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オンラインがメインになりつつあることで、はからずもわかったこと。

108.しゃべらせろ

上野の鈴本演芸場で4月下席(4月21日〜30日)の主任(トリ)をつとめる予定になっていた落語家の春風亭一之輔が、興行の中止を受け、今夜から10日間、YouTubeで高座のライブ配信をするそうである。

おカネを稼ぐにはしゃべるしかない噺家にとって、仮にもしこのコロナ禍が長期化すれば、マンモスが気候変動によって絶滅させられたのと同じくらいのダメージを被ることになるのではないか。寄席のみならず、大小さまざまな落語会から全国で行われる学校寄席、刑務所の慰問、それにパーティーの司会まで落語家のほぼすべての収入源が失われたような状況、これでは「おまんまの食い上げ」である。じっさい、なんとか食いつなぐためUber Eatsの配達員の登録をしたという若手落語家のツイートもみかけた。

しかしそうした経済的なしんどさ以上に、たくさんの落語家の口から聞こえてくるのは「落語ができない」ことに対する悔しさである。ほとんどやけくそのような一之輔のあいさつ動画からも、ファンサービスやこれを機に新規ファンを獲得するための先行投資といった思惑より、とりあえずしゃべりたい! しゃべらせろ! という「初期衝動」に近いものを感じる。じっさい、売れっ子になったいまも決して寄席の出番を欠かさない一之輔師匠である。興行が飛んでしまい、ほんとうに悔しいのだろうなぁ。

というわけで、配信は4月21日(火)から30日(木)まで。時間は20時10分ごろ〜。ちなみにネタは日替わりだそうです。

とにかく、落語ってなに? それおいしいの? と思っているひとにはぜひ、今夜からの一之輔のライブ配信を観てもらいたい。古典を現代風にアレンジではなく、古典は古典のまま現代になじませてしまうそのスゴ腕に舌を巻いてほしい。

ぼくは、3.11直後の息苦しさの中、落語に救いを見出しすっかりハマってしまった人間です。だからこそ、いま、同様に息苦しい気分を抱えているひとにこそぜひ落語を聴いてみてほしいのだ。

109.こんなことやりたいわけじゃないんだ!

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