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2021年7月の記事一覧
【掌編小説】夏の香り
シャァシャァという耳障りな音で目が覚めた。蒸し終わったせいろのようなもわっとした空気を入れ替えたくて、這うようにベッドの頭へじりじりと異動した。寝ぼけ眼で手を伸ばし、窓の鍵に手をかける。人差し指にかかった鍵は少し力を入れるとカランと180度回った。最後の力を振り絞って框に手をかけ、左に押しやった。
しかしそれが間違いだった。シャァシャァという音がより一層大きくなって耳の奥へと入り込んでくる。私は
夏の香りがする沖縄の思い出と伝説の島 第532話・7.8
「今日も雨、うっとうしいわね」「仕方ないわ。毎年7月下旬までは梅雨だから」今日は6月最後の日曜日。やや茶色に染めたセミショート姿をした友達の愛美に誘われた優奈は、この日ショッピングなどの休日を楽しんだ。そして夕方になり、どこかで一緒にご飯を食べることにした。
「あ、沖縄料理店があるわ。うわ、夏の香りがする! ねえ、優ちゃんここにしようよ」愛美が見つけた店の提案に、背中まで黒髪を伸ばしていた優奈は、