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サイバーエージェントの勝算


1.衝撃の買収今週衝撃的なニュースが発表されました。

2019年のプロレスリングノアはSNSをうまく活用した情報発信と、清宮海斗を中心としたレスラーの活躍でようやく上昇の兆しが見えたところでした。
しかし内情は前体制の負債の関係で資本的な問題を抱えていたようです。2019年の武田前社長もインタビューで「ノアは自前の道場やリングを持っている規模の大きな団体」「だからしっかりビッグマッチをこなして売上を出さないといけない」といった旨の話をしていました。

リデットエンターテイメントとしてもこれ以上団体を保有することは難しかったのでしょう。そうした状況で買収に名乗りを上げたのはサイバーエージェント。サイバーエージェントといえば2017年にDDTを買収したことでプロレスファンには馴染みが深いですね。DDTの高木三四郎大社長がサイバーエージェントとプロレスリングノアを仲介したというのが買収の流れだったようです。


2.他のIT企業のスポーツチーム買収

この10年IIT企業によるスポーツチームの買収が増えています。ソフトバンクのとホークス、楽天とヴィッセル神戸、DeNAとベイスターズ。いずれも親会社が積極的にチームに投資をし、そこから改革を重ね、現在は大きな成功を収めています。特に横浜ベイスターズの成功例は様々なメデイアで取り上げられています。ただし、これらのケースのようにサイバーエージェントが積極的な投資を行うかと考えるとそこには若干の疑問があります。単純に言えばサイバーエージェントの業種がこれらの企業と異なっているからです。


3.サイバーエージェントの業種

サイバーエージェントはIT企業と称されていますが、成り立ちを見ると広告業が主体になっています。楽天が通販サイト、ソフトバンクが通信インフラ、DeNAがモバイルゲームと一口にIT企業と言っても中身は企業毎に違いがあります。後者の3企業は買収したスポーツクラブ自体に収益を上げさせ、グループ全体の利益に繋げるという形ですね。
一方サイバーエージェントは自分たちのメディア(AbemaTV等)を持っている企業です。自社メディアに企業の広告を掲載させるということで利益を上げるというビジネスモデルですね。実際に会見で高木三四郎社長も「企業とのコラボ」について触れていました。


4.サイバーエージェントの勝算

ではなぜサイバーエージェントがプロレスリングノアの買収に動いたのか。サイバーエージェント自体はオーナーの権限が強そうですが、上場企業なので、義理人情やらで企業を買収することは考えづらいです。サイバーエージェントなりに何らかの目的(利益を生み出す勝算)があったからこそ、プロレスリングノア(負債持ちの企業)を買収したのでしょう。ここからは完全な推論ですが、人を引きつけるメディアとしての価値を感じたからではないでしょうか?もちろん負債は大きいが、バックオフィス部門をグループ内で共有できれば、ランニングコストを大幅に下げることができます。そのあたりも含めての勝算があるのでしょう。
またSNS上では「DDTにノアが侵食される」といった危惧も叫ばれています。しかしプロレスという同ジャンル、且つ同系統の試合をする団体(器)をもう一つ抱えるメリットがサイバーエージェント側に感じられません。むしろDDTとは異なる種類の試合をする団体を抱える方が、サブスクリプションの加入者の幅を広げることができるでしょう。また高木三四郎社長の現在のプロレスリングノアのマッチメーカー、NOZAWA論外に対する信頼も高いでしょうし。
ただしプロレスリングノアで大幅に稼ごうというスタンスではないもしれません。あくまでも複数所持しているコンテンツのうち1つという立ち位置で赤字でなければ良いという立ち位置の可能性もあります。
しかしレスラーがリング上のことにより専念できる体制を作ることができれば、試合内容もより向上するでしょうし、動員の向上も見込めるかもしれません。ただしレスラーが試合に専念できるようになれば、団体不沈の責任はよりレスラー側にシフトします。「大手企業が親会社がついたから安心」ではなく大事なのはこれからいかにして良い試合をやっていくか、という部分でしょう。


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