2022年10月あたりの短歌

じゃあ次は貴女の番ねと笑う魔女 お前の呪いはあたしに効かない

「さつまいも味噌汁入れると怒るのよ」職場のマダムの旦那様談義

幾千の哀しいことばを読んだだろう光る指先冷たい笑い

あたしには身体と心と過去がある まずそこからよ ねえそうでしょう

「そうねもう私この街に要らないか」ママのグラスに琥珀の涙

好きだった近所のおばあが眠ってる国道沿いのゲオのそばの墓地

真夜中のとびらはいつも閉じている ノックしちゃダメよあしたが消える

空の果て透明な城があるというどなたでもない王様の城

「一度だけ空飛んだことがあるんです」呟いた妻は元魔女志望

曇天の空と地のきわの明るみを 縫うようにとぶ名も知らぬ鳥

虹色のボーダーラインを越えました ここから先はどこでもない国

夜もすがら怒りを捏ねて捏ね続け 石より堅いクッキーにする

「次はどの面被りますかお姫様」「 あたしの素顔、どこに隠したの」

冬までにかぼちゃのパイを焼かなくちゃ精霊たちにお裾分けしなきゃ

黒男さんがもはやクールには見えないの 可愛さしかない、年だなあ私

変わらない四角い家の日常よ 家族と言う名の不思議な箱よ

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