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【エヴァ考察第1章】エヴァという物語とは?アニメ版と新劇場版から紐といてみた

【!】2021/05/04 シンエヴァ考察書き終わりました!さっそく読む【!】

職場でアニメ版だけ見たことある先輩が新劇場版を観てくれて嬉しかったのでQ観て訳が分からないだろう先輩用に書いた解説なんですがついでに公開しちゃいます。

新劇場版最終章シン・エヴァンゲリオンの公開に向けて、難解だと言われているQを中心に、エヴァの世界設定や前提条件、残っている疑問点など大枠だけでも理解しておけばもっとこの作品を楽しんで観ることができると思いますので解説・考察していきます。
登場人物の心理的な考察はいろんな方が詳しく解説されてらっしゃるのでこちらではあまりやらず、出来事を中心に
【第1章】エヴァという物語とは?旧作から概要や設定を今一度理解する
【第2章】アニメ版(旧作)と比較して新劇場版の世界設定を理解する
【第3章】前編:空白の14年間についての考察
                 後編:Qのストーリーと世界についての解説
 【第4章】次回作シン・エヴァンゲリオンはどうなる?今分かっていることから予想する
の4部作で進めていきたいと思います。

まず初めに時系列というか、この順に見たらわかりやすいよ〜ってのを書いておきます。

前作の物語(旧作と呼ばせていただきます)
「アニメ1〜24話+旧劇場版 25話Air 26話まごころを君に+アニメ版25話26話(劇場版の心理・内面描写がアニメで行われています)」

新劇場版の物語(今作と呼ばせていただきます)
「序+破+Q予告(空白の14年間)+Q+0706作戦+もうすぐ公開シン・エヴァンゲリオン:||」
(Q予告の中に空白の14年間に起こった出来事が全て凝縮されているという荒技です)

旧作でも深く語られていなかったエヴァ世界の設定を今一度理解する

アニメ本編は過去についてや設定など、ちゃんと視聴者に解説しろよな!というぐらい情報が少ないままヒューマンストーリーをメインにストーリーが進んでいくので、(ゲーム「新世紀エヴァンゲリオン2」の中で詳しく解説されているそうです。)まずこの【第1部】では大前提となっているエヴァンゲリオンの世界設定と所々で今作との設定の違いを頭に入れて、今作をもっと楽しめるよう解説していきます。

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はるか昔、宇宙には「第一始祖民族」と呼ばれる人型種族がおり(新劇場版ではこれがゼーレ?)、彼らは銀河系に「月」というキャリア(運び屋)を使って生命の種(アダムやリリス)をばらまきます。
(旧作では第一始祖民族とゼーレは別物という扱いですが、新劇場版は同一という設定に変更されていそうです。)
何でばらまいたのかはわかりませんが、もしかしたら第一始祖民族が住んでた星が滅ぶ時だったのかも。
旅立つ時に、アダム(生命の実)かリリス(知恵の実)どちらかを選べたようです。
本来、一つの星に一つの生命の種が着床する予定でしたがうっかり地球には2体の種が着床。
先に着床したのは、アダムを入れた「白き月」
神より生命の実を与えられた存在なのでアダムベースの生き物は永遠の命(S2機関)を持っています。復活の時にむけて復元マニュアル(死海文書)と制御棒(ロンギヌスの槍)を一緒に持ってきていました。
白き月の生命が地球で活動をし始めようとしたその時、本来別の星に行くはずのリリスを入れた「黒き月」も地球に着床。
黒き月が衝突した原因は地球の重力に引っ張られてしまったことのようです。
神より知恵の実を与えられ、リリスベースの生き物は寿命はあるが知恵(文明)を持ちます。
白き月は南極の地下に埋まり、黒き月は箱根の地下に埋まって巨大な地下空洞(ジオフロント)になります。
(なお、アダムは西暦2000年に南極で発生したセカンドインパクトにより、肉体と魂がバラバラになってしまいます。一方のリリスは作中2015年の時点で第3新東京市(箱根)の地下で磔にされています。)

黒き月の衝突は「ファーストインパクト」として人類史には記録され、
その破片が塊となり形成されたのが衛星としての月ということになっています。
そして白き月の中に入っていたアダムと使徒の卵たちは黒き月衝突の衝撃で長い冬眠状態に入ってしまいます。
アダムベースの生命が眠っている間、地球では後から来たリリスの体液(血?)が地球の水と混ざり化学変化が起こり生命が誕生。そこから進化したリリン(人類)が繁栄してしまいました。(使徒達は西暦2015年まで眠り続けていた)
でも一つの星で繁栄するのは、一つの生命の種。
宇宙において異例の状態となった地球では2015年に目覚めた使徒(アダムベース)と人類(リリスベース)スタート地点は同じだったはずなのにそれぞれの種の生存をかけた戦いが起こることとなります。
アダム達は長い宇宙の旅に適した移動しやすい形状に一旦変化していたため、本来の姿を忘れないよう星に到着したら元の形に戻れるようにと、復元マニュアルを白き月に一緒に入れていました。それが死海文書(死海に落ちてたから死海文書)です。
しかしアダム達が眠っている間にある時、繁栄を始めていた人類の中でゼーレという宗教団体が死海文書を発見し解読します。(割と最近のことらしい。よく解読できたなって思う)
それにより生命の実を持った生物(アダム)と知恵の実を持つ生物(リリス)
が融合すると神に等しき存在となれる儀式(インパクト)が起こること、ロンギヌスの槍の運用方法、きたる2015年に使徒が目覚め母なるアダムのもとに還ろうとすることがわかりました。
ゼーレは将来眠りから覚め、攻めてくる使徒に対抗するために、そしてこっそり自分たちが本物の神となるための作業マニュアル「裏死海文書」を作ります。

ゼーレがまず始めたことは
①アダムの捜索(使徒が目覚めるより先に見つけないとヤバイ)
 →後のアダム再生計画へ
②莫大な資金力を持って世界を裏から操るために国連を手中に
③2015年に向けた対使徒迎撃用研究開発機関の設置と対使徒戦闘兵器の開発(E計画)

ロンギヌスの槍について
ロンギヌスの槍とは生命の種とセットになった保安装置とされます。原子力発電の制御棒みたいなかんじ。
神に近いアダムやリリスの動きを停止させる事ができる一種の生命体で、意志を持ち自ら移動する能力を持つ。生命の種を創った第一始祖民族が自分たちの目的に沿わない時や暴走に備えた対策として、種とセットでばらまいたと考えられます。
それと対になるように、今作ではカシウスの槍というものも登場しますが、こちらについては旧作では出てこないので次以降の章で解説します。

