見出し画像

「キャリコン」資格は役に立つのか?新米キャリコンの本音。

これまでの人生で、あなたは自分の将来を
「そうだ、キャリアコンサルタントに相談しよう」
と思ったことはありますか?
ぶっちゃけ、私は一度たりともありません。

これは、見切り発車でキャリアコンサルタントーー通称“キャリコン”という国家資格をとった私が、この資格について「本当にとる必要があったのか?」と考えた末に綴る本音である。

今後取得を考えている方や、そもそもキャリコンって何? というような方もいると思うので、取得してみての所感を記しておこうと思う。(あくまで個人の一意見です。と予防線は張っておく。)

【1】そもそも、キャリコンって?

「キャリコン」って言葉は聞いたことあるけれど、実際何? どんなもの? という方も多いと思う。私も資格取得を決めるまでは「国家資格だし、キャリアの専門家ってことは人事領域でも有利そう!」「コンサルとして独立したら副業できそう!」とか、なんとなく漠然としたイメージしか持っていなかった。(なんなら学校に通い始めてしばらくはそう思っていた。勉強を進める内にその印象は変わるのだが、それは後述する。)

よく知らない人に、この資格をひと言で伝えるなら【キャリアに関する専門家】と言えばいいだろうか。

「上司とうまくいっていない。いつも自分を否定してくる」
「自分にこの仕事が合っているか不安。転職しようか迷っている」
といった、職に関する相談や悩みを聞き、抱えた後ろ向きな気持ちを軽くす
るのが、この資格を持った者の役割である。人の相談に乗るにあたっては、当然“仕事”に関する知識が多く求められる。そのため、自身のキャリアを活かして、キャリコンをセカンドキャリアにしたいと考える30代~50代の方が取得することが多いようだ。

キャリコンのサイトを見てみると

人生100年時代、様々な働き方が求められるこの時代
国家資格を取得して一生もののスキルを!

といったアピールがされており、働き方の多様性が叫ばれている現代社会において、とても有意義な資格であるように見受けられる。

だが、この資格・・・・・・
取得にとてつもなくお金がかかる のだ。

【2】ぶっちゃけ、どのくらいお金がかかるの?

キャリコンになるには、まず受験資格を得るための養成講座(スクーリング)に通う必要がある。選ぶ学校にもよるが、まずここで30万円以上の支払いが必要になる。

養成講座は計140時間。1日8時間の労働で換算すると17.5日かかる。
社会人であれば間違いなく休日がつぶれるだろう。休日返上で学校へ通い、仕事終わりに学校の課題をこなす。学校によってはカウンセリングのロールプレイングを行う卒業試験がある場合も。私の通った学校にも卒業試験があり、空き教室や貸し会議室等にみんなで集まり、カウンセラー役と相談者役に別れてカウンセリングのロールプレイングの練習を何度もした。

必死で勉学に励み、卒業試験に合格し、受験資格を得る。
だが、ここでほっとしている場合ではない。
次は受験の申し込みを行い、受験費用を振り込むのだが…

学科試験:8,900円
実技試験:29,900円


振込手数料も入れれば、合計で4万円である。
たとえば、行政書士の受験費用は7,000円。弁護士ですら27,200円だ。正直、キャリコン並みに高い資格の受験費用を、私はほかに知らない。

だが、もう養成講座でクッソ高い受験費用をおさめている私は、ここで後に引くわけにはいかなかった。落ちたら4万が水の泡、落ちることが許されるだろうか、いや許されない。胃をギリギリと痛めながら受験日を迎えた。(……そもそも事前にもっと「取得までにどのくらいかかるか?」試算でもしておけという話だが、割と行き当たりばったりで決めてしまったことは大きな反省点である。)

どうにか合格し、ほっとしたのもつかの間。
合格した後は、国家資格としての登録費用が必要だ。
・登録免許税 9,000 円
・登録手数料 8,000円

に、振込手数料まで取られるという念入りな搾取。そして5年更新、5年ごとに講習と更新料(約10万円)がかかる。すごい。どこまでも出費から逃れられない。

今回私がこの資格をとったのは「教育訓練給付金でお金が最大7割戻ってくるよ!」というありがたい給付金があったから。上記金額の7割は戻ってきたが、結果として自己負担金は20万近くかかってしまった。

