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トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ ―たまには書評

医学博士 ジェイソン・ファン
多賀谷 正子 訳
サンマーク出版

そもそもなぜ太るのか?
その考察が真剣にされることもなく医者や栄養士が見当違いなダイエットを勧めている。

前書きの段階からこのような展開で本書の執筆を始めている。なかなか衝撃的な内容なので、これは期待できる、この本を実践すれば瞬く間に痩せられる!

・・・と思った私のような人間にはなかなか耳が痛い内容だ。

つまり、そう簡単に瞬く間に痩せられるはずなどなく、最近急激に太ったという人間ならあっという間に痩せるのは当たり前だが、

※実際ちまたで○○キロ痩せたとか言ってるのはこういうものがほとんど。私もここ一・二年で太った分の10キロ(!!)くらいを取り返してるし、過去には最大18キロもの減量を行った記録もある。つまり、急に太った分を痩せるのはそれ程大変ではない。(大変だけど)

何年・何十年と太った状態を保ち続けてきた者が、痩せるということが、ほとんど不可能に近い、ということがよく実感できる本になっている。

なので、どうしても痩せたいので結論だけ知りたい、と思って本書を最後から読もうとする者がいるとしたら、それはお勧めしない。
もちろん、最新のダイエット本とも銘打っているので最後の第6部に「医師が教える『太らないカラダ』の作り方」というのが載っているが、おそらくそれを読むとがっかりする。

何故なら、結論を一言でいうと「ファスティング(断食)をしなさい」ということに尽きるからだ。

最近は「ファスティング」が体に良いということが盛んに言われてきていて「ファスティング」に関する本もたくさん出ている。私も何冊かは読んだ。しかし、実際に「ファスティング」を実践しようとするとなかなかやりたくないもので、まあ毎日14時間とか16時間くらいのファスティングならたいしたことないが、24時間以上となると難しい。

本書では最終的に一日おきに24時間とか36時間のファスティングを勧めている。

つまり、本書の結論はなかなか耳が痛い話だが、その結論に至るまでの様々な研究論文や実験結果の紹介などは興味深い。

446ページもある本書だが、その実験内容などを全て細かく書くことは難しく、実験内容は要約を紹介しているにすぎないが、それでも大量のデータが引用されている。なので、本書で読むべきところは結論ではなく、その途中にある。
これまで人類が行ってきたダイエットへの様々なアプローチと、その結果を見るにつけ、なるほどと自分自身の持っている様々な疑問への答えを見つけることが出来るのだ。

せっかくなので、その中からいくつか知っておいた方がよさそうな内容を書き出しておこう。

・太る原因の7割が血統にある(遺伝にあるので実際には環境的要因は関係ない)

・それでも太る遺伝子はない(いわゆる「倹約遺伝子」はない)

・「摂取カロリー」―「消費カロリー」=「体脂肪」 ←これはカロリー幻想で嘘。
「摂取カロリー」が減ると「消費カロリー」も同じように減るから
→「摂取カロリー」がもどると前以上に体重が増える = 「リバウンド」は意志の力とは無関係
「食べない人ほどやせにくい」はどの研究から見ても明らか

・「食事量を減らして 運動を増やす」 ←カロリーの95%が基礎代謝で使われ、運動で使われるのは5%が限界
運動して痩せたのは最初だけ。その後体重は増加、7年半運動をやっても、全く何もしていない人と変わらなかった。
←食欲が思ったよりも増大する
←運動した分休息を多くとる

・食べすぎると太るも嘘
過食も難しい。無理に過食をさせると基礎代謝も増える

・「基礎代謝」は一定ではない 摂取カロリーやその他の要因で人によっては50%も前後する
人間の体重は「勝手に調整」される。
常に一定でいるように「恒常性の維持」が行われる
ではなぜ肥満しているか=「設定値が高くなっている」だけ

・肥満の根本原因はインシュリン ホルモン濃度が高くなることでホルモンバランスが崩れること
いつ食べ始めていつ食べ終わるかを決定しているのは「ホルモン」

・肥満の原因 = インスリン は血糖値を下げる働きがあるが低血糖の状態は体重を増加させる
インスリンが減ると体重が減る(Ⅰ型糖尿病・血糖値は上がるが急激に痩せてしまう)

