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栗の話、書いてみた

栗屋大賞という、栗好きに向けたコンテストがある。
かねてから栗好きとして生きてきた者としては、いまこそ栗の魅力をアピールし、そして自分がいかに栗を愛しているか表明する好機として、やや暑苦しく息巻いていた。ちょうど、そのコンテストを知ったタイミングで、地域でケーキの食べ比べイベントが開催されることとなった。その様子をエッセイという雰囲気で書いて、コンテストに応募した。

応募要項には、ひとり何作でも可、あるいは、作者自身のSNSで発表したものでも可、という寛容な条件が記されていたこともあり、その作品のほかに、さらに2つの文章を編んだ。当たり前のことだが、どの作品もノンフィクションである。

ひとつは、ひさしぶりにひとり旅をした時の、西明寺栗との出会いを書いた作品。秋田県の角館は、じつは栗が有名だった。日本では、あちこちで栗が育てられているが、よもや銀世界の広がる2月の秋田とは。しかも、日本でも有数の大きな粒の栗と出会うという幸運を、現地で耳にした粒の大きさの例えと、自分のいまの生活と重ねながら書いた。時間や、風景(旅先か家庭か)の違いを乗り越える表現が難しく、今読み返しても、旅の思い出なのか、生活の喜びなのか分かりにくいと思う。

もうひとつは、生活の中で感じた寂しさの作品。近所にあった八百屋さんが、ある日突然に無期限のお休みとなり、数日後に閉店してしまった。我が家の冷蔵庫のように使っていたお店には、季節が来るとツヤツヤに光る大粒の利平栗が並んでいた。野菜や果物も新鮮で安く、僕たち家族の大切な存在となっていたお店に、感謝の気持ちを込めながら書いた。当然、寂しさの気持ちが根元にある話しなので、全体的に喪失の寂しさが際立っている。

書き手としては、どの作品にも嘘はない。でも、読み手に伝えるための文章として特に力を込めたのは、最初の作品だ。多くの人が関わり、とても幸せな時間を過ごせたことを、読み手に伝えたいという気持ちがあったから。エッセイを書くにあたって、このコンテストのことを調べてみたけれど、創設されたばかりで、過去の受賞作品がなかった。つまり、主催者の意図のようなものがまだ作品として表れていない、いわば自由な状態だった。

2月の終わりごろ、見知らぬメールが届いた。「栗屋大賞一次審査通過のお知らせ」というタイトルのメールには、あなたの作品が審査を通過したので、ついてはホームページ掲載の可否と、作者名について回答してほしい、というものだった。

メールを読んだ僕は、まさに「驚喜」であった。すぐに、本名での掲載を可として返信したが、少し冷静になって考えてみると、noteに掲載したいという思いもあり、本名とペンネームが混在するのを避けるため、ペンネームでの掲載を改めて依頼した。蓋をあけてみると、エッセイの部門には、ペンネームらしき作者名は少なく、さらに”もつにこみ”という響きは、かなり異質であった。

コンテストの目的は「栗の良さを広める」であると理解していたものの、僕は栗そのものではなく、モンブランの話しだ。ほかの作品は、栗(栗きんとんや、茹で栗など)であったし、多くは母との思い出という、ノスタルジックな作品であった。“もつにこみ”による、好きなモンブランがたくさん食べられて幸せだったなぁ・・という能天気な話は、完全に浮いている気がする。主催者が和栗の専門店ということもあるし、なぜこの作品が通過したのか、自分でも疑問であった。

そう思いつつも、作品の最終選考には一般の投票も関わるとのことだったので、ともかくイベントの関係者である地域の方々に届けばいいなと思い、noteやfacebookを使って、一次選考通過の件をお知らせした。すると、色々な方が喜んでくれたり、作品を読んでくれたりして、感想を寄せてくれた。実家に帰った時にも、この話しをしたら両親が作品を読んでくれた。

読んでくれるだけでありがたいし、楽しかったと言ってもらえると、ほんとうに嬉しい。投票したよ、という方もいて幸せだなぁと思う。文章を書いている人なら分かるが、文字数の多寡でもないし、時間の長短でもなく、人に伝わる文章を書く事は難しいし、苦しくもあるけど楽しいものだ。今回、改めてそんなことを感じたので、長くなったけれども、こうして書いておこうと思ったのだ。

心苦しいお願いではあるが、もしこんな書き手を応援したいと思ったら、栗屋大賞のサイトで、会員登録(栗好きの会)をしていただいて投票に参加してほしい。投票の受付が3月16日までとなっているので、ご留意のほど。もちろん、僕以外の作品も素晴らしく、読むと幸せになれる。こんな時期だからこそ、淡い甘みの栗を頬張るような、ほっこりとした気持ちになってくれたら嬉しい。

・・長々と読んでくださって、ほんとうにありがとうございました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、子どもたちのおやつ代に充てます。 これまでの記録などhttps://note.com/monbon/n/nfb1fb73686fd