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され妻の夫は宇宙人

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され妻の夫は宇宙人 十一

され妻の夫は宇宙人 十一

十一
今年の桜は四月の初めまでもって、沙耶は桜の花と新しい制服の写真を飾ることができた。高校生活をエンジョイしてほしいなと背中を毎日見送る。
今度は恵茉が高校受験の年である。恵茉は六月の引退試合に向け、部活に邁進しているところだ。もう少し勉強した方がいいんじゃないかとも思うが、きっと部活が終わるまで集中しないだろう。
 私はと言えば、太一が再び不倫しないか心配になりながら、毎日を過ごしている。どう

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され妻の夫は宇宙人 十

され妻の夫は宇宙人 十


 二月の一般選抜で沙耶は第一志望の高校に無事合格した。もし、不合格だったら、問答無用で太一を追い出すつもりだった。
「離婚はしたくない。反省している。もう絶対しないから」
 あの雪の日、太一は私の前で土下座した。
「本当にごめん。俺はこれからの人生、ずっと唯香と生きていくから。懲りた。もう嫌だ。あんな思いたくさんだ」
 それはそうだろう。私も疲れたよ。
「俺はもう女の人と付き合わない。不倫の危

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され妻の夫は宇宙人 九

され妻の夫は宇宙人 九

 九
 冬の暖かな日差しが窓ガラスから入ってくる。が、これは一時的なことらしい。空を見ると、どんよりとした黒い雲がこちらに迫っていた。朝からテレビでは昼過ぎから雪と言っている。
 太一は沙耶たちよりも早く会社へ行ってしまった。
今日はバレンタインデーだ。そして明日が沙耶の選抜入試である。太一はなるべく早く帰宅するようになって、なんとか家族として継続できるように慎重に過ごしているところだ。
 天気予

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され妻の夫は宇宙人 八

され妻の夫は宇宙人 八


朝六時。空はまだ暗い。せめて陽の光が入っていれば気持ちも明るくなるのに。寒くて起きるのがもっとも嫌な二月だ。
 寒い寒いと言いながら、エアコンとストーブを点ける。朝食を済ませた沙耶と恵茉はマフラーを着け、学校に行きたくないとブツブツ言いながら靴を履く。
「受験まであと十日しかない」
「お姉ちゃんならできるって!」
 恵茉が沙耶の愚痴に答えた。
「そうそう、沙耶ならあと少し踏ん張れる!」
 私も

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され妻の夫は宇宙人 七

され妻の夫は宇宙人 七


 離婚するか、離婚しないか。そんなことよりも沙耶の進路が大事だ。
 一週間後。沙耶の自己申告の通り、高校の推薦入試は落ちてしまった。
「ママはパパと離婚しないようにするから、沙耶は高校受験に全力を尽くして。あなたの人生はあなたが守らないと。恵茉、学校も部活も続けられるようにするから安心して。これ以上二人に迷惑をかけないようにするね」
「ママ、それでいいの?」
 沙耶は顔を曇らせた。
「うん。マ

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され妻の夫は宇宙人 六

され妻の夫は宇宙人 六


「振込の確認、取れたから。はい、これ契約書ね」
 和樹はぺらりと紙をバッグから取り出した。
 これが一億円の契約書か。おもわず凝視する。
 ただのA四の白い紙にパソコンで打ったであろう文字が羅列している。
「今ね、うちの妻に手を出した輩全員から取り立ててきたんだよ」
 和樹は清々しい笑顔だ。
「え?」
 手を出した輩全員って、やはり複数だってことだよね。すごいな、棚田未唯。
「未唯からもお金を

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され妻の夫は宇宙人 五

され妻の夫は宇宙人 五


「今、お宅の家の前に着いた」
「わかりました」
 靴を履いて玄関を出る。太一は私の上着のポケットにスピーカーと録音アプリをオンにしたスマホを仕込ませた。このスマホは沙耶のである。太一は私のスマホで会話を聞いている。
 棚田和樹。やはり千葉教養大学の同級生だった。偶然って怖い。ビジネスマンの格好をしていたからすぐに分からなかった。でも、彼の目は昔と変わっていなかった。きっと話せば分かってくれる。

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され妻の夫は宇宙人 四

され妻の夫は宇宙人 四

四 
 スッキリとした青空が広がっているが、冬の朝はやはり寒い。沙耶と恵茉はさっき学校に行ったばかりだ。コートを着て、バタバタと出ていった。明日は沙耶の推薦入試だ。沙耶はすでに緊張しているようだった。
「ピンポーン」
 玄関の呼び鈴が鳴る。
「多分、恵茉か沙耶だから、玄関、ちょっと出て?」
 有給休暇にした太一は、一階の自分の部屋にいるはずだ。気になる仕事があるから、ちょっと仕事してくると言ってこ

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され妻の夫は宇宙人 三

され妻の夫は宇宙人 三


「あの、アプリの人ですか?」
 寒くてしっかりコートのボタンを閉めていると声をかけられた。買い物に行こうとしてうっかり病院の前を通ってしまった。しまったと思う。
 最近はナンパされるので病院前を避けていたのに。
アラフォー女性が若い男性にいつもナンパされるというは、普通に考えてあり得ない。若い頃ならいざ知らず。だから、なんだか気味が悪くて、病院の前を歩くのは避けるようにしていたのだが、うっかり

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され妻の夫は宇宙人 二

され妻の夫は宇宙人 二


「ええ? なんで。高校受験って二月だろ。だったら行けるだろう」
 そうだった。あの時、太一は私に九月に旅行に行こうと迫ってきたのだ。さすがに高校受験を控えている子どもに学校を休ませて家族旅行はいかがなものだろうか。これは穏便に断らなくてはいけない。太一は拗ねると面倒なのだ。
「推薦入試は一月よ。恵茉も学校があるし」
「パパ、私、高校受験だよ? 内申書もかかってるし、それは無理」
 沙耶は嫌そう

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され妻の夫は宇宙人 【完結済】あらすじと本文一

され妻の夫は宇宙人 【完結済】あらすじと本文一

◆あらすじ
私は夫・太一、長女・沙耶、次女・恵茉の四人家族。今年は長女が高校受験の大事な時。中二の次女は初めての彼氏ができて、部活に打ち込み、青春中。そんな時、夫の不倫が発覚。相手の夫からは一億円を要求されているとわかった。太一は本気ではなかったというが……。相手は誰? 一億円って、払えないわ。誰が私を襲い、陥れようとしているの? これから私たち夫婦はどうなるの? 助けて。でも、家族を守れるのは、

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