同人誌、100部頒布の難しさ

2019年9月10日、10月に行われるスパークのスペースが発表された。
サークル参加側としては配置によってイベントの楽しさが変わり、一般参加側としてはお目当ての本を頒布するサークルチェックを行えるようになるので、やはりスペース発表は前夜祭のようなワクワク感がある。

イベント自体は1日、コミケなどで長くても4日と限られた時間ではあるのだが、Twitterでの盛り上がりを見るとすでにイベントは始まっているように感じられ、この空気もなかなか好ましく思う。

サークル参加者の大半は原稿に精を出す時期だろう。特に今回は10月からの増税もあり早めに入稿を目指す方も多いようで、タイムラインに原稿進歩をはじめノベルティ告知だの新刊予定の内容だの宣伝も賑わっている。

そしてサークル参加者なら一度でも悩むであろう、どれだけ同人誌を印刷するか。一般の方には関係ないような話だが、「欲しい」と思う人より印刷している部数が少なければ泣きを見る人がそれだけ出るのでまったく無関係ではない。

逆に「欲しい」と思った人が想定より少なければ、サークル主が精神的にも金銭的にも辛い思いをするので、どれほど印刷すればいいのかと部数を見極めるのは中々難しい。

そして100部の頒布は難しい。まず100部も発行しないサークルが過半数という現実がある。そしてサークル参加者の6割超えが赤字活動の現実がある。

コミックマーケット35周年調査報告にこの辺りの詳細が書いてあるので気になる方は目を通していただきたい。

さて、スパークの開催時間は10:00~15:00の5時間、分単位にすれば300分である。この5時間で100部頒布しようとすると3分に1冊の頒布ペースでなければならない。

これは驚異的な時間の短さである。一般参加者でもわかると思う。あの広い会場で、目当てのサークルを3分以内に見つけて購入するのが難しいことを。

仮に50部だとしても1冊6分で、1万近くあるスペースの中でふらっと立ち寄り見つけてもらうのが難しい時間だ。ジャンルを絞って1000SP程度の中から見つけ出すとしても、やはり難易度が高いことはあまり変わらない。

実際は開催すぐは一般参加者入場まで時間があるのだが、あらかた入場後は列ができたり、入場までにかかった時間を差し引けば、やはり50部をイベントで頒布するというのは難易度が高く、100部はさらに難しいと言わざるえない。

それでも昔と比べたら、同人誌通販業者も増え、自家通販もやりやすくなってはいる。それらを使えば100部はなんとか頒布できるのではと考えるが、それも甘い考えである。

たしかに本気で欲しいという人には通販はありがたい存在だが、逆にイベントの高揚感のない中での購入というのは人はいたって冷静だ。ついでに買おうみたいなことが発生しにくい環境でもある。

そしてイベントで50部頒布できたとして、別途で本気で欲しいというファンが50人もいるかというと……少し切ないものがある。たしかに中にはジャンル買いの方もいるだろうし、好きな同人誌の金額は気にしないという意見はあるが、現実はシビアなのだ。

いくら金の糸目をつけないといっても、使えるお金は有限である。時には泣く泣く諦めることもあるだろうし、その価格を出していいと価値を見いだせなければ財布なんて緩めない人が大多数だ。

つまり100部頒布しようと思えば、100人に財布を緩めていいとその価値を見出してもらわなければならない。学生の1クラスが40人とすれば、2クラス以上の数の人に、自身の作ったものを認めてもらわなければいけないと考えていただければ、難易度がわかるだろうか。

上記のような理由で、サークルの過半数は100部未満の印刷部数であるし、6割以上が赤字の現実がある。もちろん、過半数に入らなかったサークルや4割黒字もいるだろうし、遠方か関東近郊に在住かで赤字か黒字かのハードルも変わる以上、安易に難易度も断言できないのは承知である。あくまで、私の考え方という話だ。

そういうわけで同人誌100部の頒布というのは、実は難しいんだよという独り言でした。

そして限られた時間、会場内で私のスペースにきてくださる方ありがとうございます。通販で購入してくださった方、ありがとうございます。

そもそも私の小説を限られた時間を使って読んでいただけることが嬉しくて仕方がない、こんなところまで読んでくださって本当にありがとうございます。

文字を書く楽しさと、感謝の心は忘れたくないなと思い、あらためて記録として整理して今回は書いてみました。みんなありがとう。

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