初めて母と映画に行った。

31歳になって初めて母と映画に行った。

小さい頃、映画に連れて行ってくれたのは父親だった。わたしは一人が好きなようで、小学生くらいからひとり映画を覚えた。

そのせいもあってか、大学では映画を専攻し、卒業後、映画関連の仕事もした。だからたぶん、映画はとても好きなんだと思う。

母が映画を観る習慣があるかというとそんなになくて、韓国ドラマにハマる中年女性の典型。15年くらい前に「冬のソナタ」にハマってからヨン様を観に空港に行くようになり、今では東方神起の大ファンだし、韓国俳優のファンミーティングにもいくほどの韓流おばちゃんである。

だから、わたしが覚えてる限り母親とふたりで映画館に行ったことはたぶん、ない。

そんな母がわたしがテレビに入れていたfire stickでサブスクを覚え、Huluでみはじめた「偽装不倫」で宮沢氷魚にハマった。弟より歳下のメンズノンノ系にハマるとは驚いた。

気づいたらファンミに行き、主演映画「his」の舞台挨拶も行き、初日にちゃんと映画を観にいき、パンフレットまで購入する優秀なファンになっていた。

何かのきっかけで「『his』観ないの?」と聞かれて、もともと興味があったわたしは「観るつもりはある」と返事をした。2019年の個人的映画ランキングの上位に来るほど『愛がなんだ』がめちゃくちゃよかった。だから気になってた作品だった。

それからというもの「感想が聞きたい」だの、「いつ観るのか?」だの、舞台挨拶の情報が送られてきて「行く?」と聞かれたり。最近、仕事がバタバしていたし、なんとなくの気分で映画を観にいくわたしにとってやや面倒なやりとりが続いた。

そんな母がレディースデーにまた観にいくという。3回目か、4回目。都内の上映時間も減ってきて、うまくタイミングを合わせられなそうだったので、それに乗ってみることにした。

仕事がバタバタしてやっぱり終わらない。
ハッキリ時間や集合場所が決まらなくてLINEのやりとりする余裕もなくて、ギリギリの時間になり、母を40分ほど待たせてしまった。慣れない駅に苦戦し、乗り換えも間違えて映画も間に合わないかもしれない…。「間に合わなかったら何か食べて帰ろう」と言ってくれたけど、申し訳なさと、せっかくここまで来たのにという気持ちがぐるぐるした。

乗り換えで時間を巻き、なんとか上映には間に合った。何も考えてなかったけど、隣に座る母親とこの映画をどういう気持ちで観たらいいのかと戸惑った。(なぜか母はひとつ空けて席をとった笑)

なぜならこれまで母親と映画について何かを話したこともなければ、彼氏がいてもいないと言い続けてきた。自分の仕事についてだってちゃんと話したこともないし、聞かれてもうやむやにしてきた。

そんな母親とセンシティブな内容の映画を観ることになるとは…映画を観ているとそれは杞憂だったなと思ったけれど。

レイトショーで映画を観て、車でファミレスに行き、夜中のファミレスでなんでもない会話をする。わたしはORBIT UNIONの発表メンバーがヨンフンでそのことでTwitterのタイムラインがいっぱいだし、母親は『his』の感想を追うのに忙しい。

これまで会話をきちんとしてこなかったし、2人で出かけたりもなかった。母親より父親のほうが話が早いとも思ってた。特に何も話さないんだけど。ただ、こーゆうのもありかなあと思ったりした。

もっと優しい気持ちで家族にも接せれるようになれたらいいなあと。当たり前だけど、わたしにはできていないことで、他人にするより難しいことなのだ。

わたしは母親に舞台「ピサロ」を観にいくかと聞いた。

もうチケットを取っていて父親と観に行くらしい。
その行動力でまだまだ楽しく生きてほしい。

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