インスリンが体重の設定値を決めている

・インスリン以外の太るホルモン →
 「満腹因子レプチン」脂肪組織が増えるとレプチンが増えて、これが脳まで達するとこれ以上増やさないようにするため食欲が抑制される。しかし、ある程度これが続くと、レプチンの分泌量に慣れてしまい、痩せない

睡眠時間が少ないとレプチン(満腹ホルモン)が減りグレリン(食欲ホルモン)が増える

「コルチゾール」はストレスホルモン
短期的にはインスリンと逆の働きをするが長期的な心理的ストレスにさらされた場合には同じ働きをする。
慢性的にコルチゾールによる刺激がある人はインスリンの分泌と肥満が増える=ストレスが体重の増加を招く

・炭水化物 =血糖値を上げやすい =インスリンの分泌が促される
インスリン=エネルギー代謝を調節するホルモンで、細胞に糖を「貯蔵」させ、また脂肪の貯蔵を促進する 基礎的なホルモン

食事をして炭水化物が分解されるとグルコースになる。必要以上のグルコースは肝臓にグリコーゲンとして蓄える(グリコーゲン合成)
食事をして数時間立つと体内のグルコースが減るので、肝臓が蓄えたグリコーゲンからグルコースを作る。=通常この働きは夜間に

脂肪は「肝臓がぱんぱんになって」から溜まり始める。長く食事をとらず肝臓のグリコーゲンが無くなると脂肪から糖を作る「糖新生」が起こる。

食べる時間と食べない時間のバランスが取れている限りこのシステムのバランスはとれている。

・低脂質ダイエットを行うと代謝が悪くなる

・「ケーキを食べると「糖中毒」になる」高度に精製された食べ物に対しては満腹ホルモンが分泌されない
精製された炭水化物に中毒性があるのは「加工されている」から

・糖質制限の問題は痩せないこと
短期的には痩せる が、減った分の体重がもどる。低炭水化物ダイエットの利点のほとんどが一年後には消える。

・肥満だった時期の長さが重要=インスリン抵抗性 
インスリン抵抗性になるとインスリンを投与する 抵抗性が現れ効かなくなる さらに投与する さらに抵抗性が高まる。 →血糖値が改善しても糖尿病は悪化する 摂取カロリーを一日に300キロカロリー減らしても平均して8.7キロ体重が増える

この悪循環から何十年も抜け出せない人ほどインスリン抵抗性が高まっている
食べたものに関わらずインスリンが多量に分泌される=体重の設定値が高いままになる

・「食事の内容」と「食事のタイミング」が重要
「体内に何も入れない時間を作る」
一日の内でインスリンの分泌量が少ない時間があることが太るか太らないかの決定的な違いを生む

何回食べるかは何を食べるかの2倍も問題
食事による発熱効果は微々たるもので、少しずつ何回食べようが、しっかり食べようが24時間の発熱効果は同じ

・「食べる回数をとにかく減らすこと」

・社会的肥満
「資金援助を受けると700%スポンサーよりの結果が出る」
朝ごはんを食べる=健康的 は完全な印象操作 →朝起きてすぐ食べる必要はない
朝からしっかり食べる人ほど太りやすい 一日の中で食べる回数が増える、食べる量も大きくなる 燃焼率は朝食を抜いても同じ

・所得が低いと太るー安い食べ物のリスク
加工された炭水化物は桁違いに安い←政府が高額な補助金を出して生産コストを低く抑えているから→食べ物を値段で選ぶと太りやすい

・砂糖・合成甘味料もよくない
人口甘味料を取っていた女性は一年後体重が増える傾向が高い。また心血管イベント(脳卒中・心臓発作)のリスクが43%高くなる
→甘くてカロリーゼロだと脳の報酬系が働かず食欲があがる

・「精製」された糖が悪いのはあるきまった栄養素しかとらなくなることでバランスが完全に崩れてしまうから

・食物繊維は栄養素ではなくて栄養阻害物資なので炭水化物の吸収を減らし血糖値やインスリン値が下がる

・冷凍食品の食物繊維は食べ物を美味しくするために取り除かれるので食物繊維の解毒効果が働かない

・炭水化物だけを食べると満腹ホルモンが働かない

・酢 高炭水化物の食事と一緒に小匙二杯分の酢をとると血糖値を低くすることが出来インスリン値も34%低くなる、ただし食事の直前に取ることが効果的

・肥満の治療においてはGI値を低い食品を選んでも減量効果はない
あくまでインスリン値を下げることが必要(血糖値を下げることではない)