ロンギヌスの槍の機能について(2020/6/25追記)
保安装置として作られたロンギヌスの槍ですが、実際はどのように作動するのでしょうか?
それにはまず「リビドー(生への欲望)」と「デストルドー(死への衝動)」「ATフィールドとは何なのか?」というところから説明しなければなりません。
まずリビドーとは「環境に適応して自分を存在させ続けたい」という保持・進化の気持ちです。これが個々の心や体を定義し形作る力(ATフィールド)の元になるものです。
「ATフィールドとは心の壁」と旧作でカヲル君が言っていますね。いわば自我境界です。
エヴァの世界では死=LCLへの回帰。生きているからこそ意思が自我境界(ATフィールド)を保ってくれるためLCLと同化しなくて済んでいるとでも言いますか。「生きたい!」と強く願っている人ほどATフィールドが強いことになります。
肉体が再生できないほど破壊されたり、生きているはずなのに自分と他人の境目が分からなくなったり、自意識下で「あ、自分(の肉体は)死んだんだ」と明確に分かった時にATフィールドは消失します。
多分、その時その場にLCLが満たされていれば魂の器(肉体)を無くし行き場を失った魂はLCLの中へ保存されます。LCLが無い場合は即刻ガフの部屋(魂が還る場所)へ行って次の転生先を待つことになります。
つまりATフィールドは生の証。リビドー(生への欲望)そのものです。デストルドー(死への衝動)とは対をなすもの。
デストルドーは「出来るだけ元の状態に戻りたい。無へと還りたい(要は死にたい)」という回帰の気持ちでこちらがアンチATフィールドの元になるものです。
ロンギヌスの槍はデストルドーそのもの、塊みたいなものなので、リビドーの産物であるATフィールドを貫通できます。
これを魂と肉体が揃った神的な存在に刺すと、強力な「元に戻る衝動」によって自らを卵にまで還元させようとします。同時にアンチATフィールドも展開することになりますので、周辺にいた生物もみんなATフィールドを失ってしまいます。これが旧作セカンドインパクトではアダムが行ったこと。サードインパクトでリリスが行ったことです。
全ての生命をLCL化させ、魂を生まれた場所に戻してもう一度最初からやり直させる。太古からプログラムされた生態系のリセット方法、保安装置の作動原理です。
普段ドグマで槍刺されっぱなしのリリスは卵に還らないの?と思うかもしれませんが、魂がない場合は槍を刺されても肉体再生を抑制する程度に留まります。

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いったんここで年表で見るエヴァの世界

(ちなみに旧作は西暦ですが、今作はそれがなくなっており、西暦なのか、そもそも何年なのかもわからなくなっています。なのでこの年表はあくまで旧作ベース。今作では少し変更が加えられていると思います)

■約?億年前
白き月が地球に衝突。
■約46億年前
黒き月が地球に衝突。箱根に埋まり破片は月に
■西暦1900年代
ゼーレが死海文書を発見。解読し裏死海文書を作成
来る使徒の来襲に向けてE計画とアダム捜索を企画。
■多分1990年代
S2機関について葛城博士(ミサトの父)が提唱。
■1999年
京都大学にて教授をしていた冬月は生徒のユイからの紹介でゲンドウと知り合う。
(旧作ではユイは元々ゼーレの研究者で、ゼーレの一員になるためにゲンドウがユイを利用して近づいたことになっている)
漫画版のスピンオフ「真夏のエデン」で登場したユイの大学の年下の同級生真希波マリがヨーロッパへ留学(マリについての考察は後ほど)
リツコの母ナオコも冬月のゼミ生なのか、とにかく京都大学の学生が後に作られたE計画を進める人工進化研究所に多く就職したみたいですね。

冬月はなぜゲンドウについていく?
ユイは大学時代、冬月の生徒であるが一緒に登山をしたりする親しき仲。
冬月は生徒に対しいけないと思っていてもユイに好意を寄せていたそうで、ですが当時ユイはもうゲンドウと交際をしており、評判の悪かったゲンドウに対して冬月もあまり良いとは思っていなかったよう。
旧作のサードインパクトでは冬月の前に現れたのはユイだったので、冬月がゲンドウについていく目的もまた、ユイに会うことなのでしょうけどね。
科学者として事の顛末を見ておきたいという研究心もあるのかもしれませんが。

■2000年
ゼーレは使徒よりも先にアダムを見つけ出すために全世界で調査を行い、南極大陸にて白き月とアダムを発見する。南極へ研究基地ベタニアベースを設置。
ゼーレの指示により目覚めると危険なアダムをロンギヌスの槍を使って卵まで戻す実験が行われそこに葛城博士と娘のミサトが参加。
■2000年9月13日
アダムの暴走によりセカンドインパクトが発生。アダムの体はバラバラに、魂も分離されてしまった。
アダムの体は胎児にまで戻されベークライトで固化、魂は渚カヲルへ。
父親はミサトを庇って死亡。ミサトはこの時のショックで失語症になる。
旧作では南極周辺の海が赤く染まり生き物は死滅。今作では地球上の全ての海水が赤くなってしまい海の生き物は全滅。南極の氷は蒸発し世界の海位が上がったため海の近い都市は水没。地軸が傾いたことで気候変動が起こり、日本は常夏となってしまう。
この事実はゼーレによって隠蔽され、世間的には巨大隕石の落下となっている。
セカンドインパクトと同日に渚カヲル誕生。

