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バングラデシュの繊維工業、今と昔

今日のニュースは、ロイター通信社より、バングラデシュの繊維工業をめぐる問題について。

タイトルに「気候変動が脅威」とあるため、綿花の生産(原材料確保)の問題かと思いきや、どうやらそうではないようです。
読み進めると、なるほど、こういう視点があるのか…と思う部分がある興味深い記事です。

かつて、アジア地域における「世界の工場」と呼ばれた国と言えば中国を思い浮かべます。
これは、家電などの機械工業のみならず、繊維などの軽工業も同じで、特に日本においては円高と長引くデフレ(平成大不況)の中、コストカットの必要性からも海外に工場を移転する動きが強くなっていました。
これが1980年代後半から問題視された「産業の空洞化」です。

ちなみに工場を海外に移転するだけではなく、海外との競争の結果工場を閉鎖するケースもあります。
例えば広島県呉市では、最盛期は工業製品出荷額の3割を占めた日本製鉄の呉製鉄所が全面閉鎖された話(企業城下町の消滅)などもあります。

近年は中国の賃金も上昇したため、特にファストファッションなど安価な繊維製品は生産拠点を東南アジアや南アジアに移転する傾向があります。
その1つがバングラデシュで、近年は日本向け繊維製品を盛んに生産しています。

一方で、その労働環境が問題視されることが多く、2013年には繊維工場だったビルが崩壊し、多数の死傷者を出したことも。

これにより、いわゆるファストファッション業界が、途上国の劣悪で安価な労働環境で人々を搾取し、利益を上げていると批判されることとなりました。

さて、そんな過去を持つバングラデシュの繊維工業ですが、このニュースを見る限り、労働環境はあの頃に比べたら多くの工場でかなり改善されたようです。
記事中のDBL社の運営する工場では、植樹や太陽光の利用、発電機の熱の再利用など、「持続可能」をテーマに労働環境の改善に取り組んでいます。

また、最大の輸出先であるEUも、気候変動対策でサプライチェーン(流通供給網)全体に対する温室効果ガス削減や労働環境改善に取り組んでいます。しかし、その努力を上回るペースで気候変動が進行、熱波の襲来や洪水の発生リスクの上昇で、生産性の低下が懸念されています。

また、気候変動対策としてのサプライチェーンの合理化が失業を生み出す可能性も指摘されており、この問題は一筋縄ではいかないというのが難しい所です。

いずれにせよ、ここ10年でバングラデシュの繊維工業を取り巻く環境は大きく変化したことは記事中から伺えます。
2013年の事故イメージをお持ちなら、是非ご一読を。例え全てがそうではないとしても、時の流れを感じられる記事です。

今回はこれくらいで。



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