・何を食べてもインスリンは分泌される。しかし、脂質はその効果が最も弱い

・コレステロールは肝臓で合成されていて食事からとられるのはわずか20%細胞膜の構成要素。
食事のコレステロールを削減すると肝臓で合成を増やす

・植物油脂が健康だという考え方・・・奇跡のようなありえない間違い
油っぽくない植物から油を搾りだすためにどれだけの加工がされているか。脂質と血中コレステロールには関係が認められなかった。
しかし、この研究は葬り去られてた

2%多く人工物のトランス脂肪酸をとると心疾患リスクを23%上げる(マーガリンやショートニングなど)
LDLコレステロール(悪玉)が増えHDLコレステロール(善玉)が減る

・脳卒中を予防するのは動物性脂肪
「低脂肪乳」より「全乳」の方が痩せる 

・「低カロリーダイエット」 Vs.「低炭水化物ダイエット」
どちらもいくらかの真実を含んでいる

・どんなダイエット法も短期的には痩せるが半年から一年くらいたつと体重は減らず、増え始める。もっとも体重が減るのは6か月後

・現時点で疫学上最も信頼される5ステップ
1・「添加糖の摂取」を減らす
 デザートを変える・糖分を制限してナッツやフルーツに
 間食をやめる
 朝食は食べても食べなくてもいい
 水・炭酸水を飲む(コーヒーは一日6杯まで)
2・「精製された穀物の摂取」を減らす
 枝豆を食べる
3・「たんぱく質の摂取」を減らす
 食事に含まれるたんぱく質の量を総摂取カロリーの20~30%に抑える4・「いい脂肪」をもっと食べる
 天然の脂質が含まれているものを食べる・ヴァージンオリーブオイル(ピュアオイルはよくない)
5・「食物繊維」をもっと食べる
 こんにゃく・酢 が体に良い

・食べるタイミングが重要
「間隔」が長ければ長いほどよい  ・・・ 「ファスティング(断食)」24時間~36時間のファスティングを間欠的に行う

一日おきのファスティングを70日間続けると体重が6%減少し、体脂肪は11.4%も減少する

総エネルギー消費量は減らなかった。飢餓状態にもならなかった。代謝が落ちることもなく、体脂肪の燃焼量は58%上昇し、炭水化物の燃焼量は53%減少した(インスリンが出にくいということ)

・ファスティングを続けるにつれ食欲は減っていく

・食事は間欠的にとるもので、規則正しく取るものではない

・ファスティングの期間が長くなればなるほどインスリン値は低くなり、体重が大幅に減り糖尿病患者の血糖値も大きく下がる 24時間もしくは36時間のファスティングを週に2-3度行う

カロリーの無い水や炭酸水は飲んでもよい お茶やコーヒーも多少のミルクを入れて飲んでもよい

周期的に飢餓状態に陥ることで代謝活動が停滞することはない

食べ物の摂取を減らすとエネルギーの消費量を減らすことでバランスが保たれるが、食べ物を全くとらなくなると体はエネルギーの摂取先を食べ物から蓄積されている脂肪に変える。


ざっと書き出してみた。
各部分部分で、ネットなどでもちゃんとしたサイトで引用されている研究論文と重複した内容がみられる。
情報ソースが重複していると、信憑性が増す。

何しろダイエットの歴史は長い。特にアメリカなどでは社会問題化していて多くの人が真剣に研究に取り組んでいる。実際多額の費用をかけた大規模実験も何度も行われている。しかし、その研究結果が実際に社会に反映されているかというとそれは少ない。

ファイスティングじゃ誰も儲からないからだ。
それに、それを実践する私達もつらい。

・・・が、結局そういうことなんだよね。ファスティング・・・20時間くらいはわりと平気になってきたので、あと4時間くらい・・・少しずつ時間を延ばしています。トホホ・・・

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