ブロック塀

防災士が考える災害対策③ 今すぐやるべき+α(構造物・家具編)

前回の記事では、備蓄について書かせていただきました。

引き続いて今回は、

家の内外でとるべき対策+α

について書いていきます。

次回更新では、
備蓄すると役立つもの+α
を書く予定です。

今回は、
・ブロック塀
・建物(一般家屋)
・屋内(家具など)

についてそれぞれ書いていきたいと思います。


一つ、前回の記事で追記した部分をこちらでも書かせていただきます。
(すみません、大切なものが抜けていました)
基本的な備蓄の中で、加えておくべきだが、かさばるので扱いづらいものとしてヘルメットがあります。
しかし、これは、その最大の弱点を克服した画期的なヘルメットです。


私も真っ先に購入したおすすめアイテムです。
自宅・職場などに備えておきましょう。

もし、その場でヘルメットが取り出せなければ、座布団やカバンで代用できます。
この場合、頭にピッタリつけずに「少し離して上に」が基本です。
(頭との間にスペースを作って落下物の衝撃を和らげる)

特別な備えは大事ですが、いざというときに「身の回りの品をどう使うか」を考えておくことも大切です。

特別なもの(防災用品)に頼るだけではなく、普段から使っている品物を少し多めにストックし、身の回りの品をどう応用するか学んでおく、という考え方が災害対策には必要だと思います。


このコラムでは、引き続き、「特別な対策」ではなく、できるだけ「日常の延長として、生活との折り合いをつけた災害対策」をコンセプトに書いていきたいと思っています。



では、今回の本題に入ります。

家の内外で取るべき対策+α


災害対策で真っ先に学ぶこと、それは

「構造物が人を殺す」

という言葉です。

これに基づいて対策を取っていくことが必要なのですが、生活に支障が出るような極端な対策は長続きしません。
食糧備蓄も、特別な防災食の用意よりも、日常で食べるもので保存がきくもののストックを優先するようお勧めするのはそういった理由からです。

できるだけ、生活との折り合いをつけながらの対策を取るようにしていきましょう。


・ブロック塀について

今回の地震でも、ブロック塀の倒壊で多くの死傷者が出ました。
実は、阪神淡路大震災や東日本大震災でも、ブロック塀の倒壊による死傷者が出たり、道路がふさがって消火活動や救助活動に支障が出るなど、多くの影響が出ました。
このように、ブロック塀の危険性については以前から指摘されているにも関らず、多くが私有地の私的な構造物であることから対策が後手に回っているのが現状です。

下の写真のブロック塀は明らかに危険です。

私は、ブロック塀の安全対策は「やるべき+α」と考えます。

ちなみに、1981年に改正された建築基準法では、ブロック塀は

・高さ2.2メートル以下
・壁の厚さは15センチ以上
・壁の内側には直径9ミリ以上の鉄筋を縦横80センチ以下の間隔で入れる
・長さ3.4メートル以下ごとに控え壁(直角方向の支え)を設置

と定められています。
(崩壊した大阪の小学校のブロック塀は、1981年以降に作られたとすれば違法建築です)

1981年より前に作られたブロック塀については基準がゆるいため、危険度が高いと考えられます。
つまり、古い街区のブロック塀は危険度が高いということですね。
(見た目がきれいでも、塗り直しているだけというケースもあります)


ブロック塀の安全対策の方法としては以下のようなものがあります。

・補強工事をする
別に基礎を打ち、アンカーで既存の壁を引っ張る工法、控え壁を増やす方法などがあります。
工事費がかかりますが、自治体によっては補助金制度があります。



・塀の高さを下げる
日本では道路幅員が4m以上です。
古い町並みほど道路は狭く、4mギリギリというところも少なくありません(今は、前面道路の幅員4m未満だと建築許可が下りません)。
歩道がない道路であれば、2mを超える壁が両側にあり、根元から倒壊したら逃げ場がありません。
また、歩道がある道路でも、幅員は一般的に2mですので、2mを超える壁があれば車道に逃げなくてはならず、それも危険を伴います。

歩道のない道路であれば、道路幅員の3割未満(4mなら1.2m未満)に抑えれば、根元から倒れても道路の真ん中に逃げれば何とか安全が確保できます。
歩道幅員が2mでも、高さが1.2mなら何とか崩れるブロックを避けられる可能性があります。

塀の高さを1.2m未満に抑え、その上はアルミやフェイクバンブーのフェンスにするだけでもかなり道路の安全性は高くなります。
これについても、工事に対して補助金を出している自治体があるようです。

なお、一般的な消防車の車幅が2.3mですので、1.2mであれば崩壊しても消防車が進入できる道路幅員は確保できる可能性が高まります。


上のお話は計算上のことで、実際にはそれより狭い道路もあります。

何より「頭から上からブロックが落ちてくる」という状況を極力なくすことが何より大切です。
それも、2.2mではなく1.2m未満の理由でもあります。

1.2mは、およそ小学校1年生の平均身長です。

ただ、1.2mですと敷地に視線が通ってしまうので嫌、という方も多いのは承知しています…なかなか難しいです。

それでも、私は子どもたちの安全のために「ブロック塀は1.2m未満」と声を大にして言いたいと思います。


そう考えると、生け垣は倒壊の危険もなく、敷地内も見えず、防火性もあって優れものだな…と思うのですが…。
思い切ってブロック塀を撤去して、生け垣にするなんていかがでしょうか?
仙台市などでは、積極的に生け垣化の取り組みをしているようです。