セカンドインパクトはなぜ起こった?
南極で見つかったアダム。このままではあと15年で目覚める使徒にすぐ見つかっちゃうので卵の状態にまで還元して使徒が感知できないようにしまおうということでゼーレは南極に研究施設を設置。
あとはアダム側の使徒を無限に生み出せないようにしておくという意味もあります。(許せぬ)
ついでにミサトの父である葛城博士が提唱しているS2機関の検証も一緒に行います。提供者からのヒト遺伝子を使って接触実験をしたようです。
方法としては死海周辺で見つかったロンギヌスの槍を使ってアダムをいじくるのですが、順番が悪かったのでしょうか、アダムが目覚めて光の巨人になってしまいます。アダムを抑えようとロンギヌスの槍を使いますが逆効果でアダムのアンチATフィールドが展開。アダムは実験で使用していたヒトの遺伝子と物理融合しインパクトが発生、大爆発が起こってしまいます。
(ロンギヌスの槍の持つ強力なデストルドー反応でアンチATフィールドが展開、これを刺された神的な存在は卵にまで還ろうとするのでヒト遺伝子と融合さえしていなければインパクトは起こらなかった)
これによりゼーレはアダムとリリスベースの生物の融合はインパクト発生の原因となると実証を得たというわけですね。
(リリスベースの生物との接触がなんでもアリならその辺のペンギンと接触してもインパクトは起きてたのかもしれない。とても危険ですね。)
しかし肝心の「どうしてセカンドインパクトは中断したのか?」が明確にはよくわかりません。ロンギヌスの槍を抜いた上でアダムを爆発させた(エネルギーを爆散させた?)からなんとかなったのか?→(2020/6/25追記しました)
しかし爆発による熱エネルギーで南極の氷は全部溶けてしまいました。旧作では南極周辺のみ海が赤くなっていましたが、今作では世界中の海が真っ赤になってしまっています。
世界中は大混乱に陥りますがゼーレはこの惨状を大質量隕石の落下に伴う爆発として隠蔽。
バラバラになったアダムの肉体と魂は秘密裏に回収しました。アダムの肉体は後の「アダム再生計画」へ、魂はヒト型の肉体、渚カヲルとなりました。
(今作でのセカンドインパクトはアダムスが4体使われている設定になっているので上記のことはあくまで旧作のインパクト原因です。なんで数増えてんの?とかアダムスってなんだよ?ってことについては次の章で後述)
セカンドインパクト中断までの顛末とカヲルの出自(2020/6/25追記)
アダムとリリスベースと融合したことでインパクトが起こり、暴走してしまったアダムを食い止めようとロンギヌスの槍が刺される。
アダムは先ほど述べたロンギヌスの槍の力によって、自らを卵へ還元させるべくアンチATフィールドを展開する。アダムは自分の魂も生まれた場所へ還そうと「白き月」のガフの部屋(アダムベースの魂が還り、再生を待つ場所)の扉を開きますが、
「ガフの扉が開くと同時に熱減却処理を開始!」という声があり、葛城調査隊が被害を食い止めようと南極に埋まっていた白き月を熱滅却処理(爆破)したためアダムには死んでも永遠に魂が還る場所がなくなってしまった。魂が還らないということは、次に生まれてくる子供には魂が宿らないということ。つまり今生まれている使徒以外に、もう使徒は生まれない…
そのため、アダムは消滅する直前に、融合したヒト遺伝子情報をもとに最後の子(使徒)を生み、それに自身の魂を移し、肉体はバラバラになった。この最後の子がカヲル。
だからカヲルはアダムの魂も持っているし、リリンの遺伝子と融合したアダムから生まれたためリリスベースの証である「知恵」も持っている。
カヲルはゼーレに造られたというよりは、保護され使徒として育てられたと言った方が正解かもしれません。
肉体はゼーレが用意したのだとしたら、どうやって魂を回収したのか?という疑問と、セカンドインパクトの日付とカヲルの誕生日が一緒であることから、大爆発の同日に魂を回収して肉体に移す作業なんて時間的に無理があると思っていたので、アダムが産み落としたものをゼーレがのちに回収したという方が納得できます。
アダムに融合したヒト遺伝子提供者はユイ説(2020/6/25追記)
(あくまで旧作の話。今作はこれの限りではない)
アダムにヒトの遺伝子をダイブさせる実験で、遺伝子を提供したのはユイという説があります。ユイはゼーレの研究者ですのでまぁおかしくはないなーと思います。
つまりアダムとユイの子がカヲル。(リリス+ユイの子がレイとも言える)
シンジがカヲルのことを「似ていたんだ、僕に」と言うのは遺伝子レベルで似ていたのだと思います。
(カヲル君の誕生日がシンジが受精した日っていうのもまじでやばいなって思った。魂の双子じゃん…)
破の月面でカヲルがゲンドウに「はじめまして。おとうさん」と言うのもこれが関係してるのかも…

■2000年9月15日 
セカンドインパクトにより世界中は大混乱。インドとパキスタンの難民衝突を機に世界的な軍事衝突が起きる。で、日本にも飛び火。9月20日には東京に新型爆弾(N2爆弾?)が投下され東京は壊滅。
政府は東京の復興を断念。東京は破棄され長野県松代に遷都される。(第2新東京市)

N2爆弾とは
Nがつくので窒素爆弾かと思っていたこともありますが、No Nucler(非核)の頭文字をとってN2との見方が強いです。原子爆弾を起爆装置に使わない水素爆弾ってことなのか、それとも核分裂ではなく核融合の技術なのか、さすがにここまでは詳しくなくて申し訳ないです。
日本の戦略自衛隊が持つ最大兵器という立ち位置のようです。地図の書換えが必要になるぐらいの威力があるらしい。
今作Qではヴンダーの動力にN2リアクターというものがでてきます。非核発電装置ってことなのかな?旧作では核分裂をエネルギーとした動力炉を持つJA(ジェットアローン)なるエヴァに対抗してつくられたロボットが出てくるのでこの世界でもまだ核融合が実用化されてないと仮定して、同時期にN2爆弾は存在しているので核融合でもない技術なのかもしれません。

■2001年
シンジ誕生。こんな大混乱の状況で子供産むとか大変すぎるよユイさん。
■2005年
第2東京市が作られたのはいいものの、なんと箱根の地下に巨大空洞がありその下にリリスのいる黒き月が埋まっていることがわかる。
バラバラになったアダムを感知できなくなった使徒は第2使徒リリスをアダムだと勘違いしてやってくる可能性が高い。そのためそこに使徒迎撃要塞都市第3新東京市の建設計画がたつ。
地下空洞の中にはリリスのいるドグマにつながる本部が建設。そこにE計画を進める研究組織「人工進化研究所」と対使徒迎撃組織ネルフの前身「ゲヒルン」の施設も作られました。
のちにゲヒルンはゼーレによって解体され、公的な組織ネルフになります。これによりネルフ職員は公務員という扱いに。
(ゲヒルン時代はゼーレの私的資金援助によって成り立っていたものが、公的組織ネルフになったことで税金による資金繰りとなったということなのかもしれませんね)
■2005年
エヴァ初号機の起動実験にユイが参加。シンジ3歳。ユイは初号機のコアに体ごと全部取り込まれてしまう。ユイの肉体はLCLへ。魂は初号機のコアと同化している。不幸なことにその場にシンジも連れてこられていた。
ユイをサルベージする計画が実行されるが失敗。(おそらくこの時に綾波のクローン技術が確立された)
結婚し子供が生まれ、やっと真っ当な性格になりつつあったゲンドウがだんだんまたおかしくなる。→現在の性格へ
シンジは先生という人のもとへ(漫画版ではユイ方の親戚の家に)預けられる。
ユイ消滅は世間的にかなり報道されたようで、ゲンドウには殺人容疑すらかけられていた。そのためこの渦中からシンジを遠ざけるためとも捉えられる。
同時期にドイツでエヴァ2号機の機動実験にアスカ母が参加。アスカを想う母としての気持ちだけが2号機のコアに取り込まれてしまい、肉体に残ったわずかな魂のせいでアスカ母は不安定に。のちにアスカがエヴァパイロットに選ばれた日にアスカの目の前で首吊り自殺。
ゲンドウはゼーレに人類補完計画を提唱。ゼーレはこれを承認。人類補完委員会が設立。(メンバーはほぼゼーレ。単純にゲンドウが自分の目的を叶えるためにゼーレ及び世界中から予算を獲得するための口実とも言える。ゼーレは本気にしちゃったけど。)
この頃マギシステムも完成。リツコやミサトも大学卒業後すぐにネルフへ就職。
ゲンドウはこの頃から綾波のクローンを連れて歩くようになる。これが綾波1体目。
綾波1はゲンドウと不倫関係にあったリツコの母ナオコの逆鱗に触れ絞殺される。ナオコは自殺。
どうやってできたのかはわからないがリリスから魂が取り出され、綾波に入れられている。
ゲンドウの目的を叶える手段としてゼーレに黙ってやったのか、それとも来たる使徒にむけて肉体と魂を分散させておくことで使徒とリリスが融合しても上手くインパクトが起こせないようリスクヘッジとしてやったのかは謎。
これらのことから、エヴァの世界では肉体と魂を分離させ、人工的なものに魂を移し替える技術が発達してきていることが分かりますね。(ただし肉体に戻せるとは限らない)

