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『ルポ・収容所列島』を読んで

本を読み、ただただ衝撃を受けた。

読んでいたのは『ルポ・収容所列島』

日本の精神科病院の異常さについて書かれている本なのだけど、とにかくすさまじくて言葉が出てこない(と言いつつこうしてnoteを書いている)。

すべての病院がこうではないことを祈りたいけれど、本に登場する内容を読むと、精神科病院の良さがまったく見えてこない。

少しでも体調が改善することを期待して入院した先が、薬漬け、身体拘束、暴力など、目を背けたくなるものであふれていて、しかも自分の意思で退院できないという怖さ。

退院するには家族の許可が必要なのに、家族と連絡を取ることは拒否されるため、現状に黙って耐えるしかない。そんな話がたくさん登場するので、本を読んで恐怖しかなかった。


この本には、騙されて精神科病院に入院させられる人が何人も登場する。DVをする夫が親権を得るために、妻が病気だと嘘をついて入院させたり、お金を貸してくれないことを恨んで、親を強制的に入院させる息子などの話があった。

精神科病院には、家族一人の同意があれば、強制的に入院させることが可能であるという事実を初めて知った。家族間の恨みによって、病気ではない家族を無理矢理にでも入院させることができるなんて、おそろしくてたまらない。

一方で、本当に病気に苦しむ家族を抱えている人もいる。息子や娘に精神疾患があり、どうにかよくなって欲しいという救いを求めて入院させる家族もいて、非常にいたたまれない思いを抱えてしまった。

入院をさせることで現状を打破したいという親の思いは、私自身も障害児を抱えているためか共感できるところが多い。うちは入院をさせているわけではないけれど、急に癇癪が出てそれが何時間もえんえんと続く娘を見ていると、どのように接してもムダだという無力感に襲われることは多々ある。

その無力感の先に、精神科病院への入院があるとは思わないけれど、年々増加傾向にあるという入院患者数をながめていると、これだけの人が救いを求めているってことなんだろうし、その救いはどうして拒否されているのだろうかと考えてしまった。本にはその辺の事情も書いてあるのだけど、私には色んな意味で理解できそうもなかった。


そういえば「発達障害に定義はない」という話が本にあった。医学的に定められているものがあるわけではないので、かかりつけた医師の判断によって、発達障害かどうかを診断されるとのこと。それが事実なのか私には医学的な知識が無いのでわからない。

ただ医師次第というのは、どの病気でも同じような気もして、だったら障害もそうなのかもしれないとは思えた。うちの娘は、医師によって障害の診断が違う。どの医師の言うことを信じるのか、親の判断にゆだねられる部分も大きく、しかし専門の知識のない親が判断するには難しいのでは??と、もう何年も思い続けている。

娘は歩けないという点で、一般的な人と大きな違いがある。けれど歩けないから君はこれだよ、という明確な判断がつくものでもないらしい。ということは、精神疾患と呼ばれるものになれば、より判断が難しくなるのではないかという気はする。骨が折れたから骨折などの、わかりやすいものは珍しいのかもしれない。


長々と感想を書いてきたけれど、結局、自分が何を言いたいのかよく分からないままだ。ただただ衝撃が強すぎて、この本を読んでいる間中、見知らぬ男たちがいきなり部屋に入ってきて、無理やり車に入れられて連れ去られたらどうしよう!!!という恐怖が頭から消えなかった(実際にそういった拉致があるらしい)。

恐怖に支配されると、ものごとがよく見えなくなる。共感しやすい人間は、読む本を選ぶときに注意が必要だと自分に言い聞かせているのだけど、こういったノンフィクションに興味津々な人間なので、つい手に取ってしまう。

恐怖を味わったものの、精神科病院の実態を知ることができて良かったと思う。知らないままでいることも、やはり恐怖なんだと知れたから。そこは学ばせてもらいました。感謝です。

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