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人生は劇場だ、なんて言いたくないよ #書もつ

劇団員、という人たちは普段どんなことをしているのか、この状況下でままならない表現活動と収入との折り合い(つくわけないのだけど)、そんなことを考えていたら、この作品を思い出しました。

たまたま職場のそばにあった図書館で見かけて、へー、この作家の作品なんだぁ、と借りた作品。作者の作品としては、登場人物が比較的多めで、それぞれの人の表情が細かく描かれていました。

シアター
有川ひろ

ついつい劇団というと、旅の記録にも書いた劇団四季がスタンダードに思い浮かんでしまう僕ですが、こちらは、いわゆる売れない劇団員の暮らしを垣間見たような作品でした。

物語を作る天才と、それを演じる役者たちがそれぞれの人間性をさらけていくのが、リアルと演技を超えた正直な姿として、応援したくなりました。

いくつかのドラマはあるのですが、ひとりの演じ手が劇団に加入することとになって、新たな展開がうまれていく場面は、とても身近に感じられたのを記憶しています。

僕は、学生時代には、クラス替えなどで新しい才能(当時は単に勉強ができることが、頭がいいのだと思っていました笑)に出会ったり、部活では楽器の上手い後輩が現れたりと、つねに「自分にはない才能」を感じることがありました。

それが、反省や焦りにつながって、もっと努力しなくちゃと思う反面で、自分の得意なことってなかなか見つからないと感じていたものです。

僕は学生時代に吹奏楽部にいたのですが、演劇もなんとなく似ているなと感じました。みんなが上手くないと、ひとつの作品にならなくて、チームとしての向上が必要。でも、ひとりスター性のある人がいたら、安心できるなと。

おなじ“舞台”で表現するというのも似てるなと思いつつ、吹奏楽は大勢で演奏できるから、個人の緊張感は少ないのかもなあと思ったのです。演劇は道楽・・という向きもあるし、そうやって発達してきた文化でもあるかも知れませんが、見ている人と同じ”人間”が目の前で演技しているのを見るのは、何か不思議な気持ちがします。

声を聞いて、セリフを受け止めて、何度も見ていて展開だってわかるくらいなのに、そのたびに感じることが違うのは、受け手である自分が少しずつ変化しているからなのかも知れません。

演じ手の苦悩や、チームとしての葛藤など、演劇だけではない人と人との関わりの描写に、僕の身近な課題を重ねながら読みました。

そして、これからも演劇が残り、僕も含めて観られるように、そこにあることを望むのでした。


このサムネイル・・果たして観客か、演じ手か。なんとも怪しげな雰囲気ですね。infocusさん、ありがとうございます!

#推薦図書 #有川ひろ #演じる

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