POINT① エヴァの素体を覚えておきたい
さて、エヴァは人造人間だということは周知の事実だと思いますが、実は今作を理解していく上でめちゃくちゃ重要なことが1つあります。
それは「エヴァの素体になったもの」を知っておくことです。
作中で説明されることも少ないので知らないままの人もいるかと思いますが、
これを頭に入れておくだけで物語の理解度がぐんと上がるので覚えておきましょう。この後の章で解説することにめちゃくちゃ関わってきます。
まず旧作ではアダムが1体しかいないため
エヴァは全機、アダムをコピーしたものを素体にして作られています。
聖書で土から作られたアダムは同じく自分の土からイヴを作り出す。言い換えればアダムからコピーされた存在がイヴ(EVA)。その通りですね。
また、ロンギヌスの槍もオリジナルの2本を残してあとは模造品です。
しかし、その中でも初号機だけはリリスをコピーして作られています。
アダムはセカンドインパクトで体と魂がバラバラに、そして体は胎児へ、魂は渚カヲルへ
リリスはドグマの中に封印、魂は綾波レイへ
つまりオリジナルのアダムとリリスは両方とも心と体が分離されてしまっていて不完全な状態になっています。人為的にインパクトを始めるためにはそれらが元に戻った状態でなおかつアダムとリリスの2体が揃っていないといけないというわけです。
しかし条件付きで、アダムのコピー・リリスのコピーであるエヴァ達をオリジナルの代わりにすることができます。旧作ではあまりその方法は使われませんでしたが、今作ではバンバン使ってきますのでそれを理解するためにエヴァの素体について覚えておく必要があるわけですね。これも後の章で解説します!

■2005年〜
着々と第3新東京市は出来上がっていく。
基本的にこの都市はネルフやそれに関連した企業に勤める人のみが居住できる。
シンジが通うことになる中学校(特に2年A組)には母親のいないエヴァパイロット候補の子供達が集められている。
エヴァパイロットになるためにはエヴァのコアに母親の魂が入れられている必要があるため、必然的に母親はネルフ関係の研究職だったということになる。2年A組の子供たちの母親の魂を一同に保管する場所があるのかと思うとゾッとするけど。
ちなみに旧作ではパイロットを選出する「マルドゥック機関」というものがあるが、実質メンバーはゼーレとゲンドウなのであって無いようなもの。ほぼ縁故選出である。でも家族の都合で疎開できたり、一応子供の意思確認がされたりといった配慮はある模様。
この世界では何か組織を立ち上げる時に、いわゆるフロント企業のように研究機関の名前を名乗って活動内容を公にせずにこっそり計画を進めることが多かったようですね。
■2011?2012年
ゲンドウとシンジがユイの墓参りで久々に会う。
■2014?2015年
零号機の起動実験で綾波2体目が参加。零号機は暴走する。
ゲンドウが火傷してまで綾波を助ける。
ただ、ゲンドウはユイのクローンである綾波にユイを重ねて見ており、ちょっと情が沸いているだけ。基本的にはゲンドウの最終目的「インパクトを起こしてユイに会う」を叶えるためにはリリスの魂が入っている綾波が道具として必要なのでむやみやたらに死んでもらっては困る。
綾波も最初はその情が嬉しかったのですが、シンジとの交流によって徐々にゲンドウが自分を道具として見ていることを自覚し、疑問を持っていきます。
■2015年
東京都三鷹に預けられていたシンジがゲンドウに呼び出される。そして第3使徒サキエルがついに襲来する。ここでやっと物語は旧作第1話、今作だと序に続きます。

年表終了
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使徒は別に人間を滅ぼしたい(インパクトを起こしたい)わけじゃない

使徒は第3新東京市を目指してやってきますが、その目的はリリスと融合し知恵の実を手に入れ神になることなのでしょうか?
実はそれは違います。使徒も人間も、1つの種につき1つの星に巡り合えていれば、自分は片方の実が欠けているなんて自覚なく正しく繁栄できたはずです。
インパクトを起こして生命の実まで手に入れる。それは知恵の実を持った欲深い一部の人間の考えることなのでしょう。
2015年に目覚めた使徒たちが最初に行うことといえば当然、自分の生みの親であるアダムを探すこと。
ですが使徒が目覚める前にアダムは2000年に南極で発生したセカンドインパクトで「胎児」となっている上に魂は分離しているため、使徒はアダムのわずかな気配を感じ取ることができません。だから、同種の気配を発するリリスをアダムだと勘違いして第3新東京市まで向かってきています。
ターミナル・ドグマにたどり着いたカヲル君が「アダム、我らの母たる存在。アダムより生まれしものはアダムに還らねばならないのか、人を滅ぼしてまで…。」と言っていましたね。しかしのちにそれはアダムではなくリリスと見破られます。(旧作ではドグマにリリスが封印されていることすらネルフ職員には知らされていませんでした。しかもリリスはアダムの仮面をつけて偽られている。今作ではネルフ職員は地下にいるのがリリスということを知っている設定に)
このことから使徒の目的はアダムに還ることなのでしょう。その結果としてインパクトが起こってしまうということなのですが。使徒に悪意はないと思います。
カヲル君の場合はゼーレに「アダムの元に還りな」と言われて派遣されて来たけど、実際はリリスで、カヲルとリリスの接触でインパクトを起こすのがゼーレの算段だったと理解した。でもカヲル君が「君たちには未来が必要だ」と言って死を選びシンジ君(および他リリン)を生かす方向にシフト、ゼーレを裏切る形に。
「アダムの魂」であるカヲル君でさえアダムの居場所を間違えてしまったわけですからその他の使徒達は気配だけを頼りにネルフを襲ってきたのでしょう。(旧作では唯一ガギエルだけは船で輸送中のアダムの肉体を感知して襲ってきています。それ以降の使徒はアダムの肉体を右手に取り込んだゲンドウもネルフ本部にいるのでそれ目的とも言えますが、みんなドグマに行こうとするので気配の先がリリスに向いていると思われる)

なぜ使徒を倒すの?

