見出し画像

挑戦者・表現者が、未来に物語を紡げるように。―conote inc./Ciroci inc. 山田邦明さん

「何かを始めるときに必要なものは、
実はすでに持っていたんだなあと気づいたんです」

こう話すのは、conote.inc(以下、コノテ)とCiroci.inc(以下、シロシ)の代表を務める、山田邦明さん。


ももスタのコーディネーターでもある山田さんは、長年スタートアップに従事し、すべての挑戦者・表現者に寄り添い、応援することを仕事にされています。


山田さんが語る「必要なものはすでに持っている状態」とは、どのような意味なのでしょうか。山田さんのご経験を伺いながら、紐解いていきたいと思います。


気がついたら起業していた

conoteロゴ

――まずは、ご経歴を教えていただけますか?

27歳で弁護士になり、スタートアップや著作権を得意とする、東京の弁護士事務所で働いていました。


その後、(株)アカツキというスタートアップの会社に転職し、管理部の立ち上げをしたり、IPOといって「企業を上場させる」プロジェクトの主担当をしたりしていました。

アカツキ


アカツキが上場したタイミングで自分のキャリアを考え、地元の津山に帰ることにしたんです。エーゼロ(株)に役員として就任し、西粟倉村ICOのプロジェクトを行っていました。こちらは、世界で初めて「地方自治体が仮想通貨を使って資金調達をする」というプロジェクトです。


ただエーゼロからは離れることになり、そのタイミングで設立したのがコノテです。今は少人数のメンバーと16名のインターン生と一緒に、教育を軸に事業を展開しています。


「ももスタ」もコノテの事業のひとつで、僕自身もメンターとして関わっています。


そして2021年1月にシロシを設立しました。


――弁護士時代から、スタートアップに関わっていたのですね。

弁護士のときからというより、大学時代からスタートアップは身近な存在だったんです。

大学に編入した際、チャレンジングな友人がたくさんいて、なかには起業した友人も多くいました。

以前転職したアカツキの代表も、実は大学時代の同期で。彼に誘われたから入社をしました。


――山田さんご自身は、学生時代に「起業したい!」と思わなかったのですか?

今すぐ起業したい!という気持ちはなかったものの、いつかは起業したいと思っていました。

僕、団体行動が好きではないんですよね……。でも人に興味はあるので、一人ひとりを深く知るのは好きなんです。


個人を尊重するチームなら居心地がいいだろうなあと思っていたので、いつかは起業して自分にとって心地いい環境を作りたいと考えていました。


わからないことへの解像度を上げる

幼少期

――山田さんのnoteを拝見し、投稿数の多さに驚きました。キャリアが変わるときもリアルタイムで投稿されていますが、何か「書く理由」はあるのでしょうか。

ありがたいことにこうして取材いただく機会が増えて、そのたびに自分の思いを話すんですけど、伝えたいことが5%も伝わっていない感覚があるんですよね。

聞いてくださる人の問題というより、自分自身がその時どきに自分の感情に一番合う言葉が選べていなかったり、その場に合わせた言葉を話してしまったりするからだと思っていて。


伝わっていないものを自分の中に残しておくのはモヤモヤするので、noteに書いてまして……。


――「思いが伝わらないもどかしさ」ですか……。

子どもの頃から、自分の思いは伝わらないなあと思っていたんですよ。

4~5歳のころ、自宅に来たクリーニング屋のお兄さんにも思いが伝わらなかったのを覚えています(笑)


当時、母と祖母は外出をしていてすぐには帰らないとわかっていたので、僕はお兄さんにずっと話かけていて。


僕としては「待ってもらっている間に僕が話をするから、お兄さんの時間を無駄なものから楽しいものに変えたい」と思っていたのですが、たぶん伝わっていなかったですね。だんだん「ガキを相手にしている」という表情になってきたのがわかったので……。


実際、母が帰宅したときに「生意気なガキですね」と言って去っていったんですよ。母もすごく覚えているそうです。


伝わらなくて傷つくことはないんですが、思いはそもそも伝わらないんだなあと今も実感しています。


――幼いころの記憶が、かなり鮮明ですね。

覚えているということは、伝えられないという「できなかったこと」に対して自覚的なんでしょうね。

今では自分ほど内省している人はいないだろうと思うほど、内省的な人間になったと思います。


――自己理解を深めるのは苦しいと思う人もいると思います。なぜ山田さんは、内省を習慣化できているのでしょう。

やっぱり「できない」「わからない」ものをそのままにしておくのが気持ち悪いんだと思います。

「わからない」のであれば、「どこがわかっていて、どこからがわからないのか」を明確にしたいんですよね。物事の解像度を上げたいというか。


解像度が上がったら頭のなかがスッキリして嬉しいし、それを発信できたらさらに嬉しいので、僕にとっては苦ではないですね。


――noteで公開されていた「マインドマップ」にも非常に驚きました。解像度の上げ方が洗練されているというか。

よく驚かれるものの、マインドマップを書く労力は限りなくゼロに近いんです。

マインドマップ

(引用:頭のなかぐちゃぐちゃで、本当にやりたいことを見失いそうになっている人向けのマインドマップコーチング―山田さんのnoteより)


というのも、会話中は頭のなかで自然にマインドマップが作られているんですよね。


僕としては普通にやっていることでしたが、案外需要が高いと知ったのはとあるイベントの準備中でした。「MindNode」というアプリを使って現状を可視化したら、想像以上に評価が高かったのを覚えています。

自覚はないからこそ、きっと僕の特技なんでしょうね(笑)


「ぐっ」とくる物語を

西粟倉村

――物事の細分化は苦手な人が多そう……。まさに特技だと思います。

コノテの事業ひとつとっても、マインドマップをかなり活用しています。

ミッションとして「瀬戸内に、『ぐっ』とくる物語を...!!」と掲げているのですが、物語を創造する前に、今ある物語を発見したいと思っているんです。


悩みを抱えるお客様と話をしたとき、内容を可視化するためにマインドマップを作っています。


物語って多義的ですが、誰もが物語を持っていると思うし、それをしっかり見つけたり広げたりしたいと思っています。


今は教育事業がメインなので、教育においても物語を見つけ、未来に繋げる仕事をしているつもりです。


――インターン生も、かなり活躍されていますよね!

