた ひろなお)さんに話を伺いました。

初回参加0人のプログラミング講座から満員の人気講座へ

石塚: 最初に、プログラミング教育に携わることになったきっかけから教えてください。

久木田さん: 始めたきっかけは世田谷ものづくり学校 事務局からの一言でした。2015年のキッズワークショップというIID主催の子供向けイベントで「プログラミングのワークショップをやってもらえませんか?」と依頼されたのです。

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世田谷ハツメイカー研究所代表 久木田さんのワークショップの様子


Webデザインのプログラミングに関しては駿台電子情報&ビジネス専門学校で教えていましたが、私はプログラマーではなくデザイナーです。そんな自分がプログラミングを教えるのはどうかと悩みましたが、ちょうどその時、Makeblock社の「mBot」というロボットを買っていたのです。

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mBlock社の教育向けロボット「mBot」

2015年の夏、それを使ったワークショップを初めて開催しましたが、予約はゼロ。周囲にいた子供が「これなあに?」みたいな感じで見に来るだけでした。

mBotを購入したきっかけは、専門学校で担当している授業でFlashのActionScriptを教えていましたが、下火になりはじめていました。そこで良い教材がないか、ちょうど探している時でした。個人的にアルドゥイーノとかラズベリーパイが気になって使ってみましたが、操作が少し複雑でした。

mBotは簡単に組み立てができ、すぐプログラミングで動かせたのです。調べると中国の深センにあるMakeblock社という会社がそれを作っていることが分かりました。教材として仕入れる為、さっそく2015年10月に深センに行きました。

そこでMakeblock社から「日本の代理店をやったら」と言われました。その後、mBotが日本で販売できるようになってからは、ワークショップ開催するとすぐに満員になりました。


私は普段デザイナーとして働いているので、プログラマーが教えるプログラミングの説明を聞いても、何を言ってるのかよくわかりません。なので子供でもわかりやすいように、何かに置き換えて話をするようにしています。

普段からどのように表現したら相手に伝わりやすいか、そこを大切に仕事をしているので、プログラミングもその延長に過ぎません。教え方も、自分でデザインしていけばいいと気が付いたのです。

もう一つのきっかけとして、以前教え子の中に、プログラミング技術がとても高く優秀な生徒がいました。しかしその生徒一人だけ就職できませんでした。プログラミング能力は高くても、コミュニケーション能力がないと就職ができない。


やはり人間のコミュニケーションと、プログラミング言語としてのコミュニケーションの違いを、ものづくりを通して1人でしっかり理解していくというプロセスは大切だと痛感しました。

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当時はプログラマーは専門用語を多用するので、オタクのような印象がありました。実際はそんなことはありません。その印象を変えるためにも、自分はデザイナーとして動いた方がいいと思いました。なぜか「使命感」を感じたのです。

定期的にワークショップを単発でやっていましたが、それで終わりだと学びになってるとは思えなくなってきました。なので、2017年11月ものづくり学校内にロボットプログラミング教室を開校することにしました。ちょうどオフィスが1室空いたのも良いきっかけでした。

石塚: そういえば最初の夏開催のワークショップは0人で、同じ年の12月になったら満員ということでしたが、その要因は?

久木田さん:申込みが0人だった時に、別でワークショップをやってる方がいました。私は暇だったので、その様子をずっと見ていました。

そのワークショップは、ロボットの一部を3Dプリンターで作ろう、という内容でした。実際には事前に大人がモデリングしたものを出力していたのですが、それが大人気。上手いなあと思ったのは、告知に「ロボット」をアピールしているところでした。

私の場合は「プログラミング講座」にしていたので、あまり親子からの関心を引けなかったのだと思います。次の12月には「ロボットプログラミング講座」と銘打ち、mBotの写真を出しました。そうしたら多くの方から申し込みがくるようになったのです。

石塚:そういえば「使命感を感じた」って言ってましたけど、それはなぜ?

久木田さん:それも、とあるワークショップを見たのがきっかけです。そこでは先生が子供達に「これはこうやるんだよ」って教え込んでいました。すべてを先生が教えてしまうと、つまらなくなってしまう子供がいるのではないかと思ったのです。プログラミングの良さとは、自分自身でいじったり、研究するというところだと思っています。その時に自分なりのSTEAM教育をやってみようと思い立ちました。

大切なのはアート思考とデザイン思考

石塚:なるほど、使命感の理由がわかりました。そういえば僕は3年間見ていて、最近は世田谷ハツメイカー研究所独自の特徴が出てきた気がします。久木田さんから見たハツメイカー研究所の特徴は?

久木田さん:まずは「とにかく楽しい」と感じることを大事にしてます。もう1つ、低学年の子に関してはアート思考。要は目的があるわけではなく、自分の中から生み出すイメージを元に、トライ&エラーで何かをつくっていく。

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世田谷ハツメイカー研究所の授業風景

つまり手探りでいいので、自分で思いついたことをやっていく、という考え方。誰かにテーマを与えられてやるのではなく、自分で決めたことでやっていくのが低学年では一番大切です。

私が専門学校で教える時に「今回は自由に作品を作ってください」と生徒に伝えると、皆「何を作ったらいいんですか?」となってしまいます。それは外から注入されたもので考えることしか経験してこなかったからです。自分自身で考えていくことを、早い段階でたくさんやった方がいい。

では高学年になったらどうするか。考えてるのはデザイン思考。いわゆる問題だったり、テーマだったり、ゴールを決めた状態で、そこに行き着くまでにどのようなプロセスで物事をつくっていくのかを考える。例えば、ロボコンに出場して優勝したいという目標を立てる。では、優勝するために何をどうクリアしていくのか?その計画を立てて準備をしていくのです。

-後編に続く-

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久木田寛直

株式会社 Azhai Communications 代表取締役、一般社団法人STEM教育協会理事、駿台電子情報&ビジネス専門学校デジタルクリエイター科講師、世田谷ハツメイカー研究所代表

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東京造形大学美術科学絵画専攻卒業。グラフィックデザイン、Webデザイン、美術制作、音楽制作を行うとともに、IID世田谷ものづくり学校にて産学提携を軸とした、プログラマーやデザイナーの育成カリキュラムを実施している。2015年より、mBotを使った親子向けワークショップやプログラム教室を展開している。
https://www.hatsumaker.com/

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