創__作

創作研究考察「最近のゲームキャラクターの作り方~小説や映画なんかと雑に比較しながら」

いちにち、半歩。
自分の頭の中にある創作技術を記録して、ちょっとずつレベルアップしていくためのメモ。

エッセイというか、自分のための備忘録ですが、気になる人は読んでって。

【書いてる人】
ゲームのシナリオライター。
このメモの内容もその立場から。

キャラクターって大事だよね

音楽の三大要素というと、リズム・メロディー・ハーモニーです。
もし、シナリオ(物語)の三大要素を考えるのならば、その一つに確実に入ってくるだろうというものが「キャラクター/登場人物」だと思います。

映画脚本や小説の指南書でも、多かれ少なかれキャラクターについての記述があるものです。
キャラクターの作り方のみを扱った本もありますし。

私の持っているシナリオの指南書や技術書?は、ほとんどが映画の脚本術がメインです。おそらくですが、これらは演劇系のノウハウをバックグラウンドに持ちつつ、ハリウッドの実作の中で磨かれてきたテクニックが混ざってるんじゃないかなーと。

で、ゲームの物語づくり、特に私が今メインで受けているモバイルゲームのキャラクターづくりに、映画脚本術系のテクニックはそのまま流用できるのだろうか? と最近ちょっと考えました。

映画脚本におけるキャラの作り方

映画脚本における……とか語れるほど、経験はないのですが、よくあるやり方は「人物の履歴書を作りましょう」的な方法です。

そのキャラクター/人物が、どのような生い立ちで、現在どのような性格で、どんな目標を持っているかというのを、人生をトレースしながら考えていくっていう方法ですな。

まあ、このやり方は「時間がすごくかかる」ことと「エンターテイメントにおいては、きちんとキャラクターの人生を作り上げたからと言ってウケるわけではない」というデメリットがあるほかは、まあよい方法だと思います。

デメリットにしても、この手法自体がはらんでいる問題点というよりも、『ただ凡庸な人生を考えるだけじゃキャラが魅力的にならないよ』ってだけのことなので、私としてもいちゃもんをつける気にはなれません。
そもそも私も簡易的に使っている方法ですしね。

多分この方法は、小説とか、あるいはコンシューマーゲームのキャラクターづくりにも使えると思います。

では、モバイルゲームにおいてはどうなのか。
結論から言えば、「使えない」――というよりは、気をつけなければいけないポイントが増えるように感じています。


モバイルゲームってそもそも何よ。

モバイルゲームって言ってもいろいろあるじゃないか!

まったくもってその通り。
ひとまず雑な感じに「キャラクターがいっぱい出てきて、シナリオもリリース後に色々追加されるゲーム」みたいに思っておいてください。

モバイルゲームの2018年課金売上ランキングは以下の通り

1位:モンスターストライク
2位:Fate/Grand Order
3位:パズル&ドラゴンズ
4位:荒野行動
5位:ドラゴンボールZ ドッカンバトル
6位:LINE:ディズニー ツムツム
7位:グランブルーファンタジー
8位:ポケモンGO
9位:実況パワフルプロ野球
10位:アイドルマスター シンデレラガールズスターライトステージ

このうち「Fate/Grand Order」「グランブルーファンタジー」「アイドルマスター シンデレラガールズスターライトステージ」ここらへんは当てはまりそう。

プレーしてない作品もあるので、他のはどうかわかりませんが……。


で、映画や小説と、上にあげたモバイルゲームの大きな違いと言うのは「(ひとまずの)終わりの有無」「キャラクターの変化の有無」です。

割と雑に語っているので、「本当に終わりがないのか、キャラクターに変化がないのか」と言われると苦しいのですが、まあこういう傾向はありそうだなと感じています。

「キャラクターを変化させずに、終わりのない日常を描く」モバイルゲーム

有名な演劇・映画脚本のフレームワーク「三幕構成」ですが、これは主人公や登場人物が「変化する」ように使われることが多いです。
「変化」を「成長」と言い換えてもいいかもしれません。

キャラクターが最初に抱えている問題や課題が、物語の終わりでは解決されてすっきり気持ちいい! というのが(雑に言えばハリウッド的な)映画の作り方です。

それに対してモバイルゲームでは、キャラの「変化」はあまりしません。それどころか変化が「御法度」とされることが多いです。

というのもですね、日々大量にシナリオが追加されて、メインシナリオ以外にもキャラシナリオだのイベントシナリオだの、物語が木の枝のように分かれていると、キャラを変化させるデメリットが大きいんですよね。

プレーヤーがすべてのシナリオを読んでいるとは限りませんし、そもそもライターが手分けして書いているのでいちいちキャラクターを変化・成長させていては矛盾が生じてしまいます。

なので、最近のモバイルゲームのライターは「キャラクターを変化させずに、でも面白さ(心理的なカタルシス)を与える」シナリオを大量に書かされることになります。

さらに言えば、ゲーム画面なので派手なアクションはできませんし、好きにモブキャラやわき役を登場させることもできませんので、かなり縛りの多い作業だなと我ながら思います。