人類側から見たら使徒は人類を滅ぼしにきていると思っているわけなので、それに対抗しようとしているだけなんですね。
ただ、インパクトを起こしたいゼーレとゲンドウはそうではない。
一応使徒を殲滅することが人類補完計画を行うために必要なリリスとの契約内容となっています。リリスに捧げる生贄的な感じですかね。
まあそれも条件のひとつなんですが、もっと重要なことはインパクトは起こした側が主導権を握り、その意思が尊重されるという側面があることなんです。
インパクトで完全な生命体になる時に人間側と使徒側のどちらが主導権を握るかが重要。
ゼーレとゲンドウは自分たちが主導権を握れるよう都合の良い条件でインパクトを起こしたいので、他の使徒にインパクト起こされちゃう、つまり使徒の意思が尊重されちゃうと不都合なんです。
だから物語の中盤までゼーレとゲンドウはあと何体使徒が来るのかを知っており、ミサト達にはそれを伝えずに何も知らないネルフの人達に殲滅してもらうことを指示しています。自分達が都合よくインパクトを起こせる時が来るのをずっと待っていたということです。
え?でも使徒のカヲルはなんでゼーレが送って来てんの?という疑問がわきそうですが、他の使徒とは違いカヲルはゼーレによってサードインパクトのナビゲーターとして作られているというのが重要なポイントです。「インパクトの主導権」を握るのが言葉の通じなさそうな使徒より人語とヒトを理解した使徒である方が楽ですからね。

使徒を全て倒した後は

ネルフの職員たちがやっと全ての使徒を倒し終わったと思った矢先、ついにゲンドウとゼーレが人類補完計画(インパクト)に向けて動き出します。
と言ってもゼーレは最初からずっとインパクトに向けて動いていました。ゲンドウとネルフを作業員として。でも旧作の物語が進んでいくにつれゲンドウの思惑とゼーレの思惑が少しずつすれ違いを起こしていく。最終的にゲンドウがどんどんゼーレの言うこと聞かなくなってきた。だからゼーレは怒って予定を繰り上げたり実力行使にでる。その第一弾が旧作24話渚カヲルの派遣だったわけだけどカヲル君はシンジニストになってしまい失敗。この時カヲルの魂(アダム)そのものがシンジを生かしたいという目的にシフトした(カヲルが生まれた意味となった)ことで、仮に別の肉体を用意し魂を入れカヲルをまた作り出そうとしても、同じ魂である以上はその個体もまたシンジを生かそうとするためゼーレのやりたい補完計画の材料としては使えなくなってしまう。
なので代案として初号機を補完計画の作動の材料として使うことにし、初号機確保のため戦略自衛隊を派遣。戦略自衛隊にシンジを殺させようとしていたのでパイロットはシンジでなくても良く、殺害して別のパイロットを用意するつもりだったかも。
でも人類側は使徒にもゼーレにもインパクト自体を起こされることは絶滅を意味するのでなんとしてでも阻止したい。旧劇場版25話でついにゼーレVSゲンドウVSネルフ職員の3極構造になるけどゼーレとゲンドウの意図に気付くのが遅かったことと対人戦闘訓練が少なかったネルフ職員はゼーレが差し向けた戦略自衛隊に勝てずほぼ全滅。
今作ではこの時点でスパイをしている加持がミサトに真実を伝えるのが早かったのでヴィレが結成されたものと思われます。(多分、破で出てきた海洋研究所がヴィレの前身のフロント企業)

POINT②
このゼーレVSゲンドウVSネルフ職員という旧作では目に見えづらかった対立構造が今作Qでは顕在化してきます。個人勢力も増えたりしますが旧作も今作も基本構造はこれなので覚えておきたいところです。

奇跡的に復調したアスカの強いATフィールドにより戦略自衛隊を壊滅寸前まで追い込むことができましたがS2機関の搭載に成功した量産型はこの時点で9体完成しており、本来なら12体まで作るつもりだったけど急遽2号機殲滅のため予定変更してネルフ上空へ投下。
カヲル君を殺してしまったことで無気力になっていたシンジはミサトや初号機に励まされてなんとか初号機に乗ってアスカを助けようと地上に出たらボコされた2号機の残骸を見て発狂。シンジはデストルドー(死への衝動)で満たされ、そのデストルドーによって宇宙に漂っていたはずのロンギヌスの槍が呼び戻される。

シンジがデストルドーに満たされたことと、ゼーレが本来使いたかったロンギヌスの槍が戻ってきたことにより、量産型は12体に足りていないが、9体+初号機の10体を生命の樹(カバラ)に見立てて急遽その場でインパクトの儀式を始めることにした。
ついに始まってしまうサードインパクト。それとほぼ同時刻にゲンドウも自分の思惑を叶えるためにインパクトを開始しようと動く。
しかしゲンドウの思惑は失敗。結果としてゼーレの思惑の方を助けたことになってしまう。

サードインパクトのトリガーにされてしまった初号機およびシンジにインパクト後の世界の主導権(決定権)が委ねられる。
エヴァという物語は人類と使徒の生き残りをかけた戦いの物語でありながら、同時にゼーレ側の目的に人類が抵抗することが共通のテーマなんですね。本当の敵は内部にいる。
ということでゼーレの目的である人類補完計画とゼーレそのものについて解説していきます。

ゼーレとは?旧作での設定は

各国の政治的な主要人物が集まった12人からなる。莫大な資金力。議長はキール・ローレンツ。
大元は昔からいる宗教団体で世界を裏から牛耳り国連を隠れ蓑にしているため発言権を持ち実質は実権を握っている。
(ネルフは国連とは別組織で、使徒を倒せるのはネルフだけなので、国連はネルフに頼らざるを得ない状況。だけどインパクトを起こしかけたり使徒を仕留め損なったりネルフがやらかすと指揮権は国連に移る)
人間体があり人類補完計画したいけど自分たちが動くのはめんどくさいから行動力のあるゲンドウ君にやらせちゃおうっていう感じ。ゲンドウ君が提唱したんだから言い出しっぺがやりなよってことなのか単純に自分達は老体ゆえにできないのか。人間体がある分、直接行動ができない今作(後述)と比べていざという時の行動力は強いです。
が、旧劇場版ラストにLCL化する際にキールは機械部分を残して他が液体化しているので、脳(魂)を機械に置き換えて通常の人間より遥かに長い間生きていた可能性があります。

人類補完計画とは

めちゃくちゃ簡潔に言うと

「出来損ないの群体としてすでに行き詰まった人類を完全な単体としての生物へと人工進化させる計画」(旧劇場版25話ミサトのセリフより)

これが一番端的に表していると思います。人間という生き物の在り方に限界を感じているんですね。ほっといても進化しないしたまに戦争起こして自滅するから進化のタイミングを自分たちで作っちゃおう!と。
この本質は旧作と今作でも変わりは無いですがやり方やプロセスが異なります。
旧作→肉体やATフィールド(心の壁)があり不完全な存在である人類からアンチATフィールドを使ってATフィールドを無くしてしまう。全員肉体はLCLという液体に、魂は黒き月にまとめてリリスのもとへ還してしまうことによって完全な単体となる
今作→人を一旦完全な存在(インフィニティと呼ばれる生命の実と知恵の実両方持ってる存在)に強制進化させてリリスのもとへ集める
今作の内容については次の章で解説していきますので、ここでは旧作の補完計画について掘り下げていきます。

