楽しい『家族』旅行〜後日談〜

楽しい『家族』旅行は無事に終わった。
私や夫が恐れていた義母の体調不良もなく、『家族』の皆様それぞれ楽しめたことと思う。
私自身にとっても良い旅行であった。
楽しかった瞬間もあったし、何より道永家の人間の言う『家族』の意味を理解できたから。

さて、旅行の帰り際のこと。
義姉2人が義母と共に売店に向かうのを見つけ、私はため息を押し殺した。
どこのホテルの売店でもそうだが、ここにも消費に時間のかかる食品がずらりと並んでいたから。
病に倒れる前からなのだが、義母は決して値札を見ないし、沢山あればある程良いと思っている節がある。
参照note…ベーコン、ポークビッツ、しらす干し、明太子、ミニトマト。
https://note.com/momo_anne_s/n/n1d7c6f073068

きっと、自身では一口も食べない箱詰めのお菓子や佃煮を山ほど買うに違いない。
義姉2人はきっとそれを止めない、止められないだろう。
「おかあさんは食べられないから、あんちゃんと息子君で食べてね!」
と言う義母の笑顔が見えるようだ。

だが、義母が実際に買ってきたのは、ドレッシング、醤油、ジャム。どれも1つずつ。
ジャム以外は小ぶりの瓶に入っていた。
何でも、片っ端からカゴに入れる義母を、義姉が2人がかりで止めてくれたそうだ。
「昨日、姉ちゃん達と3人で話をした時に『あの話』をしたからだと思う。」
帰宅後に夫がこう打ち明けた。
『あの話』についての参照note…桜でんぶ事件
https://note.com/momo_anne_s/n/nd629753ffac9

夫の話をまとめると
「恥ずかしかった。あんちゃんに申し訳なかった。」
というのが、義姉(次女)の、桜でんぶ事件に関しての感想だったそうだが、義姉(長女)はそれを全く理解できない様子だったと言う。
「えっ、何?どういうこと?おかあさんが好きな物食べて、何が悪いの?」
その後、自身の妹と弟の話を聞き、顔を見比べ、納得したとの事である。
「うーん、まぁ、食べ過ぎも良くないもんね。」

きょうだい3人での話し合いが行われていたことに私は安堵した。
これは、この旅行における夫の最大の役割であった。
事前に話していて欲しいことがたくさんあった。
延命治療は?いよいよ死期が迫ったら緩和ケア病棟に移る?葬儀はどこで?

そういう重要なことは、一切、話し合われていなかった。

「だって姉ちゃん達、母ちゃんにべったりで。」
というのが夫の言い訳で、私が見て感じたことでもある。
義姉家族の宿泊部屋が、義父母のスイートルームの隣だったこともあり
食事の前も後も、スイートルームに入り浸り状態だったそうである。
後に義母が語ったことだが、義姉2人と義母はほとんど睡眠を取らずに朝まで過ごしたそうだ。
「お喋りが尽きなくて。本当に楽しかったわ。」

そもそも旅行という非日常は、楽しくあるべきだ。
そんな場面で、厳しい現実を話し合え、と言うのは酷なことだったのかも知れない。
それでも少しくらいは。…そんな、夫を責める言葉を私はグッと飲み込んだ。
過ぎてしまったことをとやかく言っても疲れるだけだ。
「別の機会を作って、ちゃんとみんなで話し合ってね」
と伝えるのが精一杯だった。

それが、2022年の6月のこと。
現在に至るまで、きょうだい3人だけでの話し合いは、一度も行われていない。

【余談】
上記のドレッシングと醤油は使い切れず、賞味期限切れを確認したのと同時に破棄。
ジャムは一口食べたあと
「美味しそうだから買ってみたけどあんまり美味しくなかったのよ。良かったら食べて。」
というお言葉と共に頂いたので
ホットケーキミックスと卵と牛乳と憎しみを混ぜ込み、炊飯器ケーキとして消費しました。

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