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家族だと綺麗事が言えなかった日①

私には2人弟がいる。
6歳下の長男(弟A)はつい2年くらい前まで家族を嫌い、1人離れた場所で生活していた。
なぜ今一緒に暮らしているかは今度書こうと思います。

10歳下の次男(弟B)は6歳の時、小児脳腫瘍を発症し手術を受けた。
そこから15年健常より少しだけハンディがある程度で生活していたが、4年前に一人暮らしをしていた先で目が見えなくなった。
原因は非交通性水頭症。何らかの原因で脳に水が溜まる病気だ。脳腫瘍の手術から15年が経過していた。
彼の身体にはシャントと呼ばれる溜まった水を排出する機械が入っている。ずっと調整が必要だし経過を見ていく必要がある。

調整までに何度も脳が腫れたり縮んだりを繰り返した後、今までより不便なことが増えた。
気持ちのコントロールが難しく、急な予定変更があると塞ぎ込んで動けない事がある。
腫れた脳が目を圧迫したことにより視野が狭くなり、見えないものが増えた。
精神症状や理解力の低下については″高次性機能障害″と呼ぶらしい。

今は就労支援施設に通いながら生活している弟B。ここに辿り着くまで、終日家で過ごしていた。
息子を産んで産休中だった私に母は弟Bの面倒も見てほしいと私達の家に預けた。
まだ今程自活できていない状態。一人で置いていける時間は長くても1時間くらい。
2階の部屋で過ごす弟Bを見守りながら初めての新生児育児。
正直限界だった。
何とか半年を過ごして仕事復帰した頃には3Kの2階建アパートには弟Bだけでなく母も住み、広くて育児がしやすいねと借りた部屋はすし詰め状態。

ここにきて、基本装備が自由奔放の母。
もう何もかもが限界。
母や弟Bの顔を見るだけで不機嫌になる私。
それを感じて更に不機嫌になる母。塞ぎ込む弟B。
気まずいから帰ってこなくなる夫。

私は思い切って母に「今のままでは暮らせない。頼むから離れる時間をください」とお願いした。
幸い、私が独身時代に住んでいたアパートを母がそのまま住むことにして借りたままだったのでその日のうちに2人はそちらへ移った。

私は家族を捨てたんだ。
自責の念でその日は夫が帰ってくるまで泣いた。
病気の弟を見放すなんて。50も過ぎて息子の面倒を母が一人でみることになるのに…。
私は最低最悪の娘だった。
この自己嫌悪から抜け出せたのは、翌日から母がいつもと変わらない様子で電話をしてきてくれたからだと思う。
そして、離れているからこそ私に適度な仕事を頼んでくれたから。

そこから2年、私たちは近所ではあったけれど別々に暮らした。
その間、弟の障害年金受給の手続きや就労支援を受けるための手続き、通院や母が一人で行くには不安な所には極力一緒に行った。
娘を産んでからの産休育休中も一緒に過ごすことが多かったし、フルタイムで働いていた時は2人が暮らすアパートに息子はよく遊びに行っていた。

2年かけて、私は今の弟Bを理解しようとしてきたし、動けなくなる場面でどういうアプローチをすることでスムーズに行動ができるかを試してきた。
その中で今の彼との関係を構築することを諦めないことにした。

弟Aが帰ってきたこともあって、私達はまた一緒に暮らすことにした。これには夫の理解も不可欠だった。時々小言を言われるけど。

相変わらず母は自由だし、年齢のせいもあってか更にワガママに拍車がかかってきた。
でも私達姉弟は同じ認識の中で生活しているので一人ぼっちで母と対峙するわけではないからずっと楽に接することができた。
弟Bは毎日就労支援に通い、自分が作った漬物やお菓子を持ってきてくれる。
16時台に帰宅する彼が子供達の面倒を見てくれるから家事がスムーズに進む。
私の家事を行う上で彼は最大のサポーターだ。

家族だから支える。
その綺麗事で片づけられなかった時期がある。
悔しかったしやるせなかった。

当時の私を許容してくれた母には感謝している。
追い出したも同然の娘に今も変わらず接して、母なりに私のことも労わろうとしてくれている。

そして、障害のある弟と向き合うことで今私は沢山の体験をさせてもらった。
仕事が障害のある人の支援だったのに、家族となったら受け入れられないことも沢山あって、それに折り合いをつけるためのメンタルや新たな知識を身につけることができた。

私は彼には私がいなくなった後でも健常の人と大きな勘違いや隔たり無く暮らしてくれたらと思う。
だからこそ他の家族より厳しい時もあるし、彼が理解できるまで話をし続ける。
彼と私の関係の中で生まれた発見や悩みも今後紹介していけたらと思っている。
と、いうよりやっとこの話をここでしようと思えるようになった。

私は神様にも聖母様にもなれなかった。
それでも私達家族にしかできないサポートをそれぞれができるように生きていこうと決めている。

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