森の中の洋館
書斎の窓から庭を見ると、
子どもたちが、スキーを楽しんでいる。
前田侯爵はどんな気持ちだったのだろう。
戦国時代から続く大名の子孫であり、
当時は列強欧米との戦争中。
かつて、仲間と日本の統一を果たした先祖は
自分のことを、どう思うのだろうか?
亡国の難局を、ゴシック調の洋館で、
ひとり、考えていた。
郊外の台地の森に立つ
旧前田侯爵邸を訪れたのは
夏が終わり、秋のが近づく頃。
スクラッチタイルの洋館。
チュートン人様式の内装。
彼らも、森の民だったのか?
かつての森も切り開かれて
ポツンと小さな森と洋館が残るばかり。
洋館の管理人が門を閉じて誰もいなくなると、
宵の幻想が始まる。
黒塗りの車が一台
車寄せにとまる。
薄暗い食堂では長いテーブルに
灯りがともる。
いつもと同じ家族の夕食が始まる。
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