それぞれの思惑

人類補完計画にはゼーレの思惑とゲンドウの思惑があり、表向きは協力して進めているように見せかけていますが、こっそりお互いに別々のことをしようとしています。
(そして実はお互いにそのことに気づいているけどあえて黙っている)

ゼーレ
インパクトを起こし人類の原罪を償う。自分達は神になる。(以下で詳しく解説)
ゲンドウ
ゼーレの言っていることを実行しているように見せかけてお金を支援してもらいつつ自分はアダムを取り込んでリリスの魂を持つレイと合体。初号機に取り込まれてるユイに会う。そしてユイと2人で神になる。

ネルフ職員達(エヴァパイロット含む)はゼーレとゲンドウの目的を叶えるための駒でしかありません。
しかし裏でゲンドウはゼーレの本来の進め方をあらゆる工作で妨害し、事故ですよ致し方なかったんですよ僕はやってないですよ計画遅れちゃってすみませんねともたつかせながら、自分が本来やりたかった方法の補完計画の準備を進めていきます。

ゼーレはどうして補完計画なんてやろうと思ったのか?

まず「人間とは不完全という悪」であるという大前提を頭に入れなければなりません。
使徒側から見た時、人類は「リリン」と呼ばれます。まぁだいたい呼んでるのは喋れる使徒カヲル君ぐらいなのですが。
第1使徒アダムから生まれた使徒達にとっては、第2使徒リリスから生まれたリリン(人類)もまた使徒であるという見方です。
聖書ではリリスは実はイヴよりも前のアダムの前妻。しかしリリスは悪魔サタンと結婚したくさん悪魔の子供達(リリン)を生んだとされます。
つまり「リリン(人類)=悪魔の子供=悪=完全な存在に生まれ変わり、滅ぶべき不完全な失敗作」というのがこの物語の前提です。
人間が悪魔であるから逆に使徒には天使の名前がついているんですね。

二つの実を手に入れたら神(と等しき存在)になれる

建前と本音のうち本音から先に書いてしまいましたが、ゼーレさんにもちゃんとした建前があります。
それが元宗教団体ゼーレさんの教義「人は生まれながらにして悪」なんです。
救われるためには贖罪をしなければならないんです。
その贖罪の方法ってのが人類補完計画。

人類補完計画には2つの側面があります。
①知恵の実しか持たない欠けた存在のヒトに生命の実を補完して完全なる存在へと進化させる物理的側面
②感情なんてものを持ち、ATフィールド(自我境界)のせいで群体としてしか生きられない弱くて愚かな生物をひとつの単体へ、悩みや争いのない世界へと補完する精神的側面
作中では主に②の方が強調されていると思います。本音は①なんですけどね。
結局は進化の先にあるものは死、自滅思想なんです。人類が救われるためには死ぬしかない。それで集団自殺した宗教聞いたことあるぞ。

肉体を無くしみんなひとつになる

いやいやそれを普通の人から見たら「死」って言うんだよ!という話なんですが、ゼーレさんは大真面目に「みんなでひとつになったらハッピーじゃん!」と言っているんです。ゼーレさんは肉体がなくなることは死だと思っていないんです。
まずエヴァの物語の前提の一つとして覚えていていただきたいのが、この世界には「肉体の喪失=死」ではないという考えの人が一定数いるということです。(碇ユイさんとか渚カヲル君などなど、ゼーレに所属している方々ですね)まず肉体と魂を分離させる技術生み出してますから。ただこの世界に生きる至極普通のヒトは魂が肉体に戻ってこれない状態が死だと認識しています。これが普通なんだと思います。

POINT③
でもこの「肉体の喪失程度じゃ死とは言えない論」はエヴァという作品を読み解いていく上で非常に重要なキーとなっています。特に今作ではこの設定もバンバン活用されています。とにかく覚えておきましょう。

具体的にどう償うの?

まずはこの、人類が罪を償う(贖罪)の方法として、人類補完計画を実行しますよ、と。じゃあ具体的にどういうことをする必要があるのかというとキリスト(神の子)を十字架状の生命の樹に磔、処刑しキリストの血を大地に流すことで原罪を償うという聖書に沿った儀式が必要です。それがサードインパクトを起こす儀式…かというと実はちょっと違います。
しかしキリスト(神の子)がシンジ=神児とかけている説もなんだかしっくりきてしまいます。
作中ではあんまり明らかになっていませんが、この儀式はゼーレが神になるための儀式だと私は思っています。
その儀式をするには結局サードインパクトを起こさなきゃいけないのでこの儀式とインパクトはセットです。でもインパクトだけで見ればそれを起こすためにはアダムとリリスの接触とトリガーがいればそれだけでOKです。別に十字架を模したり儀式めいたものをしなくてもいいんです。
アダムとリリスの融合はゲンドウがやってくれました。ゼーレさんはというと、初号機を使って本来しなくても問題ない儀式を同時並行で行おうとしていますね。ゼーレさんの方は贖罪の儀式をしようとしていたわけです。
贖罪の儀式にはキリストに刺したとされるロンギヌスの槍、神の子(処刑される存在)と、キリストの12の使徒(ここでいう使徒は量産機のことを指す)で13体が必要になる。これが本来行おうとしていたゼーレの願いを叶えるための形式なんですが
結果的には、量産機の製造が間に合わず「いささか数が足りぬが」と言って補完は10体で「生命の樹」を模す形で行われました。とはいえよく見たらこれ、生命の樹に見せかけた「邪悪の樹」なんですけどね。生命の樹と邪悪の樹にまつわるカバラと今作ゼーレ=サタン化については後述。

インパクトは実は2種類ある(2020/6/25追記)
①リリスベースがリリスに還ることやアダムベースがアダムに還る、基本的に同種だけで起こせるインパクト。
②アダムとリリス、異種が融合することで起こるインパクト

基本的にこれまで説明していたものは②にあたります。
というより、特に旧作エヴァの物語の中で①だけが起こるところは出てこないんです。起こったインパクトは大抵②だしゼーレもゲンドウも②を狙っています。①を起こそうとした使徒達は目的を達成する前に殲滅されてしまいましたから…

