また昔の話で

 小学校、中学校の同級生にIさんという女の子がいた。かわいくて、まじめな感じだった。いつもニコニコしていた。誰と言うことはないが、ちょっと「80年代アイドル」っぽくもあった。
 小学校5年か6年のある時から、「変なやつ」である私に、理由は知らないけどやさしくしてくれるようになっていた。
 運動会の時にあまり速く走れない私に(半分ふざけながらだけど)「声援」を送ってくれたりしていた。

 中学1年のクラスでは、色々な学校から進学しているので、あまり話せる相手はいなかったけれど、Iさんとは席も近かったので、よく話したと思う。実際には無口な私にしては「猛プッシュ」だったと思う。誰か(歴史の先生かな)の言ったくだらない冗談についてとか、「机の上への眼鏡の置き方」とか、事ある毎に話した。いや、そんなにしつこくは無かったはずだ。ただ、実に内容のない話ばかりだったと思う。でも楽しかった。「俺、やればできるんだ」とか思っていた。

 とはいえ、それはそう長く続かなかった。Iさんはある時、急に、普通な感じで話をしてくれなくなった。Iさんが他の子と話をしている時に通りかかり、そこで「好きな相手」の話題になっていて、私の事を「○○君(下の名前)は嫌いじゃないよ」と言ったのを見かけた事もあった。嫌いじゃないんなら、まだ何とかなるかも知れないと思っていた。

 しかし、この「嫌いじゃないよ」というのは、「他に好きな相手がいる」という事のようだった。
 相手を見た訳ではないが、なんか不良っぽい子がいて、その子が好きみたいとは人づてに聞いた。
 Iさんが教室の窓から身を乗り出して「あの人!あの人!」とか他の女子に言っていた事もあったと思う。

 そういえば誰かに無責任に「下駄箱に手紙を入れておいたら」と言われてやった事もあった。それでも相手にしてもらえなかった。なんかIさんの性格が変わってしまったようにも思えた。

 性格というと、他にも思い出す事がある。

 私が小学生時代に書道教室に一緒に通っていたTさんという女の子と、中学3年の時に再会した。
 より正確に言うなら、その女の子とお姉さんに会うのが目当てで書道教室に通っていたのだった。

 姉妹で親切で面白いもの好きだったのは覚えている。でもなんか再会すると全く違う印象になっていた。やっぱり不良っぽい世界に近づいているというか。
 話は噛み合わない。態度もなんか横柄になっていた。私の妹が見ても「グレてしまった」という印象だったみたいだ。
 聞くところによるとお姉さんはあまり変わらなくて、優しかったらしいが。

 こういう「人が変わったような」というのは実際よくある話で、仕方ない。私自身も変化している所はある。ただ、やっぱり性格が好きだった相手の性格が変わっていたというのは、なんとも切ない話である。
 巨大な豆の鞘に入れられたとかいうホラー映画のような話を持ってきたくなるのも、理解できるのである。

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