鉄道は陸上輸送の王者ではない

 大都市近郊に住んでいる人には、なかなか理解されない事かもしれない話がある。それは「鉄道はもはや、とっくに陸上輸送の王者ではない」という事だ。

 以前あるライターさんの書いた文章に、ローカル線に乗ってきた時と、車でバイパスを通ってきた時とで、地方の印象が全く違うというものがあった。
 ローカル線を通ると田んぼの中にいきなり町が現れるが、バイパス沿いだと、店が並んでいる中を通って行くという事だろう。

 その昔、明治の頃に、地方の町や村をともかく結んで、幹線鉄道に接続する鉄道が作られた。技術の限界もあるから、途中駅の場所はその町の中心から外れている場合もあった。駅間距離が微妙に長かったりもした。
 幹線鉄道と接続する町は結構な規模で、その地方の経済、商業の中心地であった。

 ある時代までは多分これは色々な地方にとって正しい。しかし現実にはこれに当てはまらない所の方が多いんじゃないだろうか。

 伊豆箱根鉄道駿豆線などは、もはやそんな路線の一つだ。一つ付け加えるなら、自分が子供の頃は、こんなはずじゃなかったと思うんだが。

 三島はこの地方で幹線鉄道に接続する町である。飲食店だけ見れば結構繁盛しているように見える。でも、昔は飲み食いだけの町ではなかった。買い物をし、映画を観に行く町でもあったのだ。40年くらい前は。

 今は「沿線の町」のショッピングセンターに行く方が、三島の商店街に出て一軒一軒回るより、手間がかからなくて便利だ。駅近くのデパートの撤退もあった。三島駅前の再開発は掛け声だけだった。
 田町駅から、まあ歩いて行けるイトーヨーカドーはあるが、まとめ買いをする荷物を考えると、車を使いたい距離だ。
 飲食するにも三島まで出なくても、国道沿いにレストラン、ファミレス、ラーメン屋などがあったりする。

 そして、これも理解されないかもしれないが、「沿線の町」のショッピングセンターやシネコン、スーパー、ファミレスなどの場所は、鉄道の駅から歩けるかどうかは関係なく設置されている。

 駿豆線沿いの企業のうち、大きいのだと少なくとも2つくらいは駅から歩けるとは思う。ただ、そのうち一つは結構な規模のリストラをやった。駿豆線がワンマン運転になったのは、その少し後だ。
 再就職しようと思ったら、鉄道利用は厳しく、バスもない所になってしまう。俺の事だ。

 買い物や通勤の構造が、鉄道と必ずしも関係なくなってしまっている今、この鉄道を支えているのは、沿線のいくつかの公立高校の生徒の利用である。学校なら、駅から歩ける範囲に作られる。
 ただ、それもいつまで続くか。少し前には統合された学校もあった。

 定期外利用(観光など)は流行り廃りが激しいので、どうにもあてにはならない。

 沿線から東京などに出る目的なら、なかなか使えるのだが。

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