ふた付きドンブリ円盤

 宇宙人とかUFOというのは何か怖い存在だ。しかし時代によってはそうではないのかも知れない。

『UFOと宇宙』1976年10月号には東北地方でのUFO目撃の例がいくつか載っている。
 その中で私にとって最もユニークで興味深いのが『フタ付きドンブリ型円盤-蔵王山麓に出現』という記事である。
 目撃されたのは1974年8月6日午後8時頃、宮城県遠刈田温泉近くの別荘地『蔵王園』。目撃者は当時71歳の小林キクさん。この年の6月から住みなれた仙台の家を長男家族に残して、旦那さんと『隠居』してきたという。

 その日は30度を超える暑い日、キクさんが『スター千一夜』を見終わって寝ようと思い、廊下に出たところでガラスが明るくなったのに驚き、上を見上げるとそこに円盤が『居た』のだという。
 それはお釜に似た形で、見掛けの大きさは山の向こうに沈む太陽の数倍、下は赤みがかった『燃えるような』オレンジで、上の『フタ』の部分は灰色かクリーム色。後で目撃時は仙台に行っていた旦那さんに見てもらった角度は32度。地図で見ると蔵王園の通りと平行に北西方向に飛び去っている。音はせず、ヘリコプタより遅かったそうだ。

キクさんの話がまた興味深い。円盤を恐いとも思わず、「心を豊かに楽しくしている」(『UFOと宇宙』誌による表現)様子が判る。

「飛行機は細長いですよね。でもこれはマールイんですよね。(中略)そうとう大きかったですね。この室をすっぽり持ち上げたぐらいの10メートルはあるでしょうね」

「だからまぁ、(宇宙人に)この寝巻き姿を見られたんじゃないかと思って」

「いやーあまりにきれいで、これこそ空飛ぶ円盤だ。タァー(とおばあさんは両手を胸に当てた)。こんなにきれいなものを見て幸せだぁーと胸に感じましたよ。だって見られないでしょあんなの」

「また見たいですよ。これで2度見たから(注:2度目の目撃は1976年3月12日夕方。満月ぐらいのオレンジ色の物体が二つ東の空に見え、南から北に飛んだという)、もう一度見たいですね。(中略)その時は寝巻き姿でもいいから大きな声で着陸してぇーと頼みますよ。そんなこと、着陸してくれないでしょうけど」

「そりゃ(乗せてくれるなら)宇宙まででもいいですよ。だけど宮城県とか秋田県じゃないでしょうがどこかに基地があるんじゃないかと思うんですよ。(中略)心が愉快になるようなきれいさですよ」

 またキクさんは目撃後、角谷宇宙航空研究所に連絡したものの、「角谷ではそんなもの飛ばしませんよ」と軽くあしらわれ、がっかりしたという。
 しかし、当時仙台にあった『円盤村』という研究グループで体験を話したり、2度目の目撃の時も円盤に興味のある民宿の主人に連絡したりと、積極的な行動をとっていたようだ。

 当時の熱狂的円盤ブームが影響しているのか、(昔にしても今にしても)その辺のおばあさんの会話のようにはとても思えないのである。

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