Distance: Chère ma petite-4

Chère ma petite-4

今更ながら、自分の望んだものの大きさに
その代償に
我ながら愕然とする

それは霧消した空中楼閣
始めからそんなもの存在していなかった
それでも
最初から分かってわかっていたとしても
オレは行っただろう

内なる衝動は
何も実在のものにたいしてだけ働くのではない
単なる衝動だ
それに従う他はない

誰もそれをコントロールすることはできない
オレ自身でさえも

オレは今、船に揺られて
漠い、暗い宇宙の体内を漂っているが
オレ自身
肉体という乗物に載せられた
一個の漂流物なのでは、という気がしてくる

訓練すれば体は強くなる
思考は論理的になる
少しずつ、理想に近づいているはずなのに
訳の分からぬ熱や
胸の高鳴りに翻弄され
何一つ、思い通りにコマを進めることができない

オレが望めば
タスを手に取り、コーヒを淹れることができる
でもそれは
運命の選択とは違う

肝心なことは
何一つ決められない
それは首長(シェフ)でも大将(ジェネラル)でもない
もっと大きい、目に見えない力のことだ

お前はそれを知っている
始めから、それを分かっていたから
その場に留まり
お前の勤め
情熱のペンを走らせている


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