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フライブルク留学記、その6

こんにちは!もくひとです。
遅ればせながら、あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

前回のあらすじ

なんだかよく分からないままOKOK~などと言っていたら、サキソフォン4重奏+打楽器6重奏のための大作でマリンバパートを担当することになったのであった。

In Erwartung

そんなわけで、ぼくがコンサートで演奏に参加する曲がGubaidulina作曲のIn Erwartungだということが判明しました。
この曲はサキソフォン4名と打楽器6名のアンサンブルで、室内楽としてはかなり編成の大きな曲です。ステージ上はもちろん客席へ移動して演奏するなどホールの空間を最大限に利用した美しい響きの作品です。

打楽器はフライブルク音楽大学打楽器クラスよりAri, Víctor, Steven, Franz, Timothée, Takashiの6名が演奏。
サキソフォンはゲストとして世界的にも有名なRaschèr Saxophone Quartet をお招きして共演するという、実に贅沢な体験でした。

そしてこの曲、人数だけでなく楽器の量も信じられないほど多いのです…正確には覚えていないのですが、確かトムトムが16台、ボンゴが6台、ウッドブロックは12個くらいだったかな?さらにマリンバ2台、ヴィブラフォン2台、ティンパニ4台、チューブラーベル他諸々多数…コントラバス用の弓も6~8本くらい使ったと思います。楽器を揃えるだけでひと苦労、学生ならではの大掛かりなプロジェクトでした。

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(上の画像はマリンバではなく、ウッドブロックを鍵盤状に並べた楽器です!倉庫で見つけたときはめちゃくちゃ驚きました)

打楽器アンサンブルの演奏を聴いたことがある方はなんとなく想像できるかもしれませんが…大量の打楽器を使用する場合、楽器をホールに運び込むだけで結構な労働を強いられます。ちょっとした引っ越しです…!
ましてや個人で練習するときに、毎日楽器を並べて練習して片付けて…などとやっていたら日が暮れてしまいます。
したがって、演奏会が近づくにつれて、各練習室は大量の太鼓類で埋め尽くされることになります。
それだけならまだしも、みんな超絶自分勝手なので…他人が準備したセットアップから「後で返すから〜」などと言って楽器を持って行ってしまうのです(なお返さない)。
僕は幸いにも使用楽器が比較的少なかったので、みんながあれが無いこれが無いと大騒ぎしているのをなだめたりすかしたり、探しものを手伝ったりしていました。

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手伝うということ

少し話が脱線しますが、この「手伝う」という行為を通して気づいたことがあります。

前述のような、大量に楽器を運ぶシチュエーションがあったとして…日本人の感覚だと、誰かが困っていそうに見えたときは率先して手伝うことが普通だと思います。
しかし「手伝うよ〜」と言って一緒に楽器を運ぼうとすると、「ありがとう、でも今は人手が足りているから君は手伝わなくて良いよ」と断られることが度々。
また自分が楽器を運んでいるときも、なんとなくその辺にいる人達が雰囲気を読んで手伝ってくれるかな〜なんて期待していると、まったく誰も手伝ってくれません。
そのかわり、「ちょっと時間があったら手伝ってくれない?」とお願いすると、みんな喜んで手伝ってくれます。

そのようなことを何度か繰り返すうちに、「はっきり意思表示をしてはじめて、自分の欲求が他者に理解される」「意思表示が無い場合、そこに他者への要求はないと判断される」ということに(ごく当たり前のことですが…)気づきました。

日本のように「空気を読んで」行動するということは皆無。そういう話は人から聞いて、頭ではわかっていたつもりでしたが…やはり実際に感覚として理解するのには時間がかかりました。
ひとりひとりが自立しており、独立した人間として尊重されているということなのだと思います。
日本では集団の和を尊重することが重要視されていると言われますが、外に出てはじめてそのことを自覚できたと感じました。
どちらが良いとかいうことではなく…"ヨーロッパと日本ではフィーリングに違いがあるんだ"ということに気づけたのが本当にラッキーだったと感じています。

正確に文章で表現するのが難しいですが、ぼくにとっては衝撃的な体験のひとつでした。

さて曲の方に話を戻します。

最初に書いたように、この曲はステージだけでなく客席まで使用して空間を広く利用した作品です。
客席最後部にスタンバイしたサキソフォンの4名が、かすかな音で問いかけるように曲がはじまります。ステージに向かって歩きながら、少しずつ打楽器も加わり楽器同士の対話が始まります。大量の太鼓類がメロディックかつ美しいパッセージで絡み合い、激しいうねりとともに曲が進んでいきます。

音楽は盛り上がったり落ち着いたりと寄せては返す波のように進行していきます。終盤に向けてだんだんと響きが鎮まっていく中、マリンバを担当していたぼくとTimothéeはそっとステージから降り、客席後方まで歩いて移動します…。隠してあったシンバルを弓で何度かこすって奇妙な響きを残したまま、曲は終了。
現代音楽と呼ばれる、比較的難解な楽曲ではありましたが、お客様にも大変好評をいただきました。

ぼくが参加したのはこの1曲だけでしたが、コンサートは他にも演奏する曲がたくさんあって右へ左へ大忙し。バタバタしながらも、大盛況にて終了しました。

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今日はここまで。
Auf Wiedersehen!!

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