みり華を追いかけて

 華ちゃんが、ゆきちゃんの後を継ぐ。その発表がされた時、私はまだ華ちゃんの魅力を掴み損ねていて、明日海さんと華ちゃんがどんなコンビになるのか想像ができませんでした。けれど、恋するアリーナ、青い薔薇の精、シャルムと、二人の歩みを追いかけた今は、華ちゃんの魅力にどっぷりつかっています。兄と妹のような、かけがえのない分身のような、明日海さんと華ちゃんにしか出せない特別な関係。心の芯が共鳴し、お互いを包み込む。華ちゃんが明日海さんの新たな魅力を引き出し、明日海さんが華ちゃんを覚醒させていく。そんな二人の歩みは短かったけれど、ぎゅっと研ぎ澄まされていて、リアルタイムで追いかけられた私はとても幸せだったと思います。

 ゆきちゃんの退団が発表された時、大好きな花組の体制が変わってしまうことに対して、私は一抹の不安を感じました。ちなつさんと舞空瞳ちゃんの組替えも発表され、円熟期の花組が解体されてしまうような複雑な気持ちも抱きました。明日海さんとともに、月組のスパイスを花組に添えてくれたちなつさん。お母さんのように花組を引っ張ってくれたゆきちゃん。ビューティフルガーデンで可憐なダンスを魅せてくれた舞空瞳ちゃん。ポーの一族から花組にはまった私にとって、当時の花組の体制はかけがえのないものでしたし、そのメンバーで明日海さんを送り出してほしかったとも思ってました。

 花組はどうなっていくんだろう、そんな不安を感じつつ望んだ「CASANOVA」でしたが、気づいたらオペラグラスでつい華ちゃんを追ってしまう自分がいました。ひらひらと、しとやかに、飛龍つかさ君演じるバルサモの後をついていくセラフィーヌ。二人のラブラブ具合は微笑ましかったし、純粋な笑顔で毒薬を差し出すセラフィーヌに狂気も感じました。華ちゃんはきっと大丈夫、彼女のことをこれからも応援していきたい。そんなふうに思った公演でもありました。

 そして、「恋するアリーナ」は、花組の新体制に対する私の不安を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれました。明日海さんの脇を固めるあきらさんとマイティーは頼もしくて、とてつもなくかっこよくて。Valentiのシーンは鼻血が出そうなほど萌えました。また、華ちゃんが明日海さんの隣に立つと、明日海さんの抱擁力が増して、大きく見えたのも嬉しい発見でした。ほんわかした、正統派のプリンスとプリンセス。眼福でした。各場面ごとに雰囲気の異なるビジュアルを仕上げてきた華ちゃんに、ゆきちゃんの面影も感じて、ちょっと涙も滲みました。華ちゃんと明日海さんののぴたっとはまった相性のよさに喜びを感じて、ほくほくとしながら私は帰路についたのでした。これは、お芝居も楽しみだぞと。

 明日海さんの退団公演である「A Fairly Tale-青い薔薇の精」と「シャルム」は、私にとって最高に特別な作品になりました。勢い余って長い文章をしたためてしまうほどに。明日海さんが、華ちゃんと花組の皆さんで作り上げたこの公演は、決して蛇足や駄作なんかではなく、「魂の継承」という言葉がぴったりの作品でした。「A Fairly Tale-青い薔薇の精」は、明日海さんがエリュで、華ちゃんがシャーロットだったからこそ、成立しえた作品だったと思います。この作品のヒロインは、まぎれもなく華ちゃんです。明日海さんが、華ちゃんのお芝居を信頼し、身を委ねられたから、華ちゃんが明日海さんのお芝居を受け止め、シャーロットとしてエリュを救ったから、この作品は私の琴線に深くささりました。明日海さんのお芝居を継承して、これからの花組につないでいくのは華ちゃんだと私は確信しています。シャーロットの負の部分、周りを理解しない頑固なところ、壊れていく心をあの狂った笑い声で若干の愚かさを滲ませながら表現した華ちゃん。シャーロットの性格を美化しすぎない。それは脚本を越えた華ちゃんの感性だったと思います。おばあちゃんになったシャーロットが「ここに夢がないと…。」と胸を叩いたその力強さに私は、救われたのです。

 明日海さんを喰い入るように見つめるれいちゃんから感じられた覚悟。その覚悟を画面越しに感じたとき、ショーの世界観とトップの引き継ぎという現実が重なりあい、私なりに腑のおちる「シャルム!」の解釈ができました。死の地底世界で繰り広げられるシャルムの継承。シャルムがフルフルの魂を救う。フルフルが半身のようにシャルムに寄り添い、彼の志を人々に届け、その志を次代のシャルム(れいちゃん)につないでいく。明日海さんシャルムは、死の世界のさらに向こうに行ってしまうけれど、その世界は白い光に溢れている。明日海さんを真ん中に、華ちゃんとれいちゃんと3人で手をつないだその並びに、私は胸がいっぱいになりました。彼の志は、全ての地底世界の住人に受け継がれていくのです。

 「青い薔薇の精」と「シャルム」を通して、明日海さんが開花させた華ちゃんの魅力。永遠の少女性と母性を体現する稀な個性。しとやかでありながら、全てを包み込んでくれる芯の強さ。れいちゃんがその魅力をさらに引き出してくれると思っていますし、華ちゃん自身の努力が、また新しい一面を魅せてくれると信じています。二人のこれからに期待しかありません。れい華コンビを筆頭に、花組の皆さんが作り上げる新しい風が、本当に楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?