ただ居られるだけの場所をつくる。

便利なのでつい使ってしまいがちだが、言うまでもなく「居場所」という場所があるわけではない。それは話をわかりやすくするための、まあ、符丁のようなものといっていい。

居ることで、そこははじめて居場所になる。

居場所をつくるということは、人が行きたいと思い、そこに居たいと感じ、実際に何をするわけでなくただ居られる場所を用意するとともに、そこが「居場所」になるまで耕し続ける不断の営みのことをいう。要するに、ただ場所を確保しさえすればよいという話ではなく、空気のようなものを育ててゆくことだと考える。カフェをやってきた自分のような人間が、こうした居場所づくりに適任だと思うのはそうした理由からである。

とりわけ、いま僕らがやっている「喫茶ひとりじかん」というプロジェクトの場合、家にこもりがちであったり、団体行動が苦手、あるいはしばし一人になれる場所が欲しいといった人たちに、一人で居られる自由と、でも独りではないという安心感を提供するのが趣旨なので、何かをすることで参加を促す既存の居場所づくりから考えるとかなり異質である。

とりあえず会場を押さえ、スタッフを配置し、よっしゃ!来い!という感じのありがちな居場所がどうも僕は苦手だし、経験豊富でやる気にみなぎったボランティアの方には正直ちょっと引いてしまう。居場所をつくるからには何かしなきゃならない、でないとやってることにならない、やる意味がない、そう感じる人がこうした世界には多いのだと思う。でもかえって、世の中にはそういうのがダメなタイプの人間もいるんです。

助成を受けるため区と書類のやりとりをするときも、そのあたりを理解してもらうのがひと苦労だった。

「これって、いわゆる「茶話会」ですよね?」
「いいえ。全っ然、ちがいますっ!!」

とりあえず、全力で「ただ居る」だけの場所を僕らがプロデュースする「喫茶ひとりじかん」。第2回は10月29日(火)13時から16時まで板橋区赤塚新町3丁目のMUJI BASE光が丘にて開催です。


サポートいただいた金額は、すべて高齢者や子育て中のみなさん、お仕事で疲れているみなさんのための新たな居場所づくりの経費として大切に使わせて頂きます。