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25時のおもちゃ箱

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サークル「25時のおもちゃ箱」の月例テーマで書いていただいた作品たち。2021年10月をもちまして、休止することにいたしました。
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2021年7月の記事一覧

記憶に残る香りを

記憶に残る香りを

目で見たこと、耳で聞いたこと、忘れられない景色や音があるように、香りも同じだと思っている。

大好きな人の香りは、幸せな気持ちになれるし、思い切り吸い込んでパワーを満タンにチャージすることだって可能だ。

サークル「25時のおもちゃ箱」、7月は「夏の香り」をテーマにした作品を書いてみました。

サークル「25時のおもちゃ箱」は、とてもゆるーいサークルです。
ルールはひとつ、その月のテーマに参加した

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距離と夏の香り

距離と夏の香り

流れが変わるのを告げるかのような、

久方の朝焼けだった。

今日はさとしに連絡してみよう。

かなはそう思った。

ちょうど10日前、2週間ほど留守にしていたさとしが帰って来たと連絡してきた。

「今日帰ってきました。まったりしてます。」

なんとなく予感していた、「今日あたり帰るかな?」

出会ってまもなく3年になるというのに、かなはさとしに会うとすこし緊張する。

綺麗に見せたいからにほかな

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【掌編小説】夏の香り

【掌編小説】夏の香り

シャァシャァという耳障りな音で目が覚めた。蒸し終わったせいろのようなもわっとした空気を入れ替えたくて、這うようにベッドの頭へじりじりと異動した。寝ぼけ眼で手を伸ばし、窓の鍵に手をかける。人差し指にかかった鍵は少し力を入れるとカランと180度回った。最後の力を振り絞って框に手をかけ、左に押しやった。

しかしそれが間違いだった。シャァシャァという音がより一層大きくなって耳の奥へと入り込んでくる。私は

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終わらない夏

終わらない夏

梅雨時に感じていた雨の香り。緑の香りが強くなってきたなと感じた頃、本格的な夏がやってきた。

ジリジリと肌を突き刺すような、太陽の光。裸足で歩くと、その温度が熱いくらい。

風に吹かれて、流れてくる夏の香りが好きだ。
潮の香りでも、濃くなった緑の香りでもない、夏の香り。
決して、嗅覚が鋭いわけじゃない。どちらかといえば、鈍い方だと思う。だから、感じている夏の香りは、きっと鼻だけをくすぐる、匂いとは

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夏の香りがする沖縄の思い出と伝説の島 第532話・7.8

夏の香りがする沖縄の思い出と伝説の島 第532話・7.8

「今日も雨、うっとうしいわね」「仕方ないわ。毎年7月下旬までは梅雨だから」今日は6月最後の日曜日。やや茶色に染めたセミショート姿をした友達の愛美に誘われた優奈は、この日ショッピングなどの休日を楽しんだ。そして夕方になり、どこかで一緒にご飯を食べることにした。
「あ、沖縄料理店があるわ。うわ、夏の香りがする! ねえ、優ちゃんここにしようよ」愛美が見つけた店の提案に、背中まで黒髪を伸ばしていた優奈は、

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