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「あったな選手権」のススメ

 あなたは、エピソードの記憶力に自信がありますか?
 私はあります。

 深夜、近くの銭湯へ通っていたこと。商店街を一緒に歩いたこと。古い手ぬぐいをマフラーにしたこと。一緒に出ようねって言ったのに、いつも私が待たされたこと。洗い髪が芯まで冷えて、小さな石鹸がカタカタ鳴ったこと。

 …すいませんちょっと心の神田川が出てしまいましたが。
 でもまあとにかく、自信があるのです。

 近ごろ、自粛生活によって家族内がギスギスしやすくなっている、というニュースを見掛けますよね。そこで、我が家の「いつでもどこでも、何もなくても出来る」オリジナルゲームをここで公開したいと思います。

 このゲームに必要な前提は、ただ一つ。
相手との付き合いがそれなりに長いこと

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 ゲーム名:『あったな』選手権

ルール:
読んで字のごとく、相手に「あったな!」と言わせれば勝ち。共有している思い出の重箱の、隅をつっつき、ほじくり出し、「うわーー!!!そんなこともあったな!!」と言わせる。ただそれだけのゲーム。

 この説明だけでは分かりにくいかと思うので、以下参考までに、夫と私による選手権の様子を掲載します。

:はい。あったな選手権始めまーす!
:あったな選手権か…。
(沈黙。最初はどうしても沈黙になる仕様)
:えーと、一番最初のクリスマスに、駅前のバーに行った。
:あれな。窓際の席な。
(無効)
:あーじゃあ、夫(※以下、ウミちゃん)の大学卒業のときに、私が義父母を研究室に案内して、お義母さんが涙ぐんだのは?
:普通に覚えてる。
(無効)
:…あっ、アレは?A駅前でご飯食べたの。ん?食べへんかったっけ?
:食べた。
:何食べたっけ?
:それ、私がもらっていい?さて、どこで食べたでしょう。
:えー…どこやっけ。ケンタッキー?
:ちゃう。カレー。右側の通りの、店内見えない感じのとこ。たぶん…。
:ウーン…思い出せへんな…。
(「あったな!」とならないので無効)
:んじゃあ、初めてお義母さんに会った時、私は何を手土産に持っていったでしょう。
:ええ…と…マリメッコ?
:違う。ロクシタンのハンドクリームと、炊飯器で焼いたパン。
:ああ…?あー、あったな。
(私1ポイント獲得)
:んー…
:んー…じゃあ、那須に旅行に行ったとき、帰る直前にそば屋に行ったのは?
:行った行った。美味しかった。
(無効)
:あの時、牧場みたいなとこ行ったやん?その帰りに、絶対バス逃したくないのに、バス停が見つからんでめっちゃ走り回ったことは?
:言われてみれば、そうやったような気がする。
:あったな?
:あったな…。
(私1ポイント獲得)
:あのホテルやったよな?温水プールがあったの。
:え?そんなんあった?…あー!あったわ。入った入った。入ったな!
(夫1ポイント獲得)
:やった、一矢報いた。
(いつも負ける夫)
:おめでとう。じゃあ、あれは?私がバイト行くときにブラジャー忘れたやつ。
:そんなんあった?
:えっ、あったやん。大事件やったやん。私が駅まで歩いて、ジャケット脱ごうとしたら、ノーブラなことに気づいて、絶望してウミちゃんに電話したやつ。ウミちゃんが原付で持ってきてくれて、神〜ってなったやつ。
:あったかあ…あったなあ。
(私1ポイント獲得。ブラジャー談義割愛)
:んじゃあ、産後の入院中、ふるさと納税で貰った、大きい梨を病室で剥いて食べたのは?
:余裕で覚えてる。食べた。
(無効)
:あの、あれは?ほら、産前に仮住まいしてたワンルームで、コンロの前の廊下で、椅子と机並べて鍋食べてたの。
:ん?そうやっけ。
:ホラこれ。

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:神々しいキャベツ。
:ああこれな!この作業台、わざわざ買ったよな〜。
(私1ポイント獲得)
:…やっぱり、私の圧勝やな。
:でも僕、今日は1ポイント取れて嬉しい。


 というわけで4−1で私の勝ちですが、正直切り上げるタイミングなどは適当で、そのまま話が脱線したりします。それでいいのです。

 我が家は、エピソード記憶に関しては私の方が断然強いので、いつも私が圧勝します。(ちなみに、意味記憶は夫の方が断然強い)

 でもこれは、勝ち負けではないのです。

 ゲームをするにあたっての、ポイントとメリットは以下の通り。

楽しむためのポイント:
・ポイント云々よりも、その過程を楽しむ!
・昔の写真を参照してみても◎
・ネガティブな記憶には、あえてアクセスしない(喧嘩はまた別の機会に)
・記憶力には個人差があることを忘れない

 ただただ、ゲームを楽しむ姿勢が大切です。
「アナタ、全然思い出せないじゃない!愛が足りないんじゃないの?!」とか、「そうそう、あの時の君のあの態度が気に食わなかったんだよ!」とか、「そういえばあの時のお金返して!」とか、「それ、いったいどこの誰との思い出なの?!」とか、雲行きの怪しい話になってきたら、ひとまず落ち着いて、となりのトトロでも観てください。

ゲームをするメリット:
・会話が増える
・記憶を共有できる
・記憶を、共通の物語として強固なものにすることができる
・歩んできた道のりを振り返ることができる
・よって絆が深まる

 「親密性」というのは、「共通の物語を増やす」ことだと思います。

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 どうも、家の中で「密!」になりがちなこの時期。
 せっかくだから、「密」な相手との、共通の物語を編み直してみてはいかがでしょうか。



【本日の娘コーナー】

 最近の娘は寝室がお気に入りで、リビングを飛び出して寝室に遊びに行く。

 私もついていくのだけど、寝室はフローリングで足が冷えるので、絨毯の敷かれた廊下で待機することもしばしば。

 今日も今日とて廊下でごろごろしながら娘の気が済むのを待っていたら、いきなり娘が寝室を飛び出してリビングへと走り去った。

 オオ、元気だな…と思って眺めていたら、

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 大急ぎで布を持って帰ってきた。

 ン?どうしたどうした。
 寝室を覗き込む私。

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 マグからこぼした水を、よいしょ、よいしょ、と、一生懸命拭いていた。

 かかかか…賢い…!
 「こぼしたら拭く」ことを覚えている…!

 尊いよ〜
 うちの子尊いよ〜
 かわいすぎるよ〜

 …その布、あなたの新しい下着だけど。
 布は布でも、着る方の布だけど。

 大急ぎで「布」を取ってきたのね。
 着る布と、拭く布の違いも、きっとすぐ分かるようになるね。

 とりあえず、それ、洗濯しよっか。


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