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いかにして私はコピーライターを挫折したか。 第2話 新人編

コピーライターの新人としての勤務が始まった。
とはいえ、何一つコピーを書いたことがない人間に、急に「これのコピー書いてよ」と仕事が降ってはこない。

ではどうするか。それはまず誰かの下につくことである。とりあえず先輩として中堅コピーライターの青木(仮名)さんが面倒を見てくれることになった。
青木さんは黒ぶちメガネをかけたインテリ風の見た目と、バリバリの関西弁が特徴で、自分と同じく未経験からコピーライター職採用となった人だ。
社会人経験にも乏しかったので、電話の取り方とか、飲み会の店の予約のしかたとか、そういったところから教えてもらった記憶がある。

その上にはベテランの春田さん(仮名)がいて、なんとこの人は副業でラジオのパーソナリティもやっている上に空手も師範代級、さらにはたまにライブをやるミュージシャンという顔も持っていた。ちょっと情報量が多すぎて戸惑う。その後、ほかに何人もコピーライターに会ったが、一番特徴の多い人だった。ていうかすぐ特定できるな、この特徴。

そのほかにも女性コピーライターが二人いたのだが、それはおいおい。

入ってみてすぐわかったが、広告制作プロダクションというのは、激務である。現在は働き方がどれくらい改革されているのか知らないが、当時は間違いなく激務であった。
何が激務かといえば、単純に拘束時間。ただこれは仕事の内容を考えるとやむを得ない部分もある。

「これ考えてみて」
「できました」
「いいね~、これでいこう」

となればすぐ終わるのだが、実際は以下のようになる。

「これ考えてみて」
(何時間か悩む)
「できました」
「う~ん、まだまだだな。こういう視点が抜けてるし先方が言ってたこういう部分がフォローできてない。もう少し考えてみて」
(何時間か悩む)
「できました」
「う~ん(以下略)」

実際にこのペースでやってたら締め切りまでに終わらないので途中で上司が修正を入れて形にするか、丸々書いてしまう。となると「●●時間悩んでたのは何だったのか…」という気分にはなるのだが、けっこう疲れ切っているので「ようやく終わった」とほっとするのも事実だ。

最初のころの仕事はこんな感じだが、新人にいったん考えさせるような余裕のある状況ばかりでもなく、自然と空き時間が発生する。
そんなときに行うのが「写経」である。

写経、とは。

大した引きでもないのに次回に続く。

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