なお、ちょっと変わり種として
・補強用の塗料を塗布する
というのもあります。これです。
もちろん、基礎をしっかりしておかないとかえって「ブロック塀が丸ごと倒壊する」という危険性もあります。
その場合は逆に危険ですので、単に塗布すればいいわけでもありません。
補強するか、高さを下げてから施工するのが有効でしょう。
そう考えると、この塗料はブロック塀の補強というより、建物の耐震補強に良いかもしれません。


・建物について

建物自体の補強も大切な+αです。

建築基準法は、1981年と2000年にそれぞれ改正され、耐震基準が強化されています。
ですので、1981年より前に建てられた構造物については、特に耐震診断と耐震補強が必要であると考えられます。
(違法な構造物であれば話になりませんが…)

耐震補強工事としては、筋交いを入れる、耐力壁を増やすなどの方法がありますが、これは専門の工務店さんにお任せしたほうが無難でしょう。

ただ、中には人の不安につけこむ悪質な業者もいるようですので、信頼できる工務店さんに依頼することをお勧めします。
極端に不安やお得感をあおる、契約を急がせる業者は何か裏があると考えても良いと思います。
どのように施工するかしっかり相談し、複数業者から相見積もりを取ることも心がけましょう。
個人的には、見積もりの際にあまりに多くの項目をまとめて「一式」として出す業者はあまり信頼していません(「材料一式」など)。
何がどれくらい必要かを明示してもらうことをお勧めします。
きちんとした工務店さんは、明細をつけてくれます。

耐震診断や耐震補強も、自治体から補助が出るケースがあります。


・屋内の対策について

屋内での死傷者で多いのは、棚が倒れてその下敷きになる、飛んできた家電製品が当たる(!)というケースです。
一般的な対策は

・突っ張り棒や固定器具で固定
・L字金具で壁や柱に固定

突っ張り棒、確かに有効なのですが、ここ最近の防災グッズの売れ行きを考えると、売り切れていたり…ということもあり得ます。

また、借家ではL字金具で固定というのは現実的に難しいでしょう。

地震の際、棚が倒れないようにするには、固定する以外に

・重心を後ろにずらす
・重心をできるだけ下げる

ことも有効です。

簡単な方法としては、

「棚を少し前に出して、後ろに傾け、前に楔になるものをかませる」

「上の方には重いものを置かない」

だけでもずいぶん違います。
(楔は、見た目にこだわらなければ新聞紙を棒状に丸めたものや雑誌で十分)
今すぐにでもできる簡単な対策ですが、手軽さの割に効果があります。
図は誇張して書いてありますので、実際には少しで大丈夫です。
重量物が入っているもの(本棚など)は、気持ち強めに傾けるとさらに有効です。

震度が強ければ倒れる危険性はありますが、コストや手間をかけずにできる対策のひとつです。
なお、後ろに傾ける方法は突っ張り棒とは併用できませんので注意が必要です。

ちなみに、背の高い棚を寝室に置かないようにすることも大切です。
寝ている時は無防備ですので、そこに重量物が倒れこんできたらひとたまりもありません。

食器棚などは、扉にストッパーをつけて、地震の衝撃で開かないようにすることも有効です。


ちなみに、家具は上手く使えば天井や梁の落下から体を守ってくれます。
一つ、簡単にできて有効な対策は、

「寝室に丈夫な椅子を置いておく」

です。

地震の対策で大切なことは「倒れないこと」だけではありません。
さらに重要なことは「いかに生存空間を確保するか」です。
震度6強や7の地震では、補強してあっても倒れる可能性があるため、究極的には「倒れた場合」を想定する必要があります。

家具が倒れなくても、天井が崩壊して死傷するケースもあります。
その際に、丈夫な背の低い丈夫な家具(例えば椅子)は、生存空間を確保して生存率を上げる役割があります。
机(テーブル)は大きく重いので、地震で移動して怪我をすることがあります。椅子がおすすめです。


というわけで今回は、すぐできる対策として

・棚を後ろに傾ける
・寝室に丈夫な椅子を置く

を紹介いたしました。

また、ブロック塀や建物の対策の大切さについても書かせていただきました。

対策のお役に立てば幸いです。


先述しましたが、このコラムでは

「日常生活と折り合いをつけた、長続きする災害対策」をコンセプトに書いていきたいと思っております。


ここまでお読みいただきありがとうございました!


なお、前回も抜けているものがあったりして、大変申し訳ありませんでした。
(後で気が付きました。面目ないです…)

次回の記事では、
備蓄すると役立つもの+α
に触れます。

災害対策に、これがあれば便利…というものを、ある程度優先順位をつけて書いていきます。


過去の記事はこちらです。

地球の今 私たちの知っておくべきこと

災害に対する心構え

災害対策① 家族会議をしよう

災害対策② 何を備蓄するか

Twitterでの問い合わせはいつでも受け付けております。
フォローもお気軽にしていただければ幸いです。



サポートは、資料収集や取材など、より良い記事を書くために大切に使わせていただきます。 また、スキやフォロー、コメントという形の応援もとても嬉しく、励みになります。ありがとうございます。