職業安定所につとめていれば相談員、人材派遣会社に勤めていれば面談員として、重宝することもあるこの資格だが、別に人の仕事の相談に乗るのは誰だってできる。「キャリアコンサルタント」という肩書きがないと人の相談に乗ってはいけない、というルールもないのだから。
つまり、この資格をとっただけでバンバン仕事が舞い込んでくるわけでもないし、自分から働き掛けない限りは何も得られない。ただ資格証を自宅に飾っておくくらいしかできないのだ。

【3】ぶっちゃけ、とったこと後悔してる?

とったことを後悔しているか? と言われたら、私は間違いなく「No」だ。
とってよかった、と思っている。
……というよりは、この資格の勉強をしてよかった、というべきだろうか。

「キャリア」と聞くと、仕事上のことだけを考えがちだが、仕事以外……その人の生き方すべてひっくるめて「キャリア」になるというのがキャリアコンサルティングの考え方だ。
たとえば、一度仕事を離れて家庭に入り、子育てをする主婦。世間では子育て期間を「ブランク」ととらえがちだが、キャリアカウンセリングでは、子育て期間も立派な「母親」としてのキャリアと考え、それを活かすための手助けをする。
仕事だけではなく、その人自身が積み重ねてきたことを大切に、そしてその人の持っている力を引き出し、有効活用するための手段を探っていく。それがキャリアカウンセリングだと、140時間の講習のなかで私は学んだ。

「仕事」に必要なのは、「仕事」の経験だけではない。
それまで重ねてきた人間関係であったり、生き方や信念であったり。
重ねてきたすべての経験や信念を含めた「キャリア」を整理する、その手法の一部を学べたことは、私にとっては意義のあることだった。

思考や経験の整理は、何も他人に限ったことではない。自分自身が今何につまずいているのか、何を大切にしてきたのか、何をストレスに感じているのか。自分自身に仮説をぶつけ、悩みを解決へと持っていくことができるようになった。

【4】どんな人に向いているか

・自分のキャリアに悩んでいる人
・分析や仮説を立てるのが好きな人
・他人の気持ちを想像しながらも、一線引いて話を聞ける人
・人材派遣や人事業務に携わっていて、業務上必要な人

あくまで個人の意見だが、上記のような人には向いていると思う。
たとえば、いつも人の相談に乗るのが好きで、ついつい感情移入して話を聞いてしまう……というような人は、正直向いていないと思う。相談者が「実は若いときに父を亡くして」と話したとたんに「それはつらかったですね……」と感情移入して泣き出すのでは、カウンセラー失格だ。もちろん笑顔で「そうなんですね」と返答したらサイコパスだが、相談者が父の死を悲しんでいるのかも分からないのに、カウンセラーが勝手に「つらかった」と決めつけてぼろぼろ泣くのは言語道断である。

正直、この資格をとってすぐに「今日から私、カウンセラーなんです!」と名乗ったところで、依頼はこない。そもそもキャリアコンサルタントに依頼して仕事の相談をしよう、という文化がまだ日本には根付いていないのだ。たとえばSNSを検索すると引っ掛かる「キャリコンになってよかった★」的なフリーランスの方はごく一部であり、資格をとったものの何も活かせず失効してしまう人の方が多い。

周囲に自分の活動の普及を行い、コツコツと積み重ねていける人なら、フリーランスとして生計を立てられるかもしれないが、それも一握りの存在。
その一握りを目指す覚悟がある、もしくは「キャリコンとったくらいで生計をたてられるとは思っていないけど、ゆくゆくは学びを深め、領域を広げて専門家になりたい」という、この資格をスタートラインと考えている人は、資格取得を目指してみるのがいいと思う。

「キャリコン」資格は役に立つのか?私の結論。

キャリコンの資格をとっても生活は変わらないが
その学びは、自分の人生を豊かにする。

それが、私がこの資格を取得して得た結論だ。

許せないと思っていた上司も、自分に合わなかった仕事も。思考を整理し、見方を変えるだけでなんだか気持ちが楽になる。その手法を学ぶのに、この金額を高いと思うか、安いと思うか。それは、その人次第だろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?