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テレワークがあたりまえな世界は本当にやってくるか。

111.働き方改革

これで日本人の働き方が変わる。テレワークが、これからは当たり前になるだろう。そんな話を最近よく耳にする。

本当だろうか? というのも、つい先日Zoom飲みの折に友人からこんな話を聞かされたからである。

その友人はいわゆる大企業に勤務しており、緊急事態宣言の発出とともにテレワークとなった。まず、遅いよね。知っての通り、首都圏の置かれた状況はかなり前から深刻で、緊急事態宣言の発出を待たずに在宅勤務に切り替える企業も少なくなかった。
その一方で、大企業ほど対応が遅くみえたのは、「お上」からのお達しを待っていたからである。日本の、とりわけ古いタイプの組織ほど「変化」に対しては腰が重い。それがたとえ、長期的にはよい「変化」だったとしても。

そんな大企業が、今回のっぴきならない事情によりテレワークを導入することになった。これまでテレワークの導入に向けた準備をどの程度進めていたかはわからないが、いきなり手品みたいにパッと切り替わるものではない。そのため、テレワークになったはいいが実際のところ在宅でできる仕事というのはあまりなく、結果、いまやったところで結論が出ないような意味のないWeb会議がやたらと増えたと友人は言うのだった。もちろん、することがないので、とりあえず会議でもしておくかという上司からの提案である。逆に言えば、なんとなく仕事した気になれるという点で、会議とはなかなか便利なものだとも言える。そして、コロナが終わったとき、こうした上司たちはきっとこう言うにちがいない。

やっぱり仕事ってものは顔を付き合わせてなんぼだな。これでようやく仕事ができる。

彼らが組織の中で決定権を握っているかぎり、テレワークはあくまでも非常時のイレギュラーな対応にとどまり続けるのではないか。まるで何事もなかったかのように満員電車に揺られ、さして広くもないオフィスに机を並べて仕事している未来が見える。
だいたい、人との接触を8割減らさないと大変なことになると主張する政府の専門家会議からしてこのありさまである。言ってることとやってることが矛盾しているの、誰も気づかないのだろうか?いや、さすがにそんなことはないだろう。思っていながら口に出せない、まさに日本的組織あるあるの典型。

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これはしかし、古い発想の人たちばかりとはかぎらない。ツイッターのTLなど眺めていると、年齢にかかわらずどうやら自宅で仕事をすることには向き不向きもあるようだ。
自宅に引きこもってひとり黙々と仕事をすることにストレスを感じているひとのつぶやきが、しばしば目に飛び込んでくる。同じ理由から、テレワークの進んだアメリカでは、シェアオフィスの人気が高まっているとの記事を新聞で読んだ。なにを言っているのかよくわからないが、要はこういうことである。自宅で仕事に集中できないためやむなくカフェなどをハシゴしていた人たちが、より割安なシェアオフィスをポケットマネーで借りるのだという。たしかに、会社がなかったら、ほとんど誰ともリアルで口をきかず1週間を終えるといったひともいるだろう。孤独に弱いひとはメンタルをやられてもおかしくない。

また、住宅環境が妨げになるという面もある。たとえば夫婦ともにテレワークとなると、それぞれが効率よく仕事することのできるスペースが必要になるだろうが、会社から住宅手当でも出ないかぎりそんな贅沢はなかなかできたもんじゃない。ワンルームに暮らす若い女性など、プライバシーという点でWeb会議にかなりストレスを感じるらしい。たしかに、上司や同僚に自分の部屋を、たとえモニター越しとはいえ見られるのは気持ちのいいことではないだろう。この「在宅勤務強制ギプス」を着用したことで、ぼくらはバラ色のテレワークの「現実」を見てしまったのかもしれない。

そんなわけで、ぼくはメディアが煽り立てるほどにはテレワークが普及するとはかんがえない。そのかわり、人口密度という点で比較的安全な地方都市に本社機能の移転をかんがえる企業は出てくるのではないかと思っている。地方自治体の首長のみなさん、これは企業誘致の最大のチャンスかもしれませんよ! 

UターンだIターンだ云っても、けっきょくそこに食べてゆくための仕事がなければどうにもならない。地方分権がいっこうに進まないのもそれがネックとなっているのは明らか。これを機に、大企業も、官公庁も、どんどん地方に移転して経済を活性化してくれたらいい。日本人の働き方って、たぶんそういうところからしか変われないのだし。

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112.火星の音楽

いまMOCHYのアルバムを聴いている。

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