インターン生と仕事をしていると、年齢って関係ないなと心から思います。「社員の方が偉い」という感情は全く出てこないです。


教育の現場では、教育者が「自分の方が偉い」と錯覚しがちなので、「年齢は関係ない」というのは特に教育者に伝えたいですね。


――教える立場だと、立ち位置がむずかしいのでしょうか……。

僕のようにビジネスの経験値が使える立場にいても、経験値の差分を引いたときに「学生たちと対等でいられるかどうか」が大事だと思うんです。教育者も同じではないでしょうか。


例えば、学生に対して「若いうちは挑戦するべきだ!」と話す教育者は多いですよね。言葉自体は間違っていないと思います。でも僕は「では、あなたは何を挑戦しているんですか?」と問いたいです。


年齢や経験値を差し引いたときに、「今あなたは何に挑戦しているんですか?学生たちと対等に話せますか?」と。


「挑戦するべきだ!」と話してかっこいいのは、話す人が実際に挑戦しているからです。


起業家がかっこよく見えるのは、まさに実際に挑戦しているからだと思います。


苦手なことはお願いして、得意なことで貢献する

――得意なことは伺いましたが、反対に苦手なことはありますか?

めちゃくちゃありますね。

例えば事務作業は苦手です。銀行の振込も間違えることが多いし(笑)


――えっ……今年リリースしたシロシは、アーティストやクリエイターのバックオフィス業務を担っているのですよね。まさに事務作業だと思うのですが……。

そうなんですよね~(笑)
もちろん集中して行っていますが、最後のチェックや大事なところは仲間と一緒にやっています。


僕は仲間一人ひとりがどういう人か、また何が得意で、何が苦手なのかということが常に気になってしまう性質なので、シロシでは以前から仲の良かった人たちと一緒に仕事をしています。「その人が一番活きるところを常に考えている」というイメージですね。


既に個人的に信頼関係を築けている人たちなので、僕が心地いいと感じる「個人を尊重したチーム」になっていると思います。


――苦手なことでも起業はできるんですね。

僕ひとりだったら絶対にできません。事務作業は苦手だけど、会社のなかの仕組みを作って、課題を解決することは得意なんです。


"苦手なことはお願いして、自分はできること・得意なことをやる”。


こうして会社や社会に貢献出来たらいいなと思っています。


冨樫義博と仕事がしたい

――今後の山田さんの目標を教えていただけますか?

具体的にひとつ思っているのは、「HUNTER×HUNTER」(以下、ハンタ)の作者である冨樫義博先生と一緒に仕事をすることです。


すごく好きな漫画なんですよね。先日別で取材いただいたときにも同じことを話したのですが、最近いろんなところで口に出すようにしています。いつか叶うかな、と。


――夢のあるお話!

シロシは冨樫先生のようなクリエイターさんを対象にしているので、パートナー契約をしていただけたら嬉しいですし、それ以外の方法でも構いません。


これは必ずしも冗談ではなくて、仮に僕が冨樫先生と仕事ができたときにハンタがもう1冊生まれたら。さらに言うと、ハンタを無事終わらせた冨樫先生が次回作を描いてくれたとしたら...…


それがまさに、シロシのビジョンである"生まれるはずの「もう1作品」を創る"ことです。僕はそういう世界に生きていたいと思っています。


今持っている、最高のものを創造しよう

りんださんと2ショット

――では最後に、起業に興味がある人や起業を考えている人に向けてメッセージをお願いします。

いきなり「起業」と言われてもイメージが湧かないかもしれません。自分と「起業」なんて関係がないものだ、自分には何もない、そんな風に思っているかもしれません。


……本当に、「自分には何もない」のでしょうか?


僕は「何かを始めるときに必要なものは、すでに持っている状態」だと思うんです。

これは誰にでも言えることで、「人との関わりも、スキルも、あなたが必要だと思っているものは、既にすべて持っているんですよ」と伝えたい。


現状足りないスキルや苦手なことがあっても、それを解消するための方法がわかっていないだけなんです。人への頼り方がわからなかったり、人とのつながりに気づいていなかったり……。


ただ、「すべてを持っている」感覚になるのは結構むずかしいと思います。僕自身、ここ半年で気づいたことなので。

ひとつ言えるとしたら、今の自分が持っているもので、常に最高のものを創造し続けるのが大事なのかな、と。

今の僕が、意識して持っている視点です。


編集後記

「人とのかかわりも、スキルも、すでに全て持っている」というのは"誰にでも当てはまる”と断言する山田さんに、勇気をいただきました。


ただ断言できるのは、山田さんが今持っているもので、常に最高のものを創造しているからこそ。まさに、「行動するからこそかっこいい」の体現者です。


2021年始めには新しくシロシをリリースし、積極的にツイッター等での発信も続けている山田さん。


アーティストやクリエイターが対象ですが、きっと「すべての人がアーティストやクリエイターである」と私は思います。何かをやりたいとき、やっているけどつまずいているとき、専門家に相談してみませんか?


きっと解像度高く、今と未来の自分を思い描けると思います。


▼コノテの詳細はこちら


▼シロシのニュースリリースはこちら


▼山田さんのtwtterはこちら


執筆:こあ/編集:やぶなお


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?