20半ばで初めて「日本酒の味」を知った新潟県民の話

新潟県と言えばお米。お米と言えばお酒が有名な県である。
新潟県には自販機のように様々な銘柄のお酒が100種類以上、ずらーっと並んでいる店があるくらいだ。

そんな県で私は生まれ育ったのだが、全くと言っていいほど、日本酒を口にする機会が無かった。
私は、見渡す限りの田畑が並ぶド田舎育ちなので、コンビニ一つ行くにもバイクか車が必要であり、大学の飲み会でも「あ、すいません、帰り車運転するんです(汗)」と断らねばならない。
だから、私の知るアルコールの味は、好奇心からコンビニで買ったビールの苦みと、安いカクテルの甘さくらいだった。

だが、転機が訪れる。就職に際して一人暮らしをすることになり、都市部の方に住まいを移した。大抵の移動が電車やバスなどの交通機関で済み、車を必要としなくなったのだ。
最初はバタバタと新生活に追われて気づかなかったが、会社の飲み会を適当に流し、とぼとぼと歩く帰り道、ふと気づいた。

「あれ、俺はもう自由にお酒を飲んでもいいのでは?」

本当に遅い気づきだった。大学卒業までずっと車に乗らない日は無かったので、「お酒は飲まないもの」と無意識に刷り込まれていたからかもしれない。いやめっちゃ損してるじゃん……。
何はともあれ、善は急げだ。日本酒無知なりに下調べをして、駅付近にありそうな、「新潟のお酒」っぽい店をピックアップする。取り敢えず友人は誘わず、一人で。
そして、冒頭で挙げたお酒の自販機がある店、「ぽんしゅ館」にたどり着いた。

いざ、日本酒の世界へ

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「このコインを入れた後、おちょこを乗せてボタンを押してください」

言われるままおちょこを受け取り、私はぽかんと周囲を見渡していた。
圧倒的だった。一面に広がる限りの酒、酒、酒。売店にはずらりと並ぶ、漬物やチーズなどのおつまみ。この店を構成する全てが、日本酒を楽しむために構成されている。無数に並ぶ自販機を眺めるが、銘柄もわからなければ、初心者向けのお酒の味も分からない。
「もしかしたら、初心者が来るには早かったのかもしれない……」と早速途方に暮れていたが、

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オススメがバッチリと書いてあった。ありがてえ……。

という訳で、非常〜〜〜に長い前置きを経て、いざ日本酒。

……

結論から言うと、最高の体験だった。
雪のようにふわっと溶ける優しい口当たりのお酒もあれば、ピリッとした辛さが、逆に一口をじっくり長く味わえるようになっている。「フルーツみたいな香りのお酒もありますよ」と言われて「いやいやホンマか?」と飲んでみたら、甘さや辛さとは違う、すっきりとした香りが広がったり。銘柄が変わる度に全然違う味わいが楽しめて、お酒初心者には驚きの連続だった。

甘いお酒が無難かと思っていたら、辛いお酒とおつまみの組み合わせが強い理由を思い知ることになったり。「日本酒」と一括りに言っても、本当に多種多様な味わい方がある、奥深い嗜好品なのだと、しみじみと感じた。

コイン分のおちょこ5杯を飲み終えた頃には、ふわふわとした多幸感に満ちていて、満足しながら帰路についた。
また来よう。適当にビールを飲むのでは感じえない、特別な体験だった。

帰った勢いで、他県に住む知り合いに「新潟のお酒おいしかったんですよ〜」と語り、話が盛り上がったりもした。実際に飲みを交わさなくても、「お酒」という共通の話題でコミュニケーションが円滑になるのを知れて、それも面白い発見だった。

そんな体験をしたのが、つい先週の話。
酒の虜になったところに、2020年にいがた酒の陣が中止のニュース、逆に新潟の美味しいものプレゼンタグがトレンド入りしているのを見て、書き綴ってみたのでした。

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