と、ここまで書いて思ったのですが、このモバイルゲームのシナリオ/キャラクターに求められる「変化させないこと」は、最近出てきた現象なのか。

おそらく、そんなことはないんじゃないかと。


「サザエさん時空」と「データーベース消費」

キャラクターを変化させないことを求められる物語――「サザエさん」もその一つです。

サザエさんはいつまでたってもお魚くわえたドラ猫追っかけて裸足で駆けていきますし、カツオも小学生のまま永遠のときを生きています。

他にも「ドラえもん」でも、のび太はいつまでも怠け者だし、ドラえもんはいつまでたってもネズミへの恐怖を克服できません。

キャラクターを変化させない、というかそんなもん必要ある? みたいな考え方(語弊アリ)として、ゼロ年代の初頭には東浩紀が「データベース消費」の概念を提唱したりしてますし。
(なんだか急に懐かしい気分になってきた)

そう考えると「キャラクターを変化・成長させない」という方法は決して目新しいものではなさそうです。

じゃあ目新しくないことについて、長々と語ってきたのは何故なのか。

私の心に引っかかっているのは2点、
・キャラクターを変化させずに消費者(プレーヤー、読者、視聴者)を楽しませるための方法論は整理されているのか。
・今日のキャラクター論は、サザエさん時空~データベース消費だけで説明できるのか


モバイルゲームにおけるキャラクター

・キャラクターを変化させずに消費者(プレーヤー、読者、視聴者)を楽しませるための方法論は整理されているのか。

こちらに関しては、おそらく個々人のクリエーターがノウハウとして持っているとは思うのですが、方法論として整理されていない、あるいはスポットが当たっていないような印象を受けるんですよねぇ。

私の印象でしかないので、技術としてある程度体系化されている可能性もあります。

漫画の世界――とくに少年漫画では10年20年と連載されることがありますので、「キャラクターをある程度変化させない」「変化しても、初読の読者にも楽しませる工夫」のノウハウはまとまってるのかも。

例えば尾田栄一郎先生の『ONE PIECE』の主人公ルフィは『海賊王になる』という目標は持っているものの、目標達成は引き延ばされ続けています。

じゃあ何をやっているのかと言うと、基本的には他人のトラブルに首を突っ込んだり、行く先々で火の粉を払ったり、仲間のために何かしたり……みたいな感じで延々とストーリーが続いていくんですね。

他にも「こち亀」の両津勘吉なんかは、そもそも大きな目標をもっておらず、毎回1話完結で物語が紡がれていくわけですから。

ちょっと漫画の製作ノウハウも調べてみようかな……。


・今日のキャラクター論は、サザエさん時空~データベース消費だけで説明できるのか

正直な話、2010年代以降のサブカルチャー論はあんまり真面目に追っていないので、新しい概念が登場しているのかもしれません。

で、その上ですごく雑に議論を展開すると、最近はキャラクターを記号的に消費するよりも「関係性」にスポットが当てられた作品が目立ってきた印象です。まあこういう作品も昔からあるにはあるのですが、うまく言えないもののなんとなく昔のと違う感じ。
(とくに、ウケそうな関係性を上手に描いた作品が、ツイッターですぐにバズったりする感じが)

例えば、

からかい上手の高木さん
https://comic.pixiv.net/works/1943

先輩がうざい後輩の話
https://www.pixiv.net/user/10509347/series/21859

男子高校生を養いたいお姉さんの話
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/10834108156629697257

かぐや様は告らせたい
https://ynjn.jp/app/title/131

宇崎ちゃんは遊びたい!
http://seiga.nicovideo.jp/comic/31616

まあここら辺の作品。

ここら辺の作品を、ただ同じ関係性だけが続く「サザエさん時空」的と言うのもなんか違うし、単にに記号の組み替えの中に快楽を見出すデータベース的な消費とも違う気がします。

「大きな物語」も「大きな非物語」も共有できなくなった人々が、キャラクターの関係性という「小さな物語」を共有するようになった……みたいな感じでしょうかね。

で、以上2つの議論(とも言えない雑な語り)をまとめると、モバイルゲームにおいて求められるキャラクターの作り方は……

・物語を引き延ばすことができる、「目的非達成型」の性格づけ

⇒『ONE PIECE』におけるルフィで考えると、「海賊王になる!」という目的にフォーカスするのではなく、「仲間想い」「ふざけているようで熱い」「目標に向かって突き進める心の強さ」「ゴム人間」みたいな、シチュエーションによっていかようにも発展させられる性質が大切

・キャラクターとプレーヤー、キャラクターとキャラクターの関係性が見える

⇒例えば最初にモバイルゲームの例として挙げた「FGO」では、プレーヤーは「マスター」、それ以外のキャラは「サーヴァント」という関係性がありますし、「アイドルマスター シンデレラガールズ」はプロデューサーとアイドル、という関係性があります。
キャラクターの設定のみではなく、キャラクターが放りこまれる人間と人間の関係性のなかにこそ面白みを作らなきゃならない。
キャラクターを魅力的に作るためには、魅力的な関係性を生み出す土台となる世界設定をしっかりつくらなきゃならないという。

まあ、言ってみれば当然のことなのですがキャラを大量に出さなきゃいけないゲームとかだと、ここら辺がおざなりになったりすることもあるので。


全体のまとめ

・モバイルゲーム(キャラクターがいっぱい出てきて、シナリオもリリース後に色々追加されるゲーム)的な作品における、キャラクターの作り方は、映画脚本の技術の流用だけだとちょっとつらいかも。

・魅力的なキャラを作る方法論はまとまっているかどうかわからないので、もうちょっと追求したい。

まとめっていってるけど全然まとまってないね!
備忘録だから問題ないね!

以上。

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