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エリアデザインラボ #5

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1.蔵前のまちのこと

 東京都台東区蔵前は、上野の東、浅草の南側に位置しています。このエリアは、ここ10年ほどで、ゲストハウス、雑貨屋、カフェなどが集積してきている注目すべきエリアです。
 蔵前の歴史を辿ると、革製品・靴・バック・玩具・花火など卸売業が盛んな地域でした。しかし、昭和60年代頃から、人口・事業者数が減少してきており、空き家・空きビルが増加したため、平成25年頃まで衰退の一途をたどります。この状況をポジティブに捉えると、空間資源が豊富で、上野や浅草などの近隣エリアと比較して家賃が安いなどの状況がありました。また、その状況に加えて、元々ものづくりのまちとしてのポテンシャルがあったため、若手のクリエイターやデザイナーがこのエリアに店舗を構える流れができ、10年ほどかけて”ものづくりの町”として再認知されるようになりました。

 蔵前がこのように変化した仕組みを分析してみると、以下の5つの要因があると思います。
①まちの文脈をとらえていること
 まちに暮らす人々が同じ方向のベクトルを持つためには、まちの文脈に沿ったモノが有効にはたらくことが多いです。蔵前の場合は、”ものづくり”というポテンシャルが今の活況に繋がっています。
②関わる人たちのしなやかなネットワークがあること
 昔からの固定化された既存組織では、若者が動きにくいということが多いです。入った瞬間からピラミッド構造で、トップダウン型で動いている組織は機動力がありません。蔵前は、若手を中心とした機動力のある組織構造になっています。
③他所者を受け入れる気風があること
 蔵前は、浅草に近いということもあり、外国人の往来が多く、外から来る人を自然と受け入れる雰囲気があります。これにより、新しい文化・価値観の交差が生まれています。
④新規事業者を育成する装置があること
 台東デザイナーズビレッジがこの役割を果たしており、育成期間3年の後、蔵前に残って仕事を続ける作家が多いこと特徴的です。
⑤地元の有力者が若手を信頼して任せていること
 蔵前では地元の有力者が若手を受け入れて、前に出してくれるという雰囲気があります。既存コミュニティと新規コミュニティの重層化うまく機能しています。

2.自分のまちは自分の手でつくる

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 福島市県庁通り沿いにあるOPTICAL YABUUCHIの代表であり、ニューヤブウチビルのオーナーでもある藪内義久さんにお話をお聞きしました。

Q)ビルの新たな入居者を増見つける際に、どういう方を選んできたのですか?A)自分自身の手でDIYで改装したビルなので、思い入れが強く、入居者は誰でも良いという気持ちにはなれませんでした。2Fのレコード屋さんが入居してくれた時、自分の好きな雰囲気の部屋をつくったら、同じような価値観を持った人たちが入居してくれるのではないかと思うようになりました。ヤブウチビルの入居者は、私たちと同じ方向を向いている人じゃないと難しいと感じています。
 このビルでやることを通じて、かっこいいものやおしゃれなもの、質の高いものを提供していきたいと思っています。地元の後輩たちに見られても恥ずかしくないものを作っていきたいです。

Q)藪内さんのビルは、センスがとても良いと感じています。それらは今までどのように身につけてきたのですか?(片平)
A)難しいことは何もしていませんが、日常生活の中で、 自分の好きな空気感を覚えるようにしています。それを店で表現するにはどのようにすればよいかをいつも考えています。例えば、イギリスに1年ほど行っていた時の町の雰囲気や通っていたお店の空気感を覚えていて、それを自分のお店で表現するようにしています。

Q)藪内さんにとって、まちづくりとはどのようなものですか?(鈴木)
A)私にとって、自分の暮らすまちというのは他人事ではなく、 自分事です。まちの中にいると、 改善すべきところはどこか、何があれば楽しくなるのか、常に自分ごととして捉えて見るようにしています。今は、自分のビジネスのことだけ考えていてはいけない時代だと考えていて、地域貢献 ・未来のこと・ 環境のこと・子供のこと・ご年配の方のことも考えないといけません。それが直接仕事に繋がらなくても、巡り巡って、自分のお店の価値を向上させていくのだと思います。

ライター:上神田健太 書き起こし:宮武真鳥

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