①だと何が起こるかというと、起こした側の別種の生物は滅ぼされます。(旧作でカヲル君も言っていますね。「アダムより生まれしものはアダムへと還らねばならないのか。人を滅ぼしてまで…」と)そして起こした側の種全て魂がガフの部屋(命が還り、次の肉体を待つ部屋)に還って新生します。だからリリン(ヒト)もリリスに還ったら多分①のインパクトが起こります。
それが勝手に起こされないようにリリスの魂は綾波という別の場所に保管されているのでしょうけど。
②だと起こした側は神と等しき存在に進化します。そのかわりやっぱり古の生物としての肉体は無くなっちゃいます。
①と②は同時に起こすこともできます。というより②が①を内包しています。
使徒が起こそうとしているのは①です。母なるアダムの元に還って、この星の覇者になりたい。かーちゃんに会ったらなんかでっかい何かが起こって他の生物は滅ぶらしいけど知らん。かーちゃんに会いたいんじゃ!と言ったかんじ。
でも作中ではかーちゃんだと思ってたものをよ〜く見たら別種のかーちゃんリリスだった。だから会っちゃうと②が起こる。使徒からしたらまぁいっか…ってかんじなんでしょうけどね。でも人からしたら①も②も絶滅行動ですから、やって欲しくないし普通の考えしてたらやらないわけです。
ゼーレには建前と本音があると書きましたが、①だけ起こすならあらゆる手を使ってなんとかヒトを1体リリスに放り込んで、リリスの魂を持つ綾波もドッキングさせちゃえば発動できると思うんです。
ゼーレの目的は一応「贖罪」ですから①だけでも全然良いはずなのに、アダムベースのカヲル君を使おうとしていた時点で②を狙っていたことは明白なんです。
でもカヲルの裏切りにより②をやる夢が潰えたから仕方なく人類のために建前だけでも叶えておかんとね。と①を行おうとしました。
でもゲンドウは建前なんてすっ飛ばして②が大本命でした。①だけ叶えたって意味ないんだわ!と思ってたんでしょう。んで②を独自で起こそうとしましたが綾波に裏切られて失敗。ゼーレさんは諦めて仕方なく①だけでも…と思っていたら②もできることになってラッキー!
そんな感じかもしれません。
今作でたくさんのインパクトが起こりますが、人為的に起こされたものは基本的に②、偶発的に起こってしまったものは①の可能性がある。と考えると理解しやすいかと。
使徒を殲滅し終わった時点で①のインパクトはほとんど起きないと思って良いので、ここはあまり覚えなくても良いと思います。

悲しいことにゲンドウは綾波3体目の裏切りにより自分の思惑に沿ったインパクトを起こすことができませんでした。ゲンドウがインパクトを起こす目的はユイと会う、だけじゃなくて、ユイと一緒に神になることだったので、ユイに会えたっていう願いは叶えることができたけど出し抜くはずだったゼーレの思惑を叶える結果となってしまい、ユイと一緒に神になることはできなかった。ゼーレの方に軍配が上がってしまったため初号機とユイだけが神になったということですね。ゲンドウは初号機にかじられちゃいました。これこそ贖罪ですね!
ということで旧作の世界の3極構造はほぼゼーレさんの白星で終わりました。初号機はマジもんの神になって宇宙へ旅立つ。ユイも目的達成です。

ユイの目的は何?
ユイの目的は、不滅の(≒神に近い)存在になり、人類の生きた証を未来永劫残すこと。エヴァは永遠に生きていられる。だから自ら初号機にダイレクトエントリーを志願したしサルベージ計画も拒否して初号機のコアから出てくることを拒んでいた。ゲンドウは不滅の存在になろうとしたユイに並び立つには、自らも神になるしかない、と考え補完計画を提唱したのでしょうか。
神になりたいゼーレと、永遠に生き続けてくれる存在(=神)を作りたいユイは本質的に同じ目的を持っているといえます。
ただユイが望む神=ゼーレではない。ユイが望むのはエヴァ=神にすること。

ゼーレの思惑が叶った世界でトリガーとなり決裁権を任されたシンジ君は、やっぱり他人がいる世界を望んだことにより、2号機の強いATフィールドによってLCL化を免れたアスカという一番身近な他人と2人だけ生き残った世界になります。
(でも誰もが強く望めばまた人の形に戻れるらしいよ)

これにて旧作・完
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まず第1章で覚えておくことまとめ

POINT①エヴァの素体は基本みんなアダムのコピー、初号機だけリリスのコピー
 今作だとこれに加えさらに「本物」が使われたりエヴァの形をしてなかったりと複雑になっていくよ!

POINT②エヴァ世界の対立構造はゼーレVSゲンドウVSネルフ職員
 今作ではここから少し勢力が増えるが基本形は変わらないよ!

POINT③エヴァの世界は魂と肉体は別物
 一部の人は「肉体がなくなったぐらいじゃ死んだと言えない」と思っている!

ということで今まで書いたことをベースに今作の設定を見ていきましょう。

旧世界と新世界のつながり?今作の世界設定をめちゃくちゃざっくり解説!

旧世界でサードインパクトが起こり人々の肉体はLCLへ、シンジの願いにより魂は記憶を消され、再構築された世界。何年、何千年、何万年後かはわからないけどそれが新劇場版の世界(あくまで考察)です。
ただし旧作で神になるための儀式に参加した量産機のダミープラグの中にいた9体のカヲル君のクローン体と、別次元の存在になったゼーレの記憶だけは新世界へと引き継がれた。よかったねゼーレさん。願いは大枠叶って。
今作で海がすでに赤いのは旧作でのLCLを彷彿とさせるがLCLではない。セカンドインパクトによるもの。
これが旧→新世界つながり説です。(次章でしっかり詳しく解説します!)

今作のゼーレは何者?

この世の人間ではないと思われる高次(別次元)の存在、エヴァの世界を作ったいわゆる神的な存在だと推測される。正確には作ったかどうかはわからないとして、人類に文明を与えた存在です。
ただしエヴァ世界内では神でも本来の居場所である別の次元では知恵の実を与えられた同じく人間である示唆がある。
多分人類のことは失敗作だと思ってるんでしょう。
作るのは簡単なんだから失敗作だと思ってるなら消せば良くね?と思うのですが、ソフトウェアと同じで、作ることはできてもバグの修復は手間がかかったり、一度世にリリースしたものを簡単には引き下げられないのかなーと推測します。
多分人類がどれだけ訴えてもゼーレにとっての人類=バグの認識は変わらないと思うので、ゼーレは人類補完計画によってバグを修復する方向に舵を切っていると言えます。作ったのは自分らなのでゼーレはあくまで善意でバグへの責任を取ろうとしているのかもしれませんね。
この世界に実体がないので旧作みたいにあんまり実力行使に出たりするのは難しいようで計画の実行はやっぱりゲンドウ君にお願いしてますね。
裏死海文書とはゼーレがゲンドウ君に渡した作業マニュアルみたいなものです。

今作のゼーレはサタン

ゼーレとはドイツ語で「魂」を意味します。これは肉体は無いともとれます。
キリスト教では7が神聖さを表す数字なので旧作では12人いた構成員が今作では新しいロゴマークの目の数に合わせてさらっと7人にリストラされています。
今作からゼーレのロゴは黙示録の子羊7つ目小僧に+ヘビとリンゴがデザインされました。私はこっちの方がバランス良くて好きです。
ゼーレはイヴをそそのかして知恵の実(リンゴ)を食べさせたヘビそのもの。知恵の実を食べさせたというのは文明を与えたと同義でしょう。そしてこのヘビはルシファーを表しています。堕天使のルシファーは神によって天界を追放されてしまいますが、悪魔を率いてサタンとなります。ヘビは神に復讐を誓ったわけです。
サタンはリリスの後の夫となり、リリスはたくさんの悪魔の子を生んだとされている。リリスの子は…リリンです。
ゼーレにとっての人類(リリン)は生まれたこと自体が悪で罪というのはさっき話しましたが
まずねぇそそのかしたヘビの方が悪いんじゃん!ゼーレをサタンとするならリリンはおまえとリリスの間の子だろがよ!とつっこみたいんですが、出来の悪い子なんでしょうね。すみませんね。

ゼーレ=サタンを裏付けるカバラ

旧作のOPや司令室の天井や人類補完計画発動の時のカバラ、
今作では破で出て来た海洋研究所のカバラ(しかし、海洋研究所のカバラは水が入れられていない部分も含めると12個あります。これはどう言った意味なのでしょうね?)
Qで13号機建造の後にもカバラ。エヴァの物語の中にはカバラが割と出てきます。
画像をご参照までに。

画像2

私もそこまでカバラに詳しくないんですけど正カバラはセフィロトの樹(生命の樹)を表し、逆カバラはクリフォトの樹(邪悪の樹)を表します。
「生命の樹」は、セフィラと呼ばれる「10個の光の球」で構成されているのに対し逆カバラの「邪悪の樹」は、クリファーと呼ばれる「10個の殻」で構成されています。
「生命の樹」を上下逆にした図象なので「逆さまの樹」とも呼ばれ、「生命の樹」の一番下の10番目のセフィラ「マルクト(サンダルフォン)」のさらに下に、「邪悪の樹」はつながっています。
生命の樹が上にいくにつれ「高次の光」を目指していくのに対して、邪悪の樹は下にいくにつれ「虚無」の世界に引き込まれていきます。そして一番下の「虚無」が表すものはサタンなんです。
カバラはインパクトにとっても関係があります。
旧作で量産機9体が初号機を依り代にサードインパクトの儀式を始める時、生命の樹の正カバラに見せかけて実は逆カバラを使用しています。

画像2

引用出典元 (C)カラー/EVA製作委員会

旧作の映画が作られた当初は単に間違えただけなのか、あえてなのかはわかりませんが、今作のゼーレの設定から考えるとあえてだったのではないかと思います。
量産機9体+初号機で10体がそれぞれのクリファーに合うように数合わせされています。
となるとやはり旧作のゼーレは自身を高次の存在サタンへと引き上げてもらうことを目的としていたのかもしれませんね。(本当はちゃんとした神を目指してたけど間違えて逆カバラになってしまいサタンになっちゃった可能性も?)
Qで13号機完成時、うしろにもカバラっぽいものが見えていました。が、ちょっと向きまではわかりませんでした。これが逆カバラであるとすれば13号機の立ち位置的に表すものはやっぱり「サタン」なんですよ。もう少しまじまじと見た方がいいんでしょうがどれだけ見てもわかりづらかったので諦めました。

今作ゼーレの本当の目的は?

一般の人類から見たインパクトとはただの絶滅行動なだけなのですが、一部の人にとってのインパクトとは生命の実と知恵の実両方を手に入れて神に等しい存在になることです。
旧作ではゼーレは悪魔の子供達である人類(リリン)を一つにまとめ、リリスへ還すことで神への贖罪としたが、それは建前みたいなもんで、本当の目的は神になることでした。
次の章で詳しくお話しする旧→新世界つながり説が本当であるとすれば、旧世界のゼーレは初号機を使って人類補完計画を開始しガフの扉を開けたことで自分達だけ扉の先(つまり高次元)に行き、新劇場版の世界では神的存在になったと考えられます。そうなると旧作でのゼーレは元々宗教団体なので人間のくせして神になろうとする人類補完計画はかなり高慢だな、と。まあ宗教ってのはそういうもんかもね。
正確に言えば神というより知恵の実を持ち、人類に文明を与えた高位の存在となったわけですが。(今作のエヴァの世界に干渉した存在という意味ではこの世界の神にあたるのだと思う)
んじゃすでに神になるという目的を果たしたゼーレは今作で何を目標とするのか?
ゼーレはこの世界では神なんですけど、ゼーレのいる次元では悪魔なんです。
先ほどサタンは神様によって楽園を追放された堕天使ルシファーだと書きましたが、言葉の通り、やっとの思いで天界のメンバー入りしたゼーレさんは神様に「お前悪魔やんけ!」と追い出されてしまい激おこです。(あくまで私の妄想です)
今作でのゼーレは下位の存在(エヴァの世界)に文明を与え、補完計画で人類を生命の実と知恵の実を持った完全な存在インフィニティに強制進化させる。そして自身をエデンの園から追放した神への復讐を果たす。
その実行道具がゼーレが準備していた神殺しの異名を持つヴンダーです。
Qではヴィレが奪って使用していますが本来の製造元ゼーレにとって復讐すべき神を殺すための戦艦なのかもしれません。(ヴンダーはなんなのかは後の章でじっくり考察します)
とまぁ、旧作から比較するとだいぶスケールの大きい計画になっています。
計画を実行してくれているリリン達からは神(ゼーレ)殺しを企画されているというのに…
旧作では人類の原罪を償ってあげたいとかいう迷惑極まりない理念を掲げていましたが
今作に至っては自分達を追放した神を殺すことが本命という、ゼーレは傲慢の象徴のようです。

じゃあ今作のゲンドウの思惑は?

ゲンドウの思惑は旧作とそうたいして変わっていません。
ただ、ユイに会うためのプロセスが異なっているだけです。
本質はユイに会う。ユイと2人で神になる。ゼーレ殺す。それだけ。

今作でのユイの目的は?

今作でのユイもまた、ゼーレの思想を知っており、なおかつこの世界がゼーレによって作られた虚構だと知る人物。シンジを生んだことでシンジのいる世界を守りたくなった。(むしろ虚構から本物にしたかった?)
初号機に残ることで永遠に生き続け、シンジのいる世界を守る。生きたことは虚構ではないとして歴史を残していく。
別にこの世界をリセットしたり神殺ししたりってことには興味ないと思われます。
旧作と比べてゼーレの設定が違っているため、細かい部分は変わってくると思いますが。

─────────────────────────────────────

とまぁまずはここまで整理して第1章を終わります。
次章では今作(新劇場版)の世界設定を深く掘り下げながら、序破で気になったことも織り混ぜつつQと空白の14年間をメインに解説・考察していきます。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
何か思い出したこと・書き忘れあれば追記していきます。

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