見出し画像

再エネ過剰重視の欧州が陥った危機

◉Newsweekにブレンダ・シェーファー民主主義防衛財団エネルギー問題上級顧問による、ヨーロッパの再生可能エネルギーへの過剰な肩入れが、逆にエネルギー危機を巻き起こしているという記事が、アップされていました。以前にも簡単に取り上げた件ですが、より突っ込んだ内容になっています。で、今回は原子力発電や石炭火力発電、再生可能エネルギー関連の話から少し外れて、経済についてのお話をば。

【再生可能エネばかりを重視したヨーロッパがはまったエネルギー危機】Newsweek

<現在のエネルギー需給の逼迫を招いた原因は、再生エネルギーへの過剰投資とエネルギー地政学の軽視にあり>

エネルギー危機が世界中に広がっている。燃料価格の高騰や供給の不足に加え、停電も頻発している。アメリカでも一部の州は電力の安定供給に四苦八苦している。
こんな危機は数十年ぶりだから、誰もが不意を突かれた。エネルギーの供給が不安定になれば経済だけでなく安全保障にも環境にも、さらには公衆衛生にも甚大な影響が及ぶことを、みんな忘れていた。

ヘッダーの写真はnoteのフォトギャラリーより、風力発電機の写真です。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

■インフラを軽視する左派■

今回の記事で個人的に重要だったのは、この部分でした。現場の実務的な部分から上がってきたのではなく、理念先行の再生可能エネルギー重視が、こういう細部での粗を生み出している───。これって、ジャガイモは充分な量があるのに流通がダメダメで腐らせて、結果的に市場は物不足の状態が慢性化した旧ソビエト連邦時代を思い起こさせます。再生可能エネルギーをいくら用意しても、その流通が目詰まりを起こしては、理念だおれになると。

また、再生可能エネルギーに莫大な投資をしながら、ヨーロッパは電力供給の要となる送配電網への投資をおろそかにしてきた。電力の安定供給には蓄電システムやバックアップ電源の確保、送配電網の整備など複雑な体制づくりが必要で、とても民間だけでは対応できない。

ドイツでの災害で、メルケル首相が迅速な予算を組んだと日本の左派は称賛していましたが。実際はインフラ整備やメンテナンスの費用をケチり、それで洪水などが起きたときに慌てて予算をつぎ込み、働いているふりをしてるだけというツッコミが、ドイツ在住の人から入っていましたね。なんのことはない、元々のインフラ整備軽視は日本の民主党時代の八ッ場ダムの迷走と同じ。怠け者の節句働き、という便利な言葉が、日本にはありますしね。

■「商は詐なり」の経済感覚■

なぜ、リベラルは流通を軽視するのか? 江戸時代に寛政の改革を手動した松平定信は「商は詐なり」と口にしていたそうですが。商売というのは、商品を買って他人に売るという、右から左に流すだけで暴利を貪っていると、そう認識していたんですね。経済オンチらしい発想ですが。現実には生産と流通は両輪であって、それがないと消費は上手く行かないわけです。流通は陸路・水路(河川や人工的な運河)・海路など多様で、現代はさらに空路が加わっています。

商人というのは、中華の殷王朝が滅びた結果、その民はユダヤ人よろしく流浪の民となって、中華の流通を担うようになります。殷という名前は滅ぼした周王朝の側が付けた蔑称で、実際は首都の名前が商だったのではないかと推測されます。なので、現在は殷商という呼び名も広まっています。で、商の国の人達ということで、商人という言葉が生まれたわけですが。亡国の民は馬鹿にされがちですし、根無し草は警戒されるのはユダヤ人と同じ。商業には差別が古今東西、関わってきます。

■株価を上げただけの安倍政権■

岸田文雄真総理も、いきなり株式の譲渡益や配当金などの金融所得に課される金融所得課税について言及しましたが。日本人は財テクに積極的でない(一時期その熱が上がりましたがバブル崩壊で大損こいて一気に冷え込み)ので、株で儲けている人間は濡れ手で粟のズルい・汚い奴らというイメージが有り、それにおもねった政策だったんでしょうけれど。株は続落し、慌てて修正しましたが。良くも悪くも株式投資というのは、世界の経済に組み込まれているわけです。

安倍晋三元総理に対しても、株価を上げただけという批判が出るのも、それに対して多くの国民が批判を加えないのも、株取引というものがよく解っていないから。でも、株価が上がって利益が出るから、それが投資や資金となって還流するわけで。庶民の生活には株価が上がろうが下がろうが実感はなくても、実際は間接的に大きな影響を与えているわけで。年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund:GPIF)も手堅い運用で、民主党政権では20兆円ほどだったものが、100兆円を超えるほどに。

画像1

■文明は経済が生み出した?■

経済人類学の本をかじった程度ですが、どうも人類の文化とは、経済活動に伴うものではないか、という気がします。パプア・ニューギニアのマッシム地方で行われるクラ交易などのような、ある種の宗教性と経済活動が未分化なように。それが狩猟採集の文化であっても、希少なものを貨幣として交易するのが、文明の第一歩。それは当然、富の偏在を生むのですが、それが王権を生み出す原動力に

エジプトのピラミッドのような、巨大な建築物が生まれたのも、農業によって余剰生産力が生まれ、農業をしなくてもピラミッド建設にだけがんばればいい人が生み出せるからこそ(ピラミッド公共事業説もありますが、どっちにしても労働者を余剰があってこそ)。そして、そういう余剰人口に食料を供給するには、流通が不可欠。経済とは、そういう集約と配分のシステムです。古代中華帝国もインカ帝国も、通信と流通の道路を整備しました。

■経済は流通と不可分一体■

でも、これがピンとこない人のほうが多いでしょう。実際、儒教にしてもキリスト教にしても、経済を蔑視します。同じ人間のはずなのに、才覚の差で大きな差がついてしまう。そこに人間は、ルサンチマンを抱える生き物ですから。カール・マルクスの壮大な共産主義思想も、実はロスチャイルド家の縁戚で裕福な家に生まれ、その裕福さを維持するために代々のユダヤ教のラビの家でありながら、キリスト教に改宗した父への、反発が根底にあるわけで。

彼の思想が、ソビエト連邦にしろ毛沢東の中国にしろ、キューバにしろ、北朝鮮にしろ、理念先行で流通を軽視して、結果的に国を滅ぼしたわけで。自分は文系で、経済はよくわかりません。ですが、歴史はちょっとだけ好きなので、過去の失敗例のデータベースは、多少あります。その背後に経済へのルサンチマン=社会への怨恨があるときは、だいたい流通軽視の理念先行がありますね。欧州のエネルギー危機は、共産主義の失敗と通底するようです。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