アローム

幼稚園の頃、パン屋さんになりたかった
パン屋さんの換気扇から漂う香りに
一日中包まれていたいと思っていた

商店街にアロームという
パン屋さんがあった
そこのパンは本当にどれも美味しくて
パンダの顔になったクリームパンも
他の店とは何かが違うベーコンエピも
クランベリージャムが使われたパンとか
クロワッサンも抜群に美味しくて
いつも、なかなか選べなかった

小学生の時、パン屋になっても
好きなパンが食べれる訳じゃないよ
そんな事したら、お店が潰れるよって
友達が、私に言ってきた
焼き上がるパンの香りを嗅ぎながら
好きな時に好きなパンを食べたいと
思っていた私は、ただただ衝撃で
何も言い返えせなかった

大人になって、アロームとは
フランス語で香りを意味すると知った
大好きだったパン屋さんはもう無いけれど
目を閉じ、深く息を吸い込むと
商店街に漂っていたあの香りを思い出す

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