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【読書感想】「南方熊楠 日本人の可能性の極限」唐澤太輔

読了日:2016/11/25

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百科事典を丸ごと暗記、二十以上の言語を解した、キューバ独立戦争参戦といった虚実さまざまな伝説に彩られ、民俗学、生物学などに幅広く業績を残した南方熊楠。「てんぎゃん(天狗さん)」とあだ名された少年時代、大英博物館に通いつめた海外放浪期。神社合祀反対運動にかかわり、在野の粘菌研究者として昭和天皇に進講した晩年まで。「日本人の可能性の極限」を歩んだ生涯をたどり、その思想を解き明かす。
「BOOK」データベースより

会社の部長から「南方熊楠は面白い!」と教えてもらい、概要を聞いたら確かにかなり面白そうな人だったので購入。

この本の概要

作者を確認したら、1978年生まれ(・Д・)
まさかの同い年。
こういう本を書く人って、自分よりご年配の方々と勝手に思っていたので、同年代かーーと思うとなんだかビミョーな気持ち。
私、もうそういう歳なのね…。

さてさて、話を戻して「南方熊楠」です。
熊楠、めちゃくちゃ面白いです!
この本の作者は、熊楠のことを「極端人」と表現してます。
また、熊楠と一時期、親交があった柳田国男は、彼のことを「日本人の可能性の極限」と表現しておました。
この人をトータルで表そうとすると、そんな表現になるんですね。
とにかくすごい人、みたいな。

南方熊楠の破天荒エピソード

学術的にも超すごいんですけど、私が惹かれたのは、その破天荒っぷり。
人間的にハジけてて、エピソードが笑えます。

いくつか、振り切ったエピソードを抜粋。

さらには 、夢についても同様のことが言えるのである 。熊楠は 、睡眠中の夢の世界と覚醒時の現実の世界との区別がつかず 、夢見心地のまま 、家族に何か言う (怒鳴る )ことがしばしばあった 。また嫌な夢のせいで 、終日怒りが収まらないこともよくあった 。さらに恐ろしいことに 、熊楠は夢見心地のまま友人を刀で斬りつけようとしたこともあった 

怖いわ!_:(´ཀ`」 ∠):
基本、精神は不安定傾向だったそうです。
狂人にならないよういろんな研究に没頭したけど、没頭しすぎちゃって、今度は、精神と現実の区別が曖昧になっちゃうみたいな…。

ところで 、熊楠が 「てんぎゃん 」以外に 、後の和歌山中学校時代に付けられたあだ名がもう一つある 。それは 「反芻 」である 。熊楠には 、食べたものをいつでも自由に吐き出せるという 「奇癖 」 (武器 ? )があった 。

ついたあだ名「反芻」てwwww
しかもその理由wwww
実際、ムカついた時に反吐を吐くということをたびたびやっていたそうです。

和歌山県主催の夏季講習会に参加していた 、神社合祀推進派の県吏に直接会うために 、熊楠は会場へ乱入 、大声を出して 、持参していた菌類標本入りの信玄袋を投げつけるなどの暴行におよんだのである 。このとき熊楠は 、酒を飲み酔っ払っていた 。しかし捕まっても 、ただでは終わらないのが熊楠という人間である 。彼は入牢中 、獄内でステモニチス ・フスカという粘菌の原形体を発見している 。

酒の失敗、数え切れず(笑)
この他にも、
アメリカの大学行ったけど喧嘩して辞めちゃったり(しかも2回も!)、
辞めてそのまま戦争中のキューバ行っちゃったり、
イギリス行ったら大英博物館で喧嘩して出禁になったり。
激しすぎます。

粘菌

振り切った感じが面白いというのももちろんなんですが、熊楠は学者としても超すごい人でして、とりわけ粘菌については世界レベルで認められるほどすごい人でした。

粘菌といえば、風の谷のナウシカ(漫画版)。
映画版ナウシカでは王蟲や巨神兵だけですが、漫画版にはすごい勢いで増殖する粘菌がでてきます。
私は、この漫画で粘菌の存在を知り、同時にかなりの衝撃を受けました。

ナウシカの世界観は、熊楠の世界観とかぶるところが多々あります。
宮崎駿だけじゃなく、庵野秀明も思想的に南方熊楠の影響受けてるのでは?!っていう箇所がチラホラ。
ナウシカ大好き、エヴァンゲリオン大好きな私としては、読んでてすごく興奮しました。

熊楠、思考と視野の幅が変幻自在で、それがすごいな、と思いました。
粘菌の世界という超小さい世界を見ながら世界の根源的な部分を考えたり、ある出来事があったときに、その出来事の渦中にいても、高い視点から俯瞰して出来事を捉えられる感覚があって、それが本当にすごい。

クドカンあたりに脚本書いてもらってNHKでドラマ作って欲しい。
南方熊楠の時代が確かにこれから来そうな気がしました
時代はまだ熊楠に追いついていない。

ワタクシ的名文

世界各国にとって最も重要なことは 、その国々の独自性 (特色 )を伸ばし 、それらを認め合いつつ競合 (あるいは協合 )することなのである 。決して各国の特色 (長所 )を踏みつぶしてはならないのである 。

深く共感。
個人レベルでも国家レベルでも、価値観押しつけるのは本当に勘弁してほしい。
最近、正義・正論な体で、考え方押しつけすぎ。
人も国も、尊敬と感謝と信頼で繋がることはできないものなのかしら。。

老いなり病なり (苦 )によって 、人間が死ぬという事柄は 、つまり 「人心 」が身体 (物体 )という目に見える 「物 」とともになくなるということでもある 。しかし 、その心は集積し (集 ) 、その基たる 「精神 」 (熊楠は 、それを 「神あるいは鬼などと言い換えてもよい 」という )となり 、さらに 「心 」の集積である 「精神 」は 、それらを消して 「霊魂 」へ移行することが可能である (滅 ) 。この 「霊魂 」は 、再び 「精神 」となることもあるし 、解脱への 「道 」を通り 、 「大日 」という根源へ復することもあるのだ (道 ) 。

熊楠が考えてた、南方的生命の樹。
これを読んだときに私はビビビッときましたよ。
「あ、エヴァじゃん?!」と。
エヴァを見ていた私には理解できました。
人類補完計画でみんな生命のスープになって、綾波に帰る的なヤツですわ、多分。(←もうただただオタクの独り言www)

熊楠、オススメ!

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