【読書感想】ポジティブサイコロジー 不登校・ひきこもり支援の新しいカタチ 松隈信一郎
おすすめ度:★★★★★
感想
私視点での偏った感想にはなりますが、個人的に、めちゃくちゃタメになったし、読みやすいしで、超おすすめしたい!!という本でした。
タイトルに「不登校・ひきこもりの若者」とあるので、今、不登校・引きこもりで悩んでいる方・親御さんはもちろん読んでみてほしいんですが、不登校・ひきこもりの子の関係者だけでとどめるにはもったいない!!
子育てしている人、部下育成している人、コーチ業の人、自分自身の内省や気付きを促すのにも適してる本だと思います。私も読みながら、「自分はどうだろうか?」と考える時間が何度もありました。
著者の松隈さんは、ポジティブサイコロジーとストレングス(強み)研究のスペシャリストで、大学や医学会での活躍に加え、Gallup社のシニアコンサルタントも兼任しています。
私が数年前、Gallup認定ストレングスコーチ講習会に参加したときも、講師としてさまざまな知見を与えてくださいました。
松隈さんの人柄がにじみ出る文章で(っつっても人柄を語れるほど多くを知らないのですがww)、やさしく、わかりやすいので、するするっと読むことができます。
「VIA」と「クリフトンストレングス」
個人の強みに着目した診断で代表的なのが「VIA」と「クリフトンストレングス」です。それぞれの特徴は以下の通り。
VIA
クリフトンストレングス(ストレングスファインダー)
私もストレングスコーチの一人なので、クリフトンストレングスについては知っていましたが、VIAについてはそこまで詳しく知らなかったので、この本で違いを明確に理解できました。
VIAの「時代や文化を越えて美徳と賞賛されているもの」っていうのがなんだかすごいいいなぁと思いました。これら「強み」は、言ってみれば人の良心性を表しているものなワケですが、時代が違っても文化が違っても共通している、っていうのが、なんというか人間の根っこの部分に触れてる気がして、すごくグッときました。
ちなみにクリフトンストレングスの診断は有料ですが、VIAの診断は無料だったので、この機会に私も診断してみましたよ。
私の徳性の強み
1.愛情
2.ユーモア
3. 公平さ
4.寛容さ
5.誠実さ
(おまけ 私のクリフトンストレングスの資質Top5)
1.ポジティブ
2.社交性
3.コミュニケーション
4.適応性
5.学習欲
VIAは学生も受けられるし無料なので子どもたちにやってもらいたいなと思いました。
興味深かったのは、多くの不登校・引きこもりの人たちは、家にいるときにゲームやネットをやってることが多いんですが、徳性の強みはリアル・バーチャル問わず発揮されるので、バーチャルの世界で夢中にやってることのなかに強みがでていることがとても多いそうです。
現実では引きこもりだけど、オンラインゲーム内では、チームワークを発揮してメンバーをまとめみんなが楽しくゲームできるよう環境を整えている、なんて人がいる場合、その人は「チームワーク」とか「リーダーシップ」という徳性の強みをもっていたりします。そういうふうにバーチャルのなかで上手に強みを使えていることも多いので、そこから「自分にはちゃんと強みがあるんだ」と腹落ちしてもらうことがひとつのきっかけになるとのことでした。
たしかに子どもによって、好むゲームや面白いと感じるポイントは違います。たとえばうちの長男はゲームだとスマブラやフォートナイトなど対戦系・FPSが好きで、RPGもストーリーの流れにこだわって進めている一方、次男はマリオメーカーやマイクラなどクリエイティブ系ゲームをずっとやっていて、PRGだと最速クリアしたうえでバグを調べて細かい挙動を試したりと、全然違う楽しみ方をしています。ゲームの遊び方ひとつでも徳性の強みを垣間見ることができるのがとても面白いなと思いました。
子どもらにも「このゲームのどういうところを面白いと感じている?」って聞いちゃいましたしね。
「強み」をコントロールする
「強み」というと、いつでもどこでも常に良いカタチで現れるように感じてしまいますが、いつも良いカタチででるとは限りません。クリフトンストレングスの診断ででてくる資質は言ってみれば「クセ」なので、その「クセ」が悪くでて、逆にコミュニケーションの齟齬につながる場合も多くあります。ワークショップや個人セッションのなかでは、「これらの資質は『クセ』なので、常によく出せるように状況に応じてボリュームコントロールできるようにするのが大事」と伝えているんですが、VIAでもやはり同じなようで、自分の徳性の強みを認識して、意識してボリューム調整していくことが大事だと書かれていました。
結局のところ、自分をいかに客観視できるかなのだと思います。
クリフトンストレングスも、VIAも、それ以外のたとえばMBTIやエニアグラムなども同じで、診断した結果をみて終わるのではなく、それらの診断にでてくるキーワード(徳性の強みとか資質とか)を真に自分のなかに取り込んで、自分の言動が今、どういう背景(強み)で発せられたものなのかを客観視して振り返ることができるようになることが大事なのかなと。
自分だけで「自分を客観視しろ」といわれても難しいものがあるんですが、こういうキーワード(「徳性の強み24種」とか「資質34種」とか)があると、自分の言動がどこからきたものなのか、どう調整できそうなのかを言語化しやすくなるし、言語化できると、そこから試せるアクションも考えやすくなります。
それがこれら診断のもつパワーなのかなと。
本の最後で、不登校・引きこもりの人たちが、自分の強みを知ることによって前に進むことができた、というストーリーがいくつか紹介されていたんですが、どのストーリーも本当に感動的です。不登校・引きこもりのご家族をもつ方たちにとっては大きな希望を感じられるストーリーでした。
松隈さんがやってきた活動がもっと広がっていってほしいと切に思うし、自分も自分にできる活動していかないとな、と思いました。
ワタクシ的名文
不登校・引きこもりのお子さんとの関わり方についての内容なんですが、このなかの”評価を先に延ばして「曖昧なもの」と同居する”というのがすごく大事だなと私も思います。
私自身、仕事や日常生活ではけっこうこの「すぐに評価・ジャッジしない」というのはこだわっているところでもあります。評価するよりもニュートラルにその人のあるがままを知ろうとしているつもりだし、相手の視点でとらえようとしているつもり(限界があるのでできてないときもあるけど)。
ただ、特に子育ての場面では、短いスパンで「よい」「悪い」の判断をしてしまうことがあって、夫に相談して、長期的な視点でとらえなおしたってことが何度もありました。
「曖昧さと同居する」は難しいけどそれがリアル。
なんか、SNSでの炎上やらリアルでのトラブルやらって、白黒つけたり評価したがりな脳の志向がそのまま表出されちゃって生まれてるものだなぁとも思ってたりもするので、この「曖昧さと同居する」というのと、それが私たちの「成熟さ」に関わるっていうところにグッときました。
もっとどーんと構えて成熟した人間にバージョンアップしていきたい